第3章 67話
「正式に公表したわけだけど、どうだったかな?」
意地悪な笑みを浮かべる殿下。全く、殿下は遊び心っていうものをよくわかってらっしゃっる。
「いやー、とんだサプライズでしたよ。あの後居た堪れなかったですからね。そそくさと会場から逃げましたよ」
優勝したことも忘れちゃったよ。ん、待てよ。確かに優勝して持て囃されてもいいはずなのに。ちょっと損した気分じゃないか王子。
「はっはっは。すまないすまない」
「すまないは1回です」
親みたいなことを言う僕。
「あれがいいタイミングと思ってね。正直、とんでもない決勝だったよ。オリビア女史もさながら、それ故に君の力がとんでもないって言うのもわかった。あれでみんなも君の実力がなんとなくわかっただろう。自分で言ってあれだけど、あの試合でウィルの実力がなんとなくわかった…と言うのも君の底が知れなさすぎるけどね」
これは褒めているのだろうか?
「まあなんせ優勝おめでとう。次は”学園戦”だ。このイベントは今回よりも規模が大きい。ヴァルヴィデア総出の催し事といっても過言ではない。だからこそ、ウィルの圧倒的な力を発揮してくれたまえ。そのことが国益に繋がる」
なんかすごいこと言っているぞ。
「王子、悪い顔してますよ」
“学園戦”
マドワキア中央王国をはじめとした、周辺国である”魔”、”商”、”武”の小中高等学校の優秀者のみが出場できる総合戦。
確かにそこで力を示せば国益云々はありえるのだろうけと、あんまりピンとはこないな。まあやることをやるだけってことはわかったぞ。
しかし、最近わかったのは王子はニコニコ気のいいスマイルをする時は建前、そして何か企むときのような悪い顔で笑う時は胸の内を話している時だ。今、王子はニタァと悪い顔をしている。うん、悪い人の顔だ。ただ、表情としてはあんまり変わんないんだよなあ。わかる様になったのは王子のことが少しわかってきたということだろうか?
「ウィル、君は私の騎士だ。君の強さはマドワキアの強さだ。プレッシャーをかけるようで申し訳ないが、さらには私の想像を超える力が君にはあると私は判断した。この期末トーナメントは、マドワキアの中枢の底知れなさを知らしめる初まりに過ぎない。わからないやつはウィルに決闘を申し込むだろう」
それ、嫌だなあ。もっとみんなお家のことは大切にしようよ。
「だがそれはまだ騎士単一としてみられているからだ。今回の学園戦、これでさらに暴れ回ってくれ。すれば、今度はマドワキア自体の強さを示すことになる。こんなやつがいるのか、と。こんな力がまだ控えているのか、と。マドワキア全土に知らしめるとこができるし、戦士たちの意識の底上げにもなる」
夕焼けが殿下を照らす。夕焼けに照らされた殿下は、なんというか、いい顔をしている。曇りのない笑顔と自信に満ち溢れた顔、というか。殿下が大きく見える。包み込まれるような風格と言えばいいのか、これが王の風格ってやつか。
「なんだかまたプレッシャーをかける様なことを言っているね。すまないすまない、ついついウィルにはなんでも可能にしてくれるんじゃないかと希望という欲がでてしまう。これでは無理強いだな。本当に、すまないね」
「今に始まったことじゃないからいいよ」
僕は大人だからね。えっへん。
「はっは、君は面白いね。そう言われるのも悪くないね。まあでも、無理はしないでおくれ。学園戦はマドワキアのお祭りみたいなものだから、それも忘れずに充分に楽しみながらお願いするよ」
いやー、そんないろんな人の前に出ることになる祭りを充分に楽しめるかなー。緊張しそうだ。ただ、楽しむかどうかはわかんないけど、確かに他の国の強者はどんな人たちかは気になる。おっと、ちょっとワクワクしてくるぞ。あとは、そうだな。いろいろ置いておいて、これだけは言っておこうかな。
「殿下、たぶん当日は緊張すると思うんで楽しめるかどうかはわかりませんが」
殿下の目をしっかりと見て僕は言う。
「負けることはないですよ」
誰にもね、と付け加えておく。それが僕らだからね。
殿下は目をまん丸にして、そして笑い吹き出す。
「はっはっはっは!はぁ、ウィル、君はやっぱり面白いなあ。そして、いつも私を痺れさす。全く、面白い男だな!君ってやつは!私も楽しみにしてるぞ!改めて今日はおめでとうウィル!また学園戦で会おう!」
いっぱいの笑顔で僕を祝ってくれる殿下。眩しいぜ。あれ?でも待てよ?
「あれ、ここでいいの?騎士になったんだからこれから殿下のそばにいなくていいの?」
「ああ、そのことは大丈夫だ。私たちはまだ学生だからね。一緒にいる時は一緒にいてくれると頼もしいが、強制はできないことになっているんだ、『マドワキア騎士公約』ってやつでね。それでだが….いや、また呼び出しがかかると思うよ。はっは、それも楽しみにしておいておくれ」
待って、ニタァって殿下笑ってる!これなんかよくないことな気がする!呼び出しって何!?
「なんせ、私は大丈夫だ。元々の専属騎士もいるからな。あとは他の騎士も来るとのことだし、ウィルは学園戦までしっかりと調整をつけてくれたまえ」
おいおい、そう言って殿下は去っていったぞ。呼び出しって何なんだ….。




