第3章 第62話 【トーナメント】
「では両者前へ!!」
僕らは試合の立ち位置に着く。
「ウィル、君には感謝している。燻ってた僕らを押し上げてくれて本当にありがとう。でも、だからこそ!ここで!!君を乗り越える!!!」
純粋な闘志。ならば僕も応えるまで!全力で行くまでだ————!!
「両者はじめッッッ!!!!」
僕は魔力を一瞬で立ち上げ魔力場に干渉する。それはずっとやっていた1から100の瞬間的魔力干渉。前までは少しのラグが気になったが、今はかなり仕上がっている。
審判の教師でさえ足を折り、かなり息苦しそうだ。瞬間的な魔力場の干渉は、もはや魔力の海に突然落ちたようなもの。溺れているような感覚になるはずだ。教師でさえままならない。普通なら意識すら刈り取れるはずだ。なのに————
「ッ、ぐっぁ•••」
————彼はなんとか足も折れず耐えている。
なるほど、僕の立ち上がりに併せて自分の魔力も最大限に上げだのか!それで魔力の振り幅により魔力酔いを自分でも緩和したのか!
それでも、彼に襲いかかる魔力酔いは完全にかき消せれてはいない。耐えてはいるが、もはや戦える状態でない。
僕は魔力の立ち上げと同時に、すでに相手の懐にいる。
相手の首元に手刀を添える。
何もされず、終幕。
魔力場の干渉もなくなる。
「しょ、勝者、特撰ウィル!!!」
審判の教師も息絶え絶えにコールをしてくれる。そして同士は地面にバタンと倒れる。
その疲れ具合はどちらが出場者かわからないくらいだ。
「やっぱり、やっぱりウィルには届かなかったか••••!」
息が乱れながら悔しがる同士。何を言ってるんだ。
僕は完全に意識を刈り取るための魔力場へ干渉をした。なのにそれを耐えられた。恐らく、僕の戦い方を調べしっかりと対処してきたのだろう。やられたぜ。
「何を言ってるんだい。僕は君の意識を完全に奪うために魔力場に干渉した。なのに君はしっかりと対応してきた!その後君はそれでも魔力酔いに耐えれなかったようだけど、もしも、君がそのまま戦える状態だったのなら、僕に隙が生まれて結果は逆だったかもしれない。いや、危なかったよ。また強くなることができた。ありがとう」
僕は彼に手を差し出す。
「•••••!こんな俺に、そんなことを言ってくれるなんてな••••ウィルは最後まで俺に手を抜いてなかったんだな••••ありがとう、こっちこそありがとう•••••でもやっぱ、ああ、負けるって、悔しいな•••••!」
彼は僕の手を受け取り、頬に涙の筋道を作らせながら立ち上がる。泣くくらい悔しい気持ちは、絶対に人を強くさせる。任せて。その闘志も僕は紡いでいくよ。
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「ほぅ。ランスロウ、あれをどう見る?」
マドワキア王は今し方終えた中等部の試合を見て、隣にいる騎士に話しかける。王の側近になっているということは、騎士団の中でもトップクラスの実力を持っているとわかる。
「いやあ、相当な魔力ですな。離れているのであまり干渉は受けませんでしたが、ここでもその揺れは感じ取れましたね。私も不意打ちで間近で喰らったら膝が折れてたかもしれませんな。少しだけ興味が湧きます」
なかなかだな、とマドワキア王はその立派な髭を摘み触る。
「中等部ということはアーサーの同級生か?」
私に話しかけられる。
「そうですね。あれが私の騎士です。どうかみていてください。たぶん、みていて楽しいですよ。ランスロウも、興味がちょっとじゃあなくなると思うよ」
「あれがか!お前が選んだ騎士が同級生と聞いた時はまあ耳を疑ったが、お前の見る目もある。将来性を買ったものと思っていたが、いやはや、これは面白くなってきたな」
「殿下がそこまで仰られるとは。私も注目しておきます」
ウィル、君は自由に飛ぶんだ。後は世の中が気づく。そうすれば私も君を側に置いて堂々と行動ができる。そしてその世間の評価は中等部トーナメント優勝くらいの箔がいい。ウィルの実力は、ここにいる本物の実力者しか知らなくていい。世間は油断し、ウィルの本物の実力を知るものなら容易には近づいてこまい。それで刺客の選別にもなる。それから•••兄の騎士、ドラゴンを倒し兄を引き摺り下ろす。さあウィル、羽ばたくんだ。
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歓声があがる。続々とトーナメントは進んでいく。進行を確認するためにトーナメント表を見にきた僕。どうやらオリビアも順調に勝ってるみたい。
他は、あれ?マニ君とアディ負けてるじゃん。なんで?確か、アディは用事があるからトーナメントに参加できない、とは言ってはいたけど•••。
「お、ウィルやん。順調に勝っとるみたいやな」
噂をすれば、というか噂を思っていればなんとやらだ。マニ君のご登場である。
「マニ君なんで負けてるの?相手そんなに強かったの?」
「いやいや、わい商人やで?戦いなんかよーせんわ。普通に棄権してきたわ」
「そうなの?マニ君って結構強いって思ってたんだけど」
「まあ普通よりかはな。そら偉くなると自分の身は自分で守らんといけんしなー。でもさすがにトーナメントで頑張るのはわいにとったら割に合わんわ。せやから、棄権したんや。恩を売るって形でな」
ひっひっひと笑うマニ君。おお、タダで負けないのがマニ君らしい。どうやらその相手もまあまあな貴族だったらしく、トーナメントで先に進めるってことでwin-winの関係を築けたとか。さすがマニ君だね。
「あれ、でもそれなら特撰に残留するのになんか支障はないの?」
「ここの学校の連中もあほやない。別に強ければええってことやない。総合的な判断で上をちゃんと選んどる。わいの仕事は”学園戦”で”商”の国の連中を負かすことや。楽しみやわあ」
なるほど。みんなにだって得手負手がある。それぞれに役割があるのは当たり前だ。強さはなにも戦闘力だけの話ではない。この学園はそれも折り込みで決めているのか。この学園の強さは、人材のそれぞれの分野の才能の折り重ねが、何重にも巻きついた蔓のような強さだ。
ならば僕は”武”の強さを示すことが仕事だ。よし、やることは変わらないな。全力で飛び抜くまでだ。
「ほな、わいも用事あるからまたな〜。ウィルもわいの分まで頑張ってくれ。仰山賭けとるからな〜」
仰山賭けてる?トーナメントに賭博があるのだろうか?世の中の競いごとには全て賭博が行われていると聞く。マニ君本当に商売やお金が動くところには目がないなあ。ちょっとそういう意味で頑張るわけじゃないけど、ただマニ君の純粋な応援には応えよう。




