第3章 第63話
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「勝者、特撰ウィル!」
試合はどんどんと進んでいく。今はベスト16の試合が終わった。あれだけいた選手もいつの間にか4人になった。
「おいあいつやばくないか?」「ほぼ魔力酔いで終わらせてるぞ•••」「そんな戦い方あるかあ?」「誰だよあれ?」「白髪の特選の一般枠•••」「特撰1年の、白い悪魔だ•••」「え、あの?」「高等学年に喧嘩を売ってしょんべん漏らせたっていう?」「あれが•••」「噂は、あながち間違ってなかったのかもしれない•••」
これだけ試合が進むと僕の試合を観戦してくれる人も多くなる。中には高等部の人たちも多くいる。恥じないように頑張ろう。あと、特選1年の白い悪魔って何?しかもしょんべんは漏らさせてないから。また変な噂立てないでよ。
僕は試合を終えて演習場から降りる。トーナメント表は人数が少なくなって、みんなが見やすいように演習場の中に貼られるようになった。これで演習場からいちいち入り口まで出なくても見れるようになったし、観客席からもその組み合わせを見れるようになり、またこれからは2試合同時に行われていたのが、1つずつになり、その試合の白熱が増す。
その残りの4人は全員特選。
オリビアももちろん残っている。顔見知りではあるが、どれどれ僕の次の相手は•••おや、いつぞやのサムエルなんとかじゃないか。
僕は連戦。演習場は清掃が入り、あと少しでまた試合が始まる。
清掃が終わりそうになり、着々と次の試合が始まらんとしようとしている時、ちょうど僕の反対側の演習場の入り口からサムエルなんとかが入ってくる。
ひとときの間、僕たちは演習場を介して向かい合う。
ざわざわと賑やかだった観客席は、試合が開始されようとする今に、段々と会話は減っていき緊張感が漂う。
審判になる教員が出てくる。
「両者前へ!」
僕とサムエルなんとかは対面する。
「貴様の強さは、ここ数ヶ月だが同じクラスになって本物だと感じた」
サムエルなんとかは僕の目をしっかりと見て言葉を漏らしていく。
「あの時の、シャーリー様に行った非礼は許されないことだ。しかしそれも許せないが、私はあの時の貴様に手も足も出なかった自分自身が許せなかった!シャーリー様を、公爵家を守らなければならないのがホークレンドニクス家の務めの1つ•••なのにそれすらもできなかった私は悔しかった!!」
胸ポケットからハンカチを出し、それを僕の前に投げる。
「拾え、庶民。決闘だ」
ざわっと、会場が揺れる。大衆の前での決闘宣言、公開決闘への興奮で今まで静寂に包まれていた会場が、観客席にいる人たちの猛る熱に包まれていく。
「僕は前言ったよね。それは自分の家名をかけているんだぞ。それに対して君は、覚悟があるのか?」
「覚悟など当に決めている!!」
彼は強く1歩前に出る。
「サムエル・ホークレンドニクスがここに決闘を申し込む!!ウィルよ、私が勝てば貴様はシャーリー様に非礼を詫び!そして!私の元へ下れ!!」
その言葉に会場がさらに白熱する。
僕が殿下の騎士というのはまだ認知されているわけではない。知ってる人は知っていると言った感じだ。特撰クラスで殿下は僕に言い放った。だから特撰の人たちはみんな知っているはずだ。なのに、この決闘の条件、そんなことってしていいの?
僕はちらっと最上段にいるアーサー殿下を見てみる。
殿下は大変楽しそうな顔をしている•••そういえば殿下は面白みがあることは大歓迎な質だったね。なんなら私のものを取ろうとはいい気概の持ち主だ、そういうやつが国を支えてくれる、とか言いそうだ。そうだな、うん。そういうのを全て跳ね返してこその王の騎士だ。
そして何より、サムエル・ホークレンドニクスの覚悟に感服した!
僕はハンカチを拾い受ける。
「サムエル・ホークレンドニクス、あなたの決闘を受け入れよう!」
会場が最大に大盛り上がりする。
「では両者、位置について————ハジメッ!!!」
開始と同時に暴力的瞬間的な魔力場の干渉————しかし、サムエル・ホークレンドニクスはあの時のように倒れることはない!
さすが気合いが違うな!!そうでなくちゃ困る!!
僕は一瞬で彼の懐に入る。そのまま下からの手刀の振り払いで意識をかりとろうとするがサムエルはそのまま上段から木剣を振り折し迎え撃つ。
「貴様はこのトーナメントで今まで一辺倒の攻め方だった!人を試しているのなら止めろ!!私に同じことは通用せん!!」
そのまま薙ぎ払われサムエルの間合いとなる。
さすが特撰、そして騎士の家系だ————僕は意図してそういう攻め方をしてきたわけではないが、僕が今までやってきたことは研究し尽くされてるようだ。やはり気合いが違う•••でも僕だって常にギアはマックスだ!!
薙ぎ払われようと僕はさらに間合いを詰める。サムエルの迎え撃とうとする反応、でも、遅すぎるぜ。
僕は身体強化の魔法のオンオフにより残像を作り出す。
「グッ•••!」
残像による防ぎ手のラグ、その居着きは戦場では死に直結するぞ騎士よ!
僕はその隙を逃さずに全方向からサムエルに迫る。
サムエルは対応を絞り出し、回転してその場を防ごうとするがそんなことは後に続く所作じゃない。その場しのぎの攻撃は手に取られるぞサムエル・ホークレンドニクス!!
僕はサムエルの回転の立ち上がりに合わせ、彼の軸足に重心が移動するタイミングに合わせて足を絡ませ入れ、そしてその木剣の柄を手刀で弾く。
重心を崩され木剣が弾かれたサムエルは、その自分の回転力を止めることはできずに盛大に地面にひれ伏す。
「————ッ」
サムエルは体制を立て直そうとするが、顔上げた時、目の前には僕の手刀が添えられている。
一瞬の静寂。
「勝者、特撰ウィル!!!」
勝敗が決し、会場が大歓声で響き揺れる。
「サムエル・ホークレンドニクス、君の覚悟は受け取った。いい試合だったよ。でも僕だって覚悟が、背負っているものがある。今回は、僕の勝ちだ」
サムエル・ホークレンドニクスは悔しさに顔を歪ませる。しかし、振り切れたのか、最後は穏やかな顔になる。
「ふっ•••私の負けだな」




