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第3章 第57話

 オリビアとのんびりと話しながら、僕のお腹も落ち着き、そして昼時を過ぎて人も落ち着いてくる。残っているのはだらだらと飲む人たちだけだ。

 今さっきまでの活気ある空気感は次第に落ち着いた空気感を出している。


「で、小僧。話があるんじゃなかったのか?」


 店も落ち着き、他の店員の人たちが手が空き、店長にも暇ができる。そのおかげで店長が僕たちの近くに来て話をしてくれる。


「ロードという人間種の方を探しています。レガテリアに最後きたときいていて•••何か知ってます?」


「ロード?抜剣術を使うあのロードか?」


「たぶん?」


 ロード兄様の戦うところを見たのは”血の披露会”のときのみだけど、確かあの時抜剣術を使っていたような気がする。


「そりゃ知ってるも何も、最近この国に武器が広まったのはロード様のお陰的なところもあるからな」


「どういうこと?」


 この国に武器のルーツを持ち込んだのロード兄様なの?


「レガテリア王の直系のシンラ様がいるだろ?あの子の師になっていたのがロード様っていう噂さ」


 え!?シンラ姫の!?そうなの!?!?

 だから、シンラ姫は抜剣術を使うのか!•••じゃあ、あの抜剣術と仕込み剣の初見殺しセットを教えたのはロード兄様ってこと?ちょっとロード兄様、それは性格悪いんじゃないですかー?

 まあ、はーん。なるほど。シンラ姫を通じてレガテリアには武器を用いた戦い方が広まったという。それがロード兄様だったってわけか。


「そんでもって気のいいやつでな、よく街に来ては色んな人のことを手伝ってたぜ。だからレガテリアでは結構みんな知ってるようなお人だ」


 みんなのために色々助け回っていた•••か。正義感が強く、真面目なロード兄様らしい。そしてその事を誇りに思うや。


 ロード兄様がレガテリアにシンラ姫を通して武器のあり方を広め、そしてその残した剣術と、ロード兄様自身の人柄の話が、時間と空間を超えてロード兄様と対話をしているようでなんだか胸が熱くなってくる。


 そんなロード兄様は、どうしてレガテリアに来たのだろうか?


「ロード•••さんは、なんでレガテリアに来たとか言ってましたか?」


「うーん、俺が聞いた話では『強さ』を求めてって聞いたぜ?レガテリアの強さの象徴のレガテリア王族に勝負を挑んだとかなんとか。その延長線上で、気に入られてシンラ姫の師になったんじゃないか?」


 『強さ』、か。ロード兄様もまた強さに取り憑かれた•••でも、あの2つの事件は自分の無力を突きつけられるのには充分だった。かくいう僕も力を求めそうになった。でも、その時は父様が、母様がいたから•••。ロード兄様は1人でずっと戦ってたんだ•••。ロード兄様は、今何をされてるんですか•••。


「その後どこにいったとかわかります?」


「そこまでは」


 首を横に振る店主。


「シンラ姫の師だったし、レガテリア王族とはよくつるんでたからその後はレガテリア王族の誰かが知ってるんじゃねえかなあ?」


 まあ、おいそれとコンタクト取れるわけじゃねえけどなあ、と笑う店主。

 僕は、今に限っておいそれと連絡を取れる。今日帰る時に、宿を貸してくれたお礼を言うつもりだったし、その際に聞いてみよう。


「ありがとう店主さん。また来るよ。あ、お金は都市マドワキアの冒険者ギルドにつけといてね」


「はいよ。しっかしまあこんな子供がなあ」


「秘密でよろしくね。じゃあ店主さんご馳走様でした。もしなんかあったら僕たちの名前、使っていいからね」


 僕とオリビアは残りの飲み物をごくっと飲んで店を後にした。



「ねえウィル。前からそのロードって人の話聞いてるけど、どういう関係なの?」


 オリビアが今まで黙っていた口を開く。

 まあ、気になるよね•••。行く先々でロードは知ってるかって聞いてるんだし。オリビアには、全部を喋ってもいいかもしれない。父様はヴァルヴィデアで暗躍しているから、他の人に言うと、僕がここにいることで父様も確実にマドワキア内で活動しているとわかって父様の邪魔になるから喋れないけど、オリビアにはいいかもしれない。まあそれ以外で、別に喋っちゃいけない理由もないのはない•••ただ、感覚的にいうなら、喋ることによって何かのきっかけになるんじゃないかって、また、大切な人がバラバラになるんじゃないかって思ってしまうんだ•••。でも、そろそろ1歩を進まなければならないかもしれない。


