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第3章 第41話

 僕も構える。左手を前に、右手を腰に、手刀の構えを。


 父様はオリビアの戦いから引き続き、最初から全開だ。


 僕の前から存在ごとかき消える。


 前までは対応できなかった父様の型•••でも、父様。僕だって成長してるんですよ?


 僕は見える範囲も、意識外の範囲も()()()()()。父様の攻撃が、全て視える————。


 意識外からの父様の猛攻を全て防ぐ。


「フハハ!やりおる!!もう対応してきたかッ!!!」


 父様の猛攻は止まらない。前は”虚”の型だけだったけど、父様は今、”虚実”両方の型を混合させているスタイルだ。”実”の迫力がある分、”虚”を追いかけづらい。父様も進化している•••ただ、もう全てが視えている。全集中しすぎて血管が荒ぶり、鼻血が吹き出そうだけど、全てを捉え切れる!!


 じゃあ僕だって前できなかったことをしようか。


 僕は、()()()()()()()()()()()()


「ほう!?」


 父様は更に手数と速さを増す。直感的に、未来視的に、危険と察知している。

 しかし、その全てを僕は捌き返す。そして、僕は()()()()()()()()()()()攻めに転じる。


「愉快すぎるぞウィル!!魔法発現をした状態で攻めてくるか!!実に奇怪!!だが、私の危険もまた事実ッ!!!」


 父様も防御、というかもはや攻め返しだ。僕の魔法発現をさせまいと猛打してくる。もはや、お互いの攻め手同士がぶつかり合っている。


 でも、準備は整った。


 僕の魔法が発現する。

 

 周囲に発散される電撃。

 父様はというと、僕の魔法が発現された瞬間に大幅な距離を取り回避している。

 

 戦闘において需要なのは速さと、その有用性だ。いろんなことを天秤にかけた時、現象の発現が早く、また効果が痺れという即効性から近接戦闘での魔法は雷系統の魔法を選択してみたけど、めっちゃ使いやすいな。まあ、他にもTPOで魔法が使えるようにしたいんだけどね。


「ふはは、お前たちには驚かさせる。いや、若い世代には驚かされる、というほうが良いか。自分の予想を超える成長をお前たちはしてくる。ふはは、悲観ばかりでは無いな。お前たちの時代が、時代を明るくしてくれる。ならば」


 父様の雰囲気がガラッと変わる。今までは戦闘を楽しむ、戦いを面白む父様だった。だけど、今の父様は人を殺す覚悟を感じる————ッ。


「私たちは戦乱の負債を全うするのみ。ウィルよ、受けてみよ。私の全力を!!!」


 父様の動きが更に早く、強く、研ぎ澄まされる。僕の未来視が全く反応しない!


 目の前に父様。


 全てがゆっくりと流れていく。


 死が迫り来る。


 全力で身体が死を拒否しようと情報を読み込む故の、スローモーション。


 ただ、もう父様はすぐそこだ。

 

 何か、何か、ないのか•••!


 ゆっくりと流れる時の中で、感じ取る。


 父様の眼に、魔力が宿っていることを。

 

 これは、魔眼なのか•••?


 父様の未来視は、経験からくる予測ではなく、現象として成り立っている未来を捉えているのか•••?


 だから僕の未来視は、父様が見る結果を見れずに、全く反応しないのか?


 父様、いったいどれほどの研鑽を積まれたのだ。でも、だけど•••だけど、僕だって超えなければならない!

 僕だって経験と予測の未来視を叩き上げてきた自信がある!!なら、それ以上に視れない未来は、()()()()()。今の未来を越えれなければ、先の未来なんてない!!!

 経験と予測、そして足りない部分は魔力で補う————魔法発現のエネルギーになるのなら、ただ単なる魔力だって不足分のエネルギーになるはず、そこに術式はない、あるのは気合いだけだ!!!


 眼と脳に魔力が駆け巡る。頭にとんでもない負荷がかかる。でも、そんなの知ったこっちゃない。その先に視えるものがあるッ!!


 僕は、父様の未来を共有する。


 これが父様の視る景色、なるほど、一寸の息する時間すらないな!!


「ここまで辿り着くか、ウィルッ!!」


 ここからは単なる殴り合い、最後まで立ってたやつが勝ちだ!!!


