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第3章 第55話

「ウィルどんな格好でいくの?冒険者の時の格好?」


「いや、普通にいつもの格好で行こうかなって思ってるよ」


 “殲滅”モードは楽しいけど意外に疲れるんだよね。あと仮面が顔全面覆ってるから、純粋にご飯が食べれない。


「いいの?ここから出たら正体バレない?」


「そこはなんとかするよ。理事長の使ってた変身魔法を試してみようと思ってるんだけど、あれ結構難して維持しずらいんだよね。だから応用して短時間だけ姿を見えないようにするよ。出ていくところだけ、って感じで」


「そんなことできるの!?」


 理事長の変身魔法はおそらく光の屈折を利用して錯覚を用いた魔法だ。しかも、なんとなくで魔法陣を構築してやってみたけど、あれをずっと維持となるとすごい難しいんだよね。表情とかを作ったりとなると非常に微妙な違いを作らないといけないから魔法陣に歪みが生まれて発現されなくなっちゃうんだよね。慣れだと思うんだけど、あれ本当どうやってやってるんだろ?

 だから僕が考えたのは光を大雑把に屈折させて姿自体を見えなくさせる方法だ。ただし、これは自分の身体の動きに合わせる場合はその時の動きに合わせて調整しないといけないので変身魔法同様、歪みが生まれる問題から効果の時間は非常に短い。しかも魔力量が結構とられるので魔力をすぐに感知される。ただ、それも含めて家からバレない程度に出るくらいには使える、はずってやつだね。


「ウィルは本当に魔法のことになるとなんでも試してるよね。いつそんなことしてるの?わたしと同じ時間過ごしてるのに」


「ふっふ、オリビアは友達がたくさんいるでしょ?友達とたくさん話してる間、僕は頭の中で1人でずっと喋っているんだぜ•••だぜ•••」


 言ってて途中で悲しくなる僕。

 

「なんか、ごめん•••でもさ、行ける方法はいいとして服装は?冒険者の動きやすい服しかないよ?」


「それでいいんじゃない?僕らローブに身を包んでるし。下の服は当たり障りないしそこらへんは大丈夫だと思うよ。洒落っ気がないけどね」


「まあ、いっか。ローブは置いて行ってまた帰ってくればいいもんね」


 ということで、レッツレガテリア探索!



 出る時に一応周りをざっと索敵したけど、朝の人手が多くなる時間帯もあり見張的な人はいるかどうかもはやわからなかった。たぶんいないとは思うけどやっぱりよくわからなかった。

 予定通り屈折の魔法を使い、一瞬だけ姿を隠し、後は即座にその場を後にした。


「レガテリアって獣人族の国でしょ?わたしたちみたいな人間種が彷徨いていたらそれだけで変に思われない?」


 オリビアの意見はごもっともであります。


「浮くとは思うけど、ほら見てみて」


 僕たちの貸し宿から街までそんなに距離はなく、すぐに街に着くことができた。

 レガテリアの街はマドワキアよりは密集していないが、それでも人はひしめき合っており、賑わいを見せていた。そこには獣人族が多いが、他の種族も勿論たくさんいる。


「ほんとだ!」


「レガテリアでもマドワキアの主要国の1つだからね。マドワキアほど都市ではないけど人はたくさんいるね」


 ここなら人間種がいてもあんまり不思議と思われないだろう。


「もしなんか言われたら家族で旅行に来ていて、今親たちは用事があって、僕たちはそこらへんで遊んできなさいって言われてる、っていうことにしとこう」


「そうだね!あー、昨日の夜から何にも食べてないからお腹減ったよーー」

  

 かくいう僕もお腹がゴゴゴゴと鳴っている。


「僕もお腹の中から隠されたもう1人の僕が出てくるような音が奏でられているよ。あそこらへんとか売店あるから行ってみよ!」


「食べ歩きだね!楽しみ〜」


 売店を周り、食欲のままに食べ物を買いまくる。


「やってしまった」


「ウィル、さすがに買いすぎじゃない?お腹が減っているのはわかるけど•••」


 食欲と言うのは恐ろしい。いつの間にか両手に大量の串に刺さった食材が何本も握られていた。世界の三代欲求の中に食欲があるが、誰が言い始めたかは知らないけど、的を得ている。自分の意思に反して、いや、むしろ自分から歯止めがかからずに買いまくったのだから。自分の食欲が恐ろしい•••。


