第3章 第54話
お風呂から出て寝る準備を整える。今日は移動尽くしにブラッディベアから王族相手にと連戦だったので非常に汗びしょだった。しかし、ヒノキ風呂で非常にさっぱりだ。これが整うってやつか。
お風呂場にはふわふわに畳まれた寝巻きなどがあったために、遠慮なく使わせてもらった。
ご飯は無かったので、オリビアとどうする?と言いながら今日はもう遅いし疲れたし寝ようという結論に至った。そして今、僕らはそれぞれの寝室を選んで各々寝る準備をしている、というような感じだ。
ベッドに横たわりながらレガテリア王国の事を思い返す。ヴァルヴィデアでも獣人族と一緒に過ごした事があったけど、もしかしたらあの人たちはレガテリア王国から来た人だったのかもしれない。あんまり覚えてないけど。
しかし、王族の人と話してて思ったけど、やはり巷で言われてる獣人族が短気っていうのはただの偏見だったね。王様とか途中戦う気満々だったのに、立場を鑑みて冷静に辞めてたし。やっぱり実際に会って話して見ないとわからないことばかりだ。百聞は一見にしかず、これに限る。まあ王様も兄君たちもシンラ姫に対する愛は凄まじくて見境なかったけど。
でも、確かにシンラ姫は可愛かったなあ。どうやら僕は可愛い人に弱いようだ。可愛いは正義であり、受け入れるものだということを今日僕は学んだ。これからも様々な可愛いを受け入れていこう。
あとはロード兄様のことだな。明日どうしようか?また王宮に行ってみようか•••でも、忙しいよね。うーん、どうしよう?
「?」
そんなレガテリア王国の事や今日のこと、明日のことをふかふかのベッドで寝ながら考えていると、ドアがノックされる。
「はーい?」
もちろんこの家には僕とオリビアだけで、ドアが開かれた先には当たり前にオリビアがいた。
「どしたの?」
「ウィル、わたしこんな広いところで寝たことないから、ちょっと怖くて•••一緒に寝ていい?」
「もちろん!」
もちろん即答!なぜなら僕は、全ての可愛いを受け入れる愛の戦士なのだから!恥じらうオリビアはプライスレスだ!!
でもまあ確かに、こんな使用人が何人も入れるような大きな屋敷に1人で寝てると、物音はやけに大きく聞こえたり、影や部屋の模様が変なものに見えたりしたり、良からぬ考えがついつい思い浮かんじゃうかもしれない。倒されるんならゴーストでもなんでもいいんだけど、1番は倒せられない、こっちから関わることができない不干渉な事象が怖い。待てよ、なんだか僕もちょっと怖くなってきたぞ。
「隣、いい?」
どうぞどうぞ。
オリビアが僕の横に寝そべる。
僕とオリビアはまだ10歳。体も年齢相応でそんなに大きくないので、貴族の馬鹿でかベッドには2人寝てもまだ余裕がある。
「なんだか親の目を盗んで遊んでいるようでわくわくするね。僕もちょっと怖くなってたんだけどさ、今さっきまでの怖さは忘れたよ。ありがとうオリビア」
「ふ、ふん。そんなこといってどうせシンラ姫のこととか考えていたんじゃないの?」
おや?君は名探偵か何かかな?
「そ、そんなことないよ?」
「ジー•••」
う、何も悪い事してないのになぜか悪い事をした気分。
「そんなことはないけど、今日会ったことは思い出してた、かな?」
うん、これなら嘘も言ってない。真実を含めるのがペテン師の常套手段だという。僕、ペテン師にでもなろうかしら?
「ほら考えてたんじゃん。ウィルの変態」
どうやらペテン師の才能はなかったみたいだ。ていうかボコされすぎじゃない僕?え?僕って変態なのだろうか?いや、確かに変態かもしれない•••でも僕は紳士でもある自負がある•••。まさか
「これが、変態紳士というやつか?」
「何言ってるの?」
オリビアはもうっと口を尖らせる。
「わたしさ、ウィルがどっか行くんじゃないかって心配だった」
どこか物憂げな顔をするオリビア。
「ウィルは強いしさ、意志が強いから、色んな人にどんどんと必要とされていくんだって今日思ったんだ•••シンラ姫みたいにウィルと添い遂げたい人だって出てきてさ。しかもアーサー殿下だってウィルを騎士にしたでしょ?なんかウィルがそのままどっかにいきそうでさ•••」
オリビア•••。
「僕は、どこにも行かないよ」
僕にはいたい場所がある。
「そりゃみんな重要だよ。でもね、僕は大切な人のそばにいるって決めてるんだ」
僕はアーサー殿下の騎士であり、もちろん殿下の剣となり盾とならなければならない。でも、帰るところは別だ。僕の大切な人っていうのは父様や母様、大切な家族のことだ。だから僕は家族のもとにいたいのが、僕の願いなのだ。
「大切な人って?」
「家族かな?」
「じゃあわたしたちも家族になろうよ」
!?
「それってどういう•••」
僕が驚いてぐるんっとオリビアの方に顔を向けると、オリビアはすーすーと寝息を立てて寝ていた。いつの間にか寝落ちしていたようだ。
まったく、寝顔も可愛いなあって思いながら、僕はオリビアの言った家族になろうって言葉が頭に残る。確かに僕は大切な人は家族だと言った。でも、これから家族になっていく、というのはどういう事だろうか?結婚•••ということ?結婚•••10歳の僕にはよくわからないことだ•••。色々と考えようとするが、僕も疲れて段々と思考が定まらなくなってくる。思考がまとまらず、それでも、微睡んでいく中で思ったのは、オリビアとはずっと一緒にいたいということだ。
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「ウィル、ねえウィル。朝だよ」
「————んー?」
昨日の疲れもあってか、気を失うように寝ていたらしい。昨日の寝る時の記憶が曖昧だぞ。でもその分、スッキリ快眠だ。
日差しが窓から入ってきて、眩しいながらも朝が出迎えてくれたみたいでとても気分も良い。
うーーん、と伸びをする。
朝日に照らされた部屋を見て、そういえばここはいつもと違うところだったなと、再認識する。
オリビアが横にちょこんと座っている。
「おはよう。オリビア」
「おはよ。朝ごはんどうする?」
未だに寝ぼけている頭をぼりぼりと掻く。
「そうだね、何か食べに街に出てみようか?」
ロード兄様についても何か情報あるかもしれないし。
「いいね!じゃあ準備しくるね!ウィルもちゃんと起きるんだよー」
オリビアはそうして部屋から出て行った。僕は•••とりあえず、二度寝はしちゃだめだな。
よし、とオリビアとのデートだと気合を入れて立ち上がる。じゃあ僕も用意しますか。




