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第3章 第61話

 今日、学校の特大演習場に人がごった返しになっている。

 周りには屋台が立ち並び、また、演習場の階段状の観客席には人がびっしりと入っている。そこにいるのは生徒だけではない。


 学校は街から離れている。学校のための広い敷地といった独立した立ち位置が、この王立学校の都市マドワキアでの立ち位置だ。なのに、今は学校の生徒だけでなく、たくさんの街の人などでこの場は溢れている。

 

 そう、今まさにこの学校は期末トーナメントである。


 であるけど•••


「なんで他の人もこんなに多いの?」


 しかもまだ開会式も始まってないけど?


「生徒の強さと、こんだけ人材が豊富だぞっていう学校の権威を見せるために一般公開してるらしいよ」


 あー、だから明らかに一般市民ぽくない兵士みたいな人もちらほらいるのか。スカウト的な?


 そんで、観客席の中でも最上段の仰々しい場所に座っているのがツインテールがトレンドマークの学園長と、他にも偉そうな人が何人か横に座っておられる。さらにその中でも周りに中央騎士団の甲冑を見に纏った兵士に護衛されている人がいる。たぶんだけど、あれがこのマドワキア中央王国の王様•••。

 髪は長く全て後ろに流しているが、やや白髪が混じっているような壮年の方だ。しかし、その歳を流れを感じされる体の表れは、顔の皺1つをとっても、その揺るがない眼光と相俟って今まで国を動かしてきた王の覇気に映る。すごいな、遠目で見ても圧倒されそうだ。戦士としての強さじゃない。人としての重みが違うように感じる。

 その後ろを見やると、アーサー殿下も座っていた。

 アーサー殿下は今回は王族側で観戦するらしい。アーサー殿下も言ってたけど公の場所で王族と戦うことはあまり政治的にも良くないとのことだったからね。それこそ”武”の国のような場所じゃないとそんなことは行われないだろう。

 そして、その王族が座っているであろう場所をよく凝らして見るが、どうやらアーサー殿下のお兄様らしき人はいないようだ。

 これも事前にアーサー殿下から聞いていた。


『君は私の騎士だ。戦力を()()兄に見せるようなことはしたくない。日程調整をどうにかして中等部の試合の際は来れないようにしている。だから最初は兄は来ない。その分、ウィルは存分に戦い、私の騎士の強さを見せつけてくれたまえ』


 日程は今日が中等部のトーナメントになる。最初から僕らの試合ってわけだ。

 任せてください殿下。全力でいかせていただきますよ。


「まあでも、それにしても凄い賑わいだねえ」


「凄いよね。それよりもトーナメント表張り出されてるらしいよ!開会式始まる前に見てこいってことだから見にいこー!」


 お、それは重要だ。


「行こ行こ!」



 観客席とは打って変わって、トーナメント表の前には生徒がごった返している。壁には中等部と高等部のトーナメント表が張り出されており、そこには中等部と高等部の生徒で埋まっている。ちなみに、小等部はまだ体としての発達の面を含めてトーナメントが行われないのでこの2部になる。


 僕の名前は•••ここか。

 64名のトーナメント、山が左右2つに分かれている形だ。その中で僕の名前は右側にあった。


「僕は右の山だね」


「え、わたし左の山!」


 そのとき、開会式の合図がなる鐘の音が響く。


「じゃあ、次は()()()だね、ウィル」


「うん、また後でね」


 僕たちは決勝で会うことを当たり前に話す。それは、僕たちの、父様との約束みたいなものだ。そして覚悟みたいなものでもある。絶対負けないぞって言うね。だから次にオリビアに相見える時は決勝で、だ。



 トーナメントに出場する生徒たちが特大演習場に集まる。


 中等部と高等部なので、128名。それくらいはすっぽりと収まる演習場の広さだ。


「よし、集まったな。ではこれより学期末実力トーナメントを行う」


 まず、引率の教師から軽い説明から始まる。

 

 試合はこの広場を2つに分けて2試合同時に行われる。制限時間は10分、決定的な有効打があるか、相手が降参するかで試合が終わる。またそれぞれに教師が審判についており、もしも時間内に終わらなければ教師の判定のもと勝敗が決する。武器の使用は学校から試供されたものならなんでも使ってよし。魔法もなんでもよし。とりあえず教師の監督下の元なのでなんでもありってことだ。


「では最後に、マドワキア王から開会のお言葉を」


 説明を全て終えた教師が一歩下がり最上段に目配せする。

 するとマドワキア王と思わしき方が立ち上がる。


 波長増幅の魔道具を用いて、王の言葉が会場に響き渡る。


「まずは、この優秀な王立学校の中でも上位に入った貴殿らに拍手を」


 控えめな拍手が僕らを包む。


「伝えたいことは山ほどあるが、大事なことを1つ」


 拍手が止み、マドワキア王の声だけが響く。


「”負けるな”。それは今、というわけではない。今日勝とうが負けようが君らには明日がある。ならば、己に負けるな。常に超えていけ。そして、来るべき”負けてはならない日”に勝てるようになれ。諸君らの健闘を祈る。では、ここに開会を宣言する!」


 割れんばかりの拍手喝采。あれが僕らの王、マドワキア王•••歩んできた経験が、覚悟が、意思が、僕らを貫く。この体の震えは大喝采によるものか?いや、僕は今マドワキア王の言葉で奮い立っているのだ。心の奥底から熱いものが込み上げてくる。アーサー殿下、君のお父さんは凄い人だ。親を超えるのが子の役目、アーサー殿下も越えるべき壁を目の前にして眼光を鋭くしている。アーサー殿下もやる気満々だ。

 よーし、僕も俄然やる気が出てきたぞ。さあ、期末トーナメントの開始だ!



「そこまで!!」


 教師の審判による試合の終了の合図。試合がどんどん進んでいく。次は僕の番。そして相手は————


「まさかウィル先生とはね」


寮でテスト勉強を一緒にしていた同士だ。

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