第二章 第五話
ん?まてよ。さらっと流していたけど今までの話からすると、父様が真・ヴァルヴィデア流を僕に話したってことは
「父様、僕って今はヴァルヴィデア流剣術の免許皆伝なのですか?」
「うむ?そうだぞ。修行用と言ってもこの私に一本入れたんだからな、相打ちと言えど一本は一本だ。一瞬でも師の領域に達したんだからそれは皆伝だ」
おおおお。
父様の口から改めて聞くと実感が湧いてくる。
僕は成長できてるのだろうかどうか心配だったけどどうやら一歩ずつ前進しているようだ。
「これからも精進するんだぞ。そして頂へ来い。その光景を一緒に見ようじゃないか」
父様は微笑む。
父様が僕の実力を認めてくれているようで僕は自信が漲った。そしてこれからも頑張ろうと思った。父様は褒めるのがうまい。そして厳しさもある。その緩急が弟子である僕を奮い立たせる。父様はどうやら指導者としても素晴らしい人らしい。ヴァレッドさんは王には向かないと仰ってたが、父様と修行が始まった時は僕もそう思ってたけど、意外にまんざらでもなかったのじゃないだろうか。
そんな幸せを噛み締めて食べる母様の料理もとても美味しい。幸せの2倍だ。
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母様の料理は今日もめちゃくちゃ美味しかった。王城の料理ももちろん一流で職人の味がしておいしかったけど、母様の料理は母様の苦労とかそういうのがより身近に感じられるからか家族の温かみが感じられる特別な味がある。体力的な回復はもちろん、精神的な回復作用もあっちゃうそんな逸品だ。これが母の味ってやつなのかなと余韻に浸る。
そんな食事を終え、いつもなら引きこもるところ真・ヴァルヴィデア流について考えているとなんだか体がうずうずしてきたので家からすぐ出たところで剣を振ることにした。
父様曰く、真・ヴァルヴィデア流はヴァルヴィデア剣術の先を行くという。
それは一言で言うとヴァルヴィデア流剣術を基礎として尚且つ自分の型へと昇華させること。ヴァルヴィデア流剣術を極め、その先に自分に特化した流派を作るに等しいということ。故に真に至った者にはそれぞれを関する流派の称号を得る。父様は攻撃に特化した剣で真に至った。父様は剣で至ったが他には槍とか斧とかで至る人もいるらしく武器は問わないらしい。真から言うとヴァルヴィデア流剣術は本当にただの土台に過ぎないのだという。ただ真に至るそのきっかけは気づくか気づかないかの差だという。父様は守るのは性に合わないからということでどうやったらより攻めれるだろうかと考え『剣2本にすれば攻撃倍になるやん?』と双剣に行き着いたらしい。そして真の称号として真・ヴァルヴィデア流剣術鬼人派と命名されたらしい。僕はそれで父様が修行用で片手しか使っていないのか理解した。すごい手持ち無沙汰感がずっとしていたのだが本当はもう一つ剣があったというわけだ。
じゃあ僕はいったい何が適しているのだろうか?
なんか泥沼に嵌りそうな気配しかしない。
だから僕はそんな不安を拭い去るように、または棲み分けるように月明かりの下で剣を振る。
あーでもない、こーでもないと剣を振る。だんだん煮詰まってきて考えすぎによる無我の境地に達してくる。もはや明鏡止水、無我夢中、考えることを止め、研ぎ澄まされた純粋な素振りになっていく。これが巷でいう賢者モードというやつなのだろうか?ふぅ。
賢者モードに突入し第三者的目線が開眼しかけていると、ふと、視線を感じた。
「?」
賢者モードからすぐに意識を取り戻す。僕のすぐ後ろは家なので右を見て左を見てと周りを見渡してみる。すると、家からちょっと離れた月明かりでも見える木の木陰に僕と同じくらいの女の子がひょこっと顔だけ出してこっちを見ていた。
村の子かな?と見ていると目が合い女の子はささーっと気まずそうにどっかに行ってしまった。
こんな時間に何してるんだろう?と思ったけど僕も人のことは言えないなと思い失笑する。向こうからすれば夜中に淡々と素振りをするやばい子供に見えたに違いない。むしろ僕が悪いのか?
夜もだんだん更けてきたしやめ時のいいタイミングかなと思い素振りを止めることにした。明日から修行も始まるし今日はもう休むとしようかな。
それにしてもあの子は誰なんだろう?こんな村に僕と同じくらいの子がいるとは思わなかった。でも、狩りに行く時は森の中だし、それ以外は父様と修行しているか家で引きこもってるかのどっちかだから村のことって意外によくわかってないんだよね。でも僕と同じくらいの人がいてよかった。父様と母様以外に今は知り合いがいないからそりゃ僕だって友達が欲しい。でも僕らは外から来た人間だしなあ。嫌われてなければいいけど、そこのところどうなんだろ?父様、母様はうまくやってるのかな?明日聞いてみよ。
そして、僕は木剣を片づけて寝て起きるだけぶっ倒れ魔力増幅ルーティン である魔力を吸うだけの16魔法陣を展開して家に戻った。