「オリビア、僕はね•••」


 僕はオリビアに全てを話した。僕がヴァルヴィデアの王族で、末男であったこと。そしてずっと探っているロードという人物が兄であることを。そして”血の披露会”、”邪龍事件”についても話した。そのことがきっかけで家族がバラバラになったこと、学校に行きたい理由が兄と姉がどうなっているか知りたかったのがひとつの理由であったということ。シャーリー姉様が僕の姉であることも包み隠さず全て喋った。


「すごい、大変だったんだね•••。でも、師匠の強さとか、ウィルの覚悟とかって、そういう過去から来てたんだね。やっぱりウィルはすごいよ」


 もともと”真”を教える際に僕たちがある程度の地位にいるということを伝えていたので、王族の部分にはあまり驚かないようだった。それよりも2つの事件によって引き裂かれたことが衝撃だったようだ。


「ごめんね、なんか暗い話で」


「ううん。むしろ話してくれてありがとう。わたし、もっとウィルの隣にいれるように頑張る!それでお兄さんも見つけてわたしたちの強さで驚かそ!」


 オリビア•••。


「そう言われると、救われるよ」


「それにしても、なるほどねー。高等学校新入生代表の公爵令嬢に急に姉様とか言った理由がわかったよ。本当に、あの時は気が触れたのかと思ったもん」


 オリビアさん!


「あの時はですね、ついついですね•••」


「でも、会えてよかったね。お姉さんすごい美人だったよ。しかも代表で、凄い人がウィルのお姉さんなんだね」


「ふっふ。シャーリー姉様だけじゃないぜ、僕の家族はみんなすごいんだぜ」


 本当に、尊敬する、自慢している家族だ。


 そんな家族がバラバラになって、しかもそれをずっと心に留めていて、でも気にしないようにしていて•••だけど、今まで溜めてたものを吐き出せたのか、なんだか、気持ちが少し軽くなった気がする。


「ありがとうね、オリビア。なんだか、すっきりしたよ」


「わたし?わたしは何にもしてないよ?」


 オリビアはけろっと、なんでもないかのように言う。全く•••そういう優しさが、オリビアの良いところだ。オリビアと一緒に入れて本当に良かった。僕は、人に会う運に恵まれているよ。

 よし、これで心置きなく、オリビアとロード兄様を探せるし、家族についていっぱい話せるぞ。


 とりあえずは、マドワキアに帰るついでにお礼を言いに王宮に行って、ロード兄様について何か情報がないか聞いてみよう!

 試験もあるし、やることがいっぱいで楽しくなってきたな!



「レガテリア王たちはいるか?」


 僕たちは冒険者様に着替え、冒険者モードに切り替えて王宮にやってきた。


 王宮に入るところで、近衛兵らしき兵隊に伝える。


「残念ながらレガテリア王は忙しく、また、そのご子息たちも今は元の場所に戻られました。”殲滅”の方々とはご承知ですが、申し訳ありません」


 やっぱり王族の方達は忙しいようだ。まあ、仕方ないか。レガテリア王は困ったら頼ってくれても良い的なこと言ってたからまたアポ取ってこようかな。


「そうか、それは邪魔し————」


「あらムメイ様!やっぱりムメイ様でしたのね!」


 王宮を後にしようとすると、王宮の方から大きな声で僕を呼ぶ声が近づいてくる。


「大剣姫•••」


「もう、シンラでいいですわよ。ふふ、なんだか愛しい人の匂いと思って来たら、やっぱりムメイ様でしたのね」


 匂い?僕ってそんな臭い?ってことじゃないか。


「獣人族は五感が優れていると言うが、さすがだな」

 

「そんな、褒めることでもないですわ。ただ、ムメイ様の匂いはもう忘れることはないと思ってください」

 

 そう言って、ちょっと恥ずかしかったのか少し顔を赤らめはにかむ。


 うむ。今日もシンラ姫は可愛い。ほんわかと温かくなる、可愛いは平和な日常を与えてくれる。


「ムメイ、何鼻の下伸ばしてるの。聞くことあるんでしょ」


 オリビアさんの声は極寒だ。


 こほん、と咳払いをして気を立て直す。


「シンラに聞きたいことがある」


「なんでもお申しつけてください」


 シンラ姫は役に入ってスカートを両手で少し摘み上げ、腰をやや落としお辞儀をする。あん、なんて可愛いカーテシー。じゃなくて!


「ロード、という人物を知っているか?」

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