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第3章 第49話 【大剣姫の気持ちは突然に】

 バケツから水を溢したみたいに、水の牢獄であった水球が崩壊する。大量の水が自然界に戻り、ぼとぼとぼとっと、息絶えたブラッディベアが地面に転がり落ちる。


「終わった•••?」「魔力量がやばすぎてふらついてたら、いつのまにか終わってたぞ」「これがマドワキアのアンオブタナイト級•••」「まさに”殲滅”だ•••」


 レガテリアの冒険者たちと思われる人たちがざわざわしている。新たに現れた脅威だ、と言わんばかりに少し引いている。えっと、一応君たちが襲われていたブラッディベアを僕たちが倒したんだけど?そんな目を向けられると悲しいよ?


「•••」


 シンラ姫に至ってはなぜか何も言ってこない。放心というか、恍惚な表情?でこちらを見ているというか。

 

「お疲れ」


「お疲れ、オリビエ。今日も凄まじい剣技であった。惚れ惚れしたよ」


「変なこと言わないの」


「ンゴッ」

 

 デコピンをされた。仮面ごしだけど、衝撃が凄かった。さすが”真”の使い手、その”心眼”にはデコピンといえど見えているものが違うか•••おかげで変な声が出たじゃないか。

 まあ何はともあれ、こんなふざけられるのも、みんなが無事で乗り切ったからだ。よかったよかった。

 とりあえず、怪我人をレガテリアで治療してもらわないと。


「おい、大剣姫。貴様の剣技も面白かったぞ。駆けつけてくれて非常に助かった。礼を言う。それでだな、先に来ていた冒険者たちだがレガテリアの者たちだろ?すまないが手当をレガテリアで」


「いえ、助かったのはわたしもです。そして出会ってくれて非常に助かったのはわたしもです。ああ、本当に、あんな魔力でぐらついたのは初めてです」


 ん?


「いや、だから冒険者をだな」


「オリビエさんも実力を誤ってました。ムメイさんの言うようにとんでもない剣技でした。わたしより強いと言うのはあながち間違ってないかもしれません。けど、重要なのはそのオリビエさんよりも強者ですね、ムメイさん?魔法はさながら、その実力は近接戦においてもオリビエさん以上と見受けられます。ああ、なんと、なんと素晴らしいことなのでしょうか。そのような方とこんな劇的な場所で出会えるなんて」


 あの、なんか、自分の世界に入り込んでません?


「あの、冒険者をですね•••」


「これが運命というのでしょうか?不思議な感覚です•••」


 うん、僕も不思議な感覚だよ。


「ああ、ムメイさん、わたし感情がコントロールできません。なんだか、こんなことになったのは初めてです。でもこれはわたしの”本能”が正しいとも言ってます。こんなこと、こんなこと本当に初めてです•••」


 ぐいぐい、とシンラ姫がこちらに詰め寄ってくる。体を押し付けてるまである、ちょ、ちょっと、なんか当たってます!あたりに来てます!ゴスロリの上からわからなかったけど、なんか意外にあるんだ、じゃなくて!


「わたし、わたし!あなたと結婚したいです!」


「え?」


「何言ってるの!?」


「姫様!」「ご乱心を!!」「吊り橋効果というやつでは!!」「どうか落ち着きを!!」「姫様はまだ10だ!ムメイとやら真に受けるでない!!無礼者が!!」

 

 素の声が出る僕。設定を忘れてしまうほどの一撃。そしてオリビアも驚いている。冒険者も予想外だったのか慌てている。そんでもって僕も理解が追いつかない。真に受けてないし、勝手に言われているので無礼と言われても、え?本当にどういう状況?さっきまでぐったりしてた冒険者たちも元気になってる。みんなびっくり回復だよ。本当にどゆこと?

