第3章 第44話 【試験開始】
勉強の試験において重要なのは、簡単なものを全て落とさないことだ。どれだけ難しい問題ができても、みんなが落とさない部分を間違えると点差は如実に出る。差が出ないところで差が出てしまうからだ。だからまず成績上位に組み込むなら標準的な問題を全て答えれるようにすることだ。その中で得意不得意の分野がある。どう頑張っても理解するのが難しくて、頭に入ってこない分野が。そう言う時は”理解できない”と割り切るのが1番だ。でもそれだと一生その部分ができないので、できないと割り切ってからすべて覚えるっていうのがひとつの方法だ。あとは全て反復しなければ自分の力にはならない。これは稽古とも一緒だね。
そして、さらに詰めるなら人には忘却曲線と言うものがある、らしい。記憶が何もせずに保っている日数ってやつらしいけど、確かに何もしなくても覚えているけど、だんだんと忘れていくのが人ってやつだ。それを個人的に何日くらいで忘れるかっていうのを数字で表したのが個人の忘却曲線。これを利用して、忘れそうになる直前に復習することで記憶の定着を効率よく行える、ってやつだ。これは効率重視のオリビアがやってた勉強方法で、何回か試してみたけど、非常に良かった。
王立に通う生徒なので、知ってて実践してる人もいれば、勝手に身についてる人もいた。それほどポテンシャルが高いのだ。でも、テクニックもポテンシャルもそうだけど、差がつくとしたら圧倒的な時間だ。質も重要だけど、トップにたつ誰もが陰で鬼のように時間を詰めて努力をしている。だからどこよりも早く、幼少期より最高峰の教育を受けている貴族は強いのだ。だからそいつらに勝とうと思ったら、1つ。
「気合いで、効率よく、鬼のように勉強するだけだ」
僕らは休む暇もなく勉強しまくった。休み時間は各々のクラスで、それぞれ問題を出し合ったり、寮に帰ると時間を決めてみんなで集まって、同じ分野を勉強し合い、要点を教えあったり。インプットとアウトプットをこれでもかと回転率を上げて行った。
オリビアとは学校で一緒に勉強するけど、やっぱり効率よく勉強するので、短時間でどんどんとレベルが上がっていっているのが身近でわかる。だからオリビアのペーパーテスト部分は心配いらないと思われる。
むしろオリビアを見ていると僕も勉強を頑張らなきゃと思う。うーん、僕は昔からそうだけど、興味ある分野はノリノリでいけるんだけど、興味ない分野に手をつけるのが中々時間かかるんだよね。だからこそ、最後詰める時は興味ない分野を中心に、息抜きに興味ある分野の復習をすることが良い。
勉強とは、己を知り、磨くために行うものだ。自分の得手を知り、不手に気づき、また不手をどう乗り切るかを考え、得手にしていく。様々な分野がある学校の勉強というのは、とても自分の利点欠点を気づかせてくれるいい教材だ。
そしてもちろん、放課後のオリビアとの秘密の特訓も欠かさなかった。オリビアも”真”に至ったことから、稽古の質がとんでもなく上がり、自分たちの力がムキムキと変わっていくことが身にしみてわかる。実技もかなり仕上がっていっていると実感する。
そうして試験期間の2ヶ月は一瞬で過ぎて行った。
正直、今回の試験は激化すると思う。というのは僕ら一般枠がありえないほど根を詰めて勉強していることに、貴族たちも感化されたからだ。最初は貴族たちは一般枠がもがいている(笑)みたいな感じで嘲笑って行ったが、その本気度にだんだんと圧倒されていき、彼らも最後は黙ってずっと勉強していった。だから、と言うのも変だけど、特撰じゃない一般枠の僕の同級生たちは変なあたりがなくなったって言ってたな。
アーサー殿下が、まるで戦場のような雰囲気だよ、と仰っていた。中等部1年だけ物々しいとも。
確かに、言い得て妙だ。だけど、その表現は正しいように思う。実際に血が流れるわけではないけど、これは戦いだ。結果次第では血ではなく、涙が流れ、失うものもある人たちもいるだろう。各々の努力と実力をかけた戦いだ。
▼
「やべええ緊張するう」「なんか今までの試験とは比にならないのはなぜだ」「今更緊張しても仕方ねーよ」
「ウィル君、なんだか多くなったねー」
僕らは試験日1日目、オリビアとアディに加えて、みんなで登校していた。
「みんな頑張ってたじゃん。後はやるだけ、だよ!」
オリビアがみんなに発破をかける。オリビアのいう通り、ここまで来たら後はやるだけだ。
「女神だ」「なんて清らかなんだ」「俺、なんだかいつもより頑張れそう」
ふっ、オリビアの輝きにまたしても飲み込まれる者たちが出てしまったか。そう、オリビアはなんと言ったって、尊みが段違いだ。その神聖さを汚れた目でなぶり散らかすような者は目をほじくり抜いてやるが、みんな純粋な気持ちで前を向けたのでどうやら僕のゴッドフィンガーが火を噴くことは無さそうだ。
「不安になるのは、自分が頑張った証拠だよ。僕だっていつも不安だ。でもそういう時はやってきたことを振り返って自信を取り戻して。オリビアのいう通り、あとはやるだけ、だよ」
先生〜、とみんな泣く真似をする。勝手に先生にしないでほしいけど•••だって努力したのは君たちなんだから。でも、みんないい顔になったね。本当に僕たち頑張ったよ。ただ、結果が出なければ勝負事は意味がない。惜しいは惜しくないと一緒なのだ。
さあ、試験の始まりだ。