「まあでも、僕って結構大食いだからさ。こんくらいペロりんちょすよ」


「本当?もう、わたしはわたしの分買ってるからウィルの余っても食べれないからね?」


「ふっふ、なめてもらっちゃあ困るぜ。僕の胃袋はいけると言っているッ!これを食べる覚悟があるッ!」


 といいつつ、食べながらレガテリアの売店街をうろつろとする。



「うっぷ、お腹いっぱいだ•••」


「ほらあ•••逆によくあれだけ食べたよ」


 胃がとんでもなく重い•••気がするぅ•••うっぷ。


「もうウィルったら•••じゃあそこらへんで一服できるところで休もっか」


 ご飯はもう見なくていい状態には入っているけど、とりあえず座って落ち落ち着きたいのはある。グッジョブオリビア。最高のパートナーだぜ。

 見つけたところは少し路地に入った店だった。そこは、丸テーブルがいくつもあり、大人数で食べることもできたり、カウンターもあり1人でもカウンターに座って食べることができる大衆料理屋だ。どことなく、冒険者ギルドに雰囲気が似ている。昼からお酒が飲めるらしく、今はほぼ昼時でもありご飯を食べるお客さん、お酒を飲みにくるお客さんが少しずつ入ってくる。

 とりあえず僕らはカウンターに座り、飲み物だけ頼んでくつろぐ。


「ウィル落ち着いた?」


「いやー、落ち着いたよー。お腹いっぱいで死にかけたよ。でもお腹いっぱいで死ねるのは良いことなのか?」


 確かにね、とオリビアとゆったりと会話をしてると、周りに人が多くなっていることに気づく。お酒を飲むものも増えており、店内はまあまあな賑わいを見せている。中にはお酒が回っていて声も身振りも大きくなっている団体様もいる。うん、楽しそうだ。

 どうやらここは隠れた名店だったらしいね。

 居座った感じ、どうやらここは酒場がメインでありそうだ。その街の情報は酒場に集まると、マニ君が言っていた。ならばお腹も落ち着いてきたし、ロード兄様について店員さんに聞いてみようか。


「ねえ、店員さん」


「おう!なんだいモジャモジャの小僧!それと俺は店長じゃ!!」


 店長さんでしたか。これは失礼。

 カウンター前でお酒や料理などを作っているでっぷりどっしり、しかしイカつめの犬の獣人族?と思われる店長さんに話しかける。ていうかオリビアにも言われたけど、そんなに髪の毛ぼさぼさかな?まあいっか!今はロード兄様のことだ。


「ちょっと人を探してるんですけど、ロードっていう人間種の人で•••」


 その時、突如後ろの席から怒号が聞こえてくる。


「テメェ誰に向かってメンチ切ってんだゴラァ!!」


 丸テーブルで1番盛り上がっていた団体だ。明らかに風貌が堅気ではない獣人族の集団。たぶん楽しくなりすぎて声が大きくなったりしたのを、周りのお客さんに注意の眼差しを向けられたのだろう。そしてその眼差しが運悪くなのか、タイミング悪くなのか、琴線に触れてしまったらしい。

 なんだか冒険者の酒場のようでわいわいイベントが起きて楽しいね。


「はあ、またあいつらか•••いい加減にして欲しいのはこっちの方だな」


 実は楽しくないことのようだった。


「すまねえ小僧。聞きてえことがあったようだがあいつらを鎮めさせなきゃいけねえ。一悶着終わるまで待っててくれ————おおいお前ら!!昨日も騒ぎ起こして何考えとんじゃあ!!!」


 店長さんも大変なようだ。どうやら昨日も彼らはここで騒ぎを起こしたらしい。調子がいい奴らなんだね。


「うわあ、結構酔っ払ってるよあの人たち。大丈夫かなあの店長•••」


 オリビアが心配そうな目で見守る。

 店長さんも、見た目通りの威圧をしているが、確かに心配だ。威圧感はあれど、店長はおそらく根っからの料理人。そして彼らは、その風格から明らかに場数を踏んでいる、()()()()()()()()()()()

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