 ていうか君、小さいとは思ってたけど、僕らと同い年なの?なのに意外にあるの?じゃなくて!えっと、本当に状況が飲み込めんぞ。僕の未来視もパニックなのかうんともすんともない。そらそうだ、こんなこと経験にないもの!経験と予想の最終形態の未来視もこんなことに使われそうになるとは思わないだろう。魔眼化するか?未来視は大事なことなんだから自分でしっかり考えろと言ってきているような気がする。自分でも何を考えているのかわからない。僕もパニックだ。


「お黙りなさい、あなたたち。レガテリアの女は強い男と添い遂げるのが宿命。この遺伝子に強き者をもとめることが刻み込まれているのは承知でしょうが。ならばこの感情はごく全うとは思いにならなくて?」


「でも、姫様」「どこぞのものかわかりません!」「しかもこいつらは魔族と疑いの目がありますよ!?」「どうか姫様、姫様の人生はまだまだ長いです」「熟考、熟考を!」


「ええい、うるさいです。魔族は()()()()()()()()。この方はそちら側ではないわ。何よりも、師匠に雰囲気がどことなく似てますもの。ああ、これも運命でしょうか。ますますあなたしかいないと思えます。確かに、わたしは獣人族、種族の壁はあるかもしれません。ですが、わたしたちならそのようなくだらない壁、ありふれた階段の段差のようなものだと思いますの。歩くように、当たり前に越えれますわ。そんなこと言っても早急ですよね、そうですね、まずはムメイさん結婚式はいつにするか話し合いましょうか?」


 剣術をレガテリア王族に教え込んだ師匠ってやつは誰なんだとか、魔族を見ただけでわかるのとか、色々言いたいことがいっぱい出てくるけど、全て結婚という言葉で吹き飛ばされる。

 シンラが目と鼻の距離にいる。よく見ると、シンラはオリビアとは違い綺麗というより可愛いという感じだ。垂れた目は愛らしく、その愛でたくなるようなしなだれ感は普通なら即オッケーの返事を秒で出してもおかしくない。じゃなくて!


「ふん、俺はこう見えて相当歳だぞ?お前みたいな小娘とは歳の差がありすぎるわ」


 可愛くて魅力的だけど、よくわからないしまずは誤魔化してお茶を濁そう。優しい嘘というやつだ。


「夫婦の間に歳の差など関係ありませんわ」


 意志が強い!


「待ちなさい。大剣姫とか言ったわね。早急にことを進めるな」


 オリビア!言ってやってくれ!


「何かしら?わたし、ムメイさんにお話ししてるんだけど」


 体はすり寄せたままで、顔も僕の方に向いたままシンラ姫が応える。


「ムメイが困っているでしょ。あなたのは気持ちを押し付けてるだけに見えるよ。1番重要なのはムメイの気持ちじゃないの?」


 そうだそうだ!


 シンラ姫が眉間に皺を寄せて、しかし体は寄せたまま、オリビアの方に顔を向ける。


「なにかしら?そんなのじゅうううううううぶんにわかってるわ。だからこうしてまずは気持ちを表し、そして話し合いを提案しているんでしょ?あなたは何様?彼女なの?奥様なの?」


 話し合い?結婚式の日程決めるってやつ?なんか色々と段階が飛んでる気がするけど、あれ、なんかトリックアートみたいなことになってない?


「ち、違うけど•••」


 ちょっとオリビアが劣勢だ!


「じゃああなたもお黙りなさい。これはわたしとムメイさんの話なんですから。ね、ムメイさん?」


 ウィンクをバチこりして、猫撫で声で話しかける。可愛い!じゃなくて!!

 ね〜ムメイさん、ね〜ムメイさ〜んともはや体をすりすりだ。猫の種族なのかすりすりがとても愛くるしい。じゃなくて!


「ムメイに、弱い人、は似合わない」


 オリビアが絞り出したように言う。

 ぴくっ、とシンラ姫が肩を振るわせる。


「ムメイは相当な鍛錬を積んできた。あなたの言うとおり、わたしよりもムメイは強い。でも、わたしだってムメイの隣に入れるように鍛錬しまくった。あなたもたくさん訓練して、強いかもしれないけど、まだまだ足りない。ムメイはこんなだけど、もっと、泥臭くて、それでいつも自分を越えてきたんだから。わたしよりも弱いあなたがムメイの側にいる資格があると思うの?」


 オリビアさん、ぽつぽつと言葉を発していくうちに沸点に達したのか、完全にキマッテます。まさか僕が僕のために争わないで!状態になるなんて思いもしなかったけど、この場の収束は僕の手からもう離れてしまった。


 シンラ姫の顔は怒髪天、猫耳もビンビンに毛まで逆立っている。


 後は女同士の闘いだ。


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