第3章 第37話
「ウィル、どっちに行く!?」
「僕はここを守る!オリビアは前の馬車の加勢にいって!」
僕は魔力感知で、この馬車を囲っている奴らがどこにいるかだいたいわかる。オリビアでは後手に回る可能性が高い。なら、オリビアには状況を読み取りながら加勢できる前の馬車の方が都合が良い。
僕たちは勢いよく馬車の外に出る。
オリビアはそのまま周りを見向きもせずに、飛び出すように前の馬車に加勢しに行く。
さすがオリビア!僕たちの馬車を囲ってる奴らだって、中の状況は把握できていない。だからノータイムで向こうに行く方が、この周りの連中だって予想できていなくて対応ができない。さらに隙が生まれたことによって、僕がこの周りの状況をさらに把握できる——— !
周りは6人•••いや、今はオリビアの前に運悪くいた1人が一瞬でオリビアによって薙ぎ倒されたからあと5人だ。5人が動揺するも、僕たちの馬車を乱れず、均等に囲んでいる。
こいつら、強くはない。だが、統率がしっかり取れている。個の力ではなく、群の力のタイプだな。
乱れを一瞬で取り戻し、再配置して対応できるようにできている。まともに相手をすると厄介だが、確実に司令塔がこの5人の中にいる。そいつをまずは炙り出すことだな。
向こうは落ち着いたのか、じりじりと間合いを詰めてくる。
ここまで、ここまで統率がとれているってことは、いったいどれだけの強襲をしてきたのだというのか•••。
「お前らに聞く、今までどれだけの人を襲ってきたんだ•••?」
じりじりと間合いを詰めてきた賊がいったん、その歩が止む。皆が顔を見合わせながら、次第ににやにやと下卑た笑いをする。
「子供がなんか言ってんぞ」「説教かな?」「大層なこった」「今まであまあまに育った坊っちゃんなんだろうなあ」
「坊ちゃんよ、俺たちは効率よく働いてるだけなんだよ」
笑い始める賊たち。
「頑張って働いてきたやつらの手柄をとってるだけ!あいつら偉いよな〜、だって俺たちのために頑張ってるんだからなあ!!」
げらげらと吹き出し、笑いが止まらない賊たち。
僕は気づいたら、近くにいた賊を1人吹き飛ばしていた。こんな品性も知性のかけらもないやつに同情の余地なしだ。
一瞬で1人脱落したことによって、ある賊の1人がみんなに支持を出す———あいつが司令塔か。
僕は魔力場に干渉するように、一瞬で僕の魔力を魔力場に満たす。賊たちは声も出すことなく、自分が魔力酔いを起こしたと認識できる暇もなく倒れていく。
残ったのはかろうじて意識だけ残っている、司令塔のやつだと思われるやつだ。
こういう群のタイプは隊列を乱せば、司令塔が炙り出せるのだが、全員沈んでしまったな。
僕は意識が残っている司令塔と思われる賊に近づき、そしてその賊に対し手を翳す。
「ヒ、ヒィ」
そして、位置固定の束縛の魔法をかける。
殺しても、こいつらの罪が消えるわけではない。1番の罪滅ぼしは、殺さず、生き地獄を見せることだ。殺しというのは、救済にもなるからね。でも、それをするのは僕じゃなく、しょっぴいた衛兵の仕事だ。それについてはプロにお任せしよう。
吹き飛ばした賊も引っ張ってきて、一箇所に、土の元素を元にした固定魔法で固めておく。
意識が残ってる賊は戦意喪失、完全に心が折れてしまっている。まあこんなんなら、ここは大丈夫だろう。
オリビアはどうだろうか。
オリビアの方を見るとちょうど、オリビアのが最後の賊を倒していたところだった。向こうで戦っていた人たちも大丈夫そうだな。ていうかオリビア、確実にこっちの領域に踏み込んでいるよね。剣を持ち、構え佇んでいる様だけで相当の圧だ。これは、達人の域だ。オリビアの一挙一動が”死”を連想させる。ふふ、この後の稽古が楽しみだ。
「オリビア大丈夫?」
「うん、今制圧したところだよ。衛兵に突き出すよね?」
オリビアは剣の手入れをして、鞘に戻す。
「うん、後の処理は衛兵に任せよう。多分どっちかの馬車の人が連絡とかやってくれると思うからこのまま、」
僕たちが今後について喋っていると、勢いよく綺麗な方の馬車の扉が開く。
「あんたらかね!わいらに加勢して助けてくれたんは!おや?」
そこから出てきたのは、僕らと同じ背格好をした眼鏡をかけた少年だった。しわのない、とても生地の良さそうな、首から足まであるシャツのようなものを着ている。ん?てかこの人見たことあるぞ。
「君たち、ウィルとオリビアかい?」
そうだ!この人、僕たちのクラスの人じゃん。最近クラスの名前を覚えた僕の新しい辞書には、名前は確か•••
「ベルフォート君•••?」
「ベルフォート君じゃん!あれ、何でこんなところにいるのー?」
オリビアも同時に名前を呼ぶ。え、オリビア友達なの?いや、オリビアは今となっては人気者だった。みんなが知り合いの1軍陽キャポジにいるのだった。この人とも知り合いだったのか。確か、マ二・ベルフォート。商業の国の1つ、”パドロン王国”出身のクラスメイトだ。
「もう、マニでええよ。わいら同級生やん。いやー、あんたら強いなーとは思ってたけど、まさかここまでとは思わんかったわ。ほんまありがとうな!」
独特な、ついつい移ってしまいそうなイントネーションで喋るマニ君。なんかこの喋り方、ずっと知り合いだったかのような距離感になるんだよね。いつの間にか距離を詰められているというか。さすが、商業の国出身だ。対話という戦いの中で一瞬で懐に入ってくる。
「ほんまありがとな。こっちで色々処理させて貰うわ。うちの運転手もやられてしもうたからな。あんたら先にいきーや。わいらはちょっとここでのんびりと立て直してからいくわ」
「いいのかい?僕たちも一緒にいようか?」
「いや、ええ。あんたらも約束があってこっちまで来てるんやろ?急いだ方がええんとちゃうん?その申し出もありがとうやけど、わいの護衛も強いさかい、大丈夫やで。さっきは不意打ちだったから後手後手やったけど、ほんまに悪趣味やわー」
確かに。マニ君の言うこともごもっともだけど、ここらへんから僕たちの目的地も後もう少しなんだよね。僕たちも時間はそんな急ぎはしない。
「マニ君は何しに来たのー?」
「商売や商売!ここの案件も結構ゴツいんやけど、他にもゴツいのがあってん、親父がわいにここ任せてくれてワクワクして来たんやけど、ハラハラまで加わってしもうたわ」
ほんま堪忍やで、と呟くマニ君。
はえー、この歳でもう家業を手伝っているのか。
「もう家業を手伝ってるの?すごいね!」
オリビアもびっくり。
マニ君と話をする中、ここの処理について、僕たちが乗ってた馬車でも情報を共有するらしく、マニ君の馬車の人と今情報を擦り合わせている。
「なんや結局一緒くらいになりそうやな。ほな、一緒にいこか、目的地どこなん?他の停車場に寄らんからわいのほうが早く着くで」
え、それは魅惑的な案。
「じゃあお言葉に甘えようかな」
なんだか友達ができる予感!




