第3章 第66話
決勝を終え、僕たち中等部1年のトーナメントはこれで終わりなのだけど、他の学年の中等部の試合が残っているので、トーナメントは続く。最後に今日の幕引けとして中等部のトーナメント出場者をまた集めて軽く王様からの1言があるらしい。
そんなさくっと終わるのか、と思ったけど結果発表みたいなのは高等部のトーナメントも全部終えてから最後の最後に大々的にあるらしい。
ふう。終わってもオリビアとの戦った熱がまだ収まらない。なんだかまだふわふわと気持ちが浮いている。
最近のオリビアとの稽古はなんだかんだ自分の試したいことをするような稽古だったためにお互い全力を出し切るといった稽古ではなかった。いつからだろう、僕とオリビアが全力で戦わなくなったのは。だから久しぶりに、全力をぶつけれてオリビアの強さに目まぐるしかったし、自分もいろんなことができるようになったとか、色んな感覚が入り混じって気分が昂っちゃってる。
「ウィル!悔しいけど優勝おめでとう!凄い、悔しいけどね!!」
わあ、オリビアすっっっごい悔しい顔してる。可愛いけど、夜道に後ろから刺されないか心配になる程悔しそうだ。
「ありがとう、オリビアに言われるのが1番嬉しいよ。本当にオリビアとの戦いは虚をつかれるし、戦いの中でオリビアは成長するから緊張感が違うんだよね。緊張感だけでいくと父様と稽古をしているみたいだよ。今回だってオリビアの全ての攻撃をすり抜けてくる一点突破の力には正直面食らっちゃったし、なんていうか、オリビアは見えてる道筋が本当に繊細だよね。僕もそれに対抗するために未来視の魔眼を使ってもう頭がパンツクリンだよ」
なんだか多弁な僕。気持ちが浮ついちゃってるぜ。
ていうかお互いなんだか浮き足立ってる気がする。お互いそわそわしちゃってるよねこれ。
ただ何というか、こういうのは2人で1つの物事に対して感動を共有しているようで尊い感じだ。僕はこの同じ感覚を同じ空間で分かち合うことが好きだったりする。このときを大切にしよう。
そんなお互いにふわふわした感じで話し合い、少し落ち着いたところで他の中等部の試合をみる。それに対してオリビアと色々意見を出し合いながら見ていると全ての中等部の試合が終わった。夕暮れはじめたといったところだ。
なんだかあっという間だったな•••。たぶんまだオリビアとの熱が残っているせいだからだと思う。浮き足立つってこういうことなんだなあ。今日はたぶんずっとこんな感じだろう。夜寝れるかしら?
そんなこんなをしていると中等部トーナメント出場者が集まり王様の1言で幕引きとなる時間になる。と言っても、結局王様の1言を聞くために観客席に小中高等部の生徒が来て、各所関係者も来るらしい。大々的に見えるけど、ただ1言を貰うだけなのでそんなに大々的ではないということらしい。なんだかややこしいぞ。まあさくっと終わるってことだろう。
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「ではこのマドワキア王の息子の1人、アーサー・マドワキアからも1つ!!今回優勝した中等部1年生のウィルを私の騎士とすることをここに公言する!!!」
ふあああーーーーー!
おいおいさくっと終わらないじゃないですかアーサー殿下さんよ!
おかしいと思ったんだよね!アーサー殿下がマドワキア王の横に立ってて、あれそんなところに立ってていいのかな?って思ってたんだよね!
ざわざわと会場は揺れ、僕に一気に視線が送られる。ちょ、ちょっと、居た堪れないよ!?
「知っているものや噂では聞いていたものもいたと思うが、今日より正式に騎士とするので皆のものもよろしく頼む」
ウィルもよろしくな、といじわるな笑顔でこちらを見るアーサー殿下。全く•••まあ、遅かれ早かれかあ。殿下は僕に殿下の将来像を話してもらったし、僕もそれに賛同して騎士になる件を受け入れた。ならばタイミングは、確かに今がベストな気がする。さすが殿下、見極める目も実行力もしっかりお持ちだ。
それでもサプライズすぎるよ殿下•••本当に、この王子様は面白いことをすることが好きだなあ。でもそれが殿下のいいところだ。うん、僕はこの殿下のこの面白さの、楽しさの剣となりたかったんだ。僕もよろしくね、と口パクで殿下に返事をする。
ただ、このみんなからの注目どうするの?
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じろじろ見られて終わっただけで終わったけど、居た堪れないのでそそくさとオリビアと会場を後にした。
「ウィル先生試合まじやばかったす!」「見てるこっちが腰抜かしましたよ!」「オリビアとの試合なんて何が起きてるかわかんなかったっす!!」「その後の他の学年の中等部の試合••正直退屈だったな」
「ウィル本当に君は、どこのステージにいるのかもわからない!でもあの時、全力で戦ってくれてありがとう!俺もウィルに近づけるように、いや、ウィルと肩を並べるように頑張るよ!!」
会場から出ると試験を共にしてきた一般枠のみんなに囲まれる。
「みんなあ•••なんだかみんなにあえて安心したよ」
敵地で味方と合流したような感覚で、みんなに出会えてほっとする。
「安心って、ああ•••アーサー殿下の」「アーサー殿下の発表サプライズだったもんなあ」「王族関連の人たちがすごい顔してウィル先生のことみてたもんね」「ウィル先生これから大変だぜ〜」
いや、本当に居た堪れなかった。
「ウィルが殿下の騎士っていうのが噂程度にしか思ってない人がこれで本気になるぞ」
「それってなんかやばいの?」
オリビアがきょとんとして聞く。やばいのだろうか?
「そりゃウィルを倒せば殿下が代わりに雇うかもしれない。しかも年齢は中等部ときた。上の学年の人たちだけじゃなく、他の人たちまで君を倒そうとしそうだけどね」
え、確かに。殿下の騎士ってなんか響きいいし安定した生活送れそうだし。
「ウィル先生暗殺にだけは気をつけてね」
「怖いこと言う!」
こ、これは不意打ちされないために常に気配察知、魔力感知の訓練だと思おう•••。
「あと、オリビアもすごいことになると思うよ」
「わたし?なんで?」
「だってウィルとあそこまで戦ったんだ。もう君もただの一般枠特撰じゃない。みんなこぞってその実力をそばに置きたいものが来るよ」
おいおい。なんだか僕らの学校生活が慌ただしくなりそうだぞ。
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今後のことに身を構えながら、と言いつつ、みんなでみんなのことを労いながら帰路につく。
オリビアを送り届け、みんなで寮に帰る。
「おや?」
「やあウィル」
寮の前に見慣れない人がいると思ったらアーサー殿下だ。
「え!?」「殿下!?」「これどうすればいいんだ?」
みんながざわざわし始める。
「はっはっは。みんな普通にしてくれてていいよ。今は同級生のアーサーさ」
そういわれても困るぜって顔をするみんな。まあそうだよね。僕も最初は激しく狼狽したものだ•••ま、こういう時の対処法は何も考えないようにすることだ。カボチャだとでも思ってもらおう。
そういうことをみんなに言うとアホか!って言って殿下に一礼し先に寮に入って行った。
「かぼちゃって、ウィル、君は本当に面白いことを言うね」
「でも本当に殿下珍しいですね。どうしてこんな下々の場所に?」
「まあなんというか、改めて君に挨拶をしようと思ってね」
アーサー殿下はノスタルジックな雰囲気だ。
地平線に沈んでいる夕日、少しだけ夕日が顔を出して紅に染まる空と、とても絵になっている。