 父様は振るう、音をも置き去りにする剣技を。

 僕は舞う、全てを超え、魔法を背に輝かせて。


 そして発現する、積み重ねてきた魔法たちを。


 だが、父様は紙一重で魔法を潜り抜け攻め手を欠かさない。


 僕だって手を使い、魔法を使い、猛追する。


 幾度もの父様の剛剣を交え、何度僕の魔法が発現されたか、わからない。戦い合っている地形も変わりつつある。


 お互いに未来視を極限まで高める。父様の体の疲労感も、疲れからくる動きの違和感も全てを取り入れる。もう、父様もガタが来始めている。


 僕は更に加速する、体を、置き去りにしろ————!!


 乱舞乱舞乱舞。瞬間、父様の僅かな隙が生まれる。

 

「ここッ!!!」


 僕はこの瞬間を待ってましたかのように、魔法を発現させ、電撃をブッ放す。


「グッ!?!?」


 父様は驚異的な反射で避けるも、僅かに、でも充分に僕の魔法を喰らってしまう。


 その一瞬を、僕は逃さない。


 僕の手刀が父様の喉元手前に置かれる。

 

 終幕。


 しかし、父様の木剣もまた、僕の首元に添えられている。


 まじかよ、あの痺れで無理やり動かしたのか?どんな気合いだ•••これは、これは引き分け?


「父様、これは?」


「ふはははは、懐かしいな。ウィルが私に相打ち覚悟で一撃を決めに来た時を思い出す。しかし、今はまったく状況が違うな。お前は私を打ち取れる算段をして、私は気合いでお前を討ち取ろうとした••••成長したな、ウィル」


 父様に、全身全霊の父様に、届いたってことでいいの?


「ウィル!ウィル!!凄いよ!!」


 オリビアも体力が戻ったのか、僕に拍手を送ってくれている。可愛い笑っているオリビアを見ると、戦いのない日常に戻ってきたんだと感じれる。僕のことのように喜んでくれているオリビア、なんだか照れるなあ。


「ま、私の方が2ミリほど剣先が近いから私の勝ちだな」


「父様!?」

 

 大人気なくない!?いい雰囲気だよ今!


「ふはははは!冗談だ!結果的には引き分けだが、気持ち的にはウィルに軍牌が上がりそうだな。いやあまいったよ。本当に、お前たちは強くなった!これで私も安心だ」


 豪快に笑う父様。父様との戦いの余韻が父様の冗談で薄れたけど、ただ、そのことで緊張が途切れたのか、父様の全力に届いたことにだんだんと感動する。


 最後は僕が“真”に至った時の、父様に一本入れた時とは、全然違う父様だった。本当に戦場での”鬼人”の父様だったのだろう。それほどまでに、あの迫力は異次元だった。ただ、そのおかげか、僕も次元を超越できた気がする。はあ、嬉しい•••が、それと共に身体も落ち着いてきて、今更になって今までの負荷が押し寄せてくる。頭が、めちゃくちゃ痛え。


 僕が父様に届いたことに感動しながら、頭痛を耐えるべく頭に手を添えていると、父様が頭を撫でてくれる。


「ウィルよ、よくその眼にもたどり着いた。恐らく死の間際の超越した直感だろう。しかし、それは逆を言えば自分の限界を超えた代物だ。計り知れない負荷がかかるはずだ。なんせ、この私でも、その眼をずっと使っていれば疲れる。用心するように」


 父様の手は、暖かい。なんだか頭痛が和らいできた気がするぞ。


「ただ•••ウィルとオリビアよ。その歳でそこまで到達できたのなら、どんどん手の届かない存在になって行くだろう。ウィルのその眼も私以上に使えるようになるはずだ。オリビアに関しては、本当にどうなっていくか楽しみだな」


 一陣の風が靡く。


「本当に、よくやった。これで安心できる。私はもう、()()()()()()()()()()。2人で切磋琢磨していくように。次会える時は、私は手も足もでんかもな!ふははは!うむ、よくぞ強くなった!!」


 父様は晴れ渡った空を見上げて豪快に笑う。

 これは、父様がもう自分のことに専念するということだ。もう、頻回には会うことはできないということ•••。でもここで、別れを惜しむのは今の僕たちが選ぶ選択肢ではない。寂しいけど•••。オリビアもわかっているのか、口をぐっと噛み締めている。


「もう誰にも負けませんよ。なんせ、父様の弟子ですからね」


 なら、僕たちはこの恩を強さで返すべきだ。


「本当に、次会う時、師匠は手も足も出なくなってるからね」 


 オリビアも少し、声が震えてるけど、笑顔で強く言う。


 涙はいらない。


「本当に、強くなったな」


 父様の微笑みに、光がさす。

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