第3章 第36話 【眠りを妨げられて】
よし、オリビアのも完成だ。
父様と会う約束をしている日の朝、僕は遂にオリビアの防具を完成できた。
オリビアの防具に施した付与は同じような付与。ただ、もともとの素材が断熱、防寒が見込めそうだったので、さらにどの環境でも過ごしやすいようになったはずだ。僕の防具と比べて、防塵が弱くて、毒無効がないのと、魔法陣のギミックは入れてないくらいかな。オリビアはまだ魔法について勉強中だし、今の武器は接近戦だけだから、あまり偏った仕掛けを入れるのはオリビアの無限の可能性ある未来に良くないと思って、当たり障りのない付与だけにしてみた。その気になれば付与魔法は変更できるので、オリビアの成長に合わせて調整していくってわけだ。
ふぅ。さて、今日は父様との稽古だ。寝不足の状態であまりのぞみたくないから、父様と落ち合う場所まで馬車で半日ほどかかるので、その時間寝よう。もう爆睡しよう。なんだかやる事を終えたら寝ない信念みたいなのが全て失せて、溜まりに溜めた眠気の貯金が、全て押し寄せてくる。うむ、気を失ったように寝たい。
あとは•••念の為に防具を持って行っておこうかな。オリビアにできたよって自慢したいのもあるし。
あらかじめ用意していた大きめなトランクケース2つに、オリビアと僕の防具をそれぞれ詰める。
チグハグな思考でとりあえず用意を終え、オリビアとの待ち合わせ場所である馬車の待機場所に行く。
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「はい、オリビア」
「もしかして!」
馬車の待機場所で、僕はオリビアにトランクケースを1つ渡す。
「できたの!?」
ふっふっふ、と僕は笑って答える。
「まあ、そんな変な機能は盛りだくさんじゃないよ。オリビアの今後の発展を期待して、あんまり変な機能はつけてないんだ」
それを期待してたらごめん。と一応補足しておく。
「全然!すごいよウィル!うわー、すっごい楽しみ!!」
オリビアは目を輝かせてトランクケースを受け取る。ケースを越して、その中の防具に釘付けだ。まだ防具自体は使用してないから、気に入ってくれるだろうか。まあ調整できるし大丈夫か!
「まあ、なんか気になったら言ってね。調整もできるから」
「調整もできるの?すごい!ウィル、ありがとうー!!」
よかったよかった。それから防具について少し喋って、ちょっと世間話をしてたら馬車が来た。正直オリビアにトランクケースを渡した後からは、オリビアの喜んだ顔以外はあまり覚えてない。そこらへんの記憶がなんだか靄がかかったかのように朧げで、記憶自体が浮ついている。その記憶を取り出そうとしても、ふわふわ浮いていって掴めない。もう、眠気がやばすぎていつのまにか馬車で寝ていたというか、もはや気絶していたのだ。
ごとごとと馬車で揺られる感じは、意外に寝心地が気持ちいいなあ。僕の意識は今はどこかのお花畑にいる。
どんだけ寝た時だろうか。お花畑の先に行き、どこにいるかもわからない、完全に真っ暗に深く寝落ちしていた時、
「ウィル、ねえウィル」
「んー、んんん?」
オリビアに揺さぶられて現実に帰ってくる。
なんか外がちょっと騒がしいけど、もしかしてついちゃった?
「爆睡してた•••ついちゃった?」
「いや、ついてないんだけど、外見てみて」
「?」
僕は馬車から顔を出して外を見てみる。
「あら」
少し離れた、馬車の進行方向に1台、整えられた豪華、というよりも綺麗な馬車がいる。いるんだけど、馬車の運転手的な人が地面に血を流して倒れている。そして、馬車を囲むように人がいて、その人たちが四方八方から身なりが良いとは言えない集団から馬車を守っている。これは•••実に、山賊に襲われている状況だ。
「ウィル、あれ、襲われてるよね?」
「襲われている。襲われているし、僕たちも囲まれている」
僕の魔力感知が、じりじりとこの馬車にも人が近寄ってきている事を捉える。あの馬車を襲うつもりだったけど、予想外に定期便の、僕たちが乗ってる馬車が来てしまったのだろう。同時にこの馬車も襲うつもりだ。
他の乗客も事態に気付き始め動揺してくる。
「オリビア」
「もちろん」
オリビアは剣を持つ。僕はグローブに付与魔法を発現させる。
みんなを危険に陥れたこと、許さない。あと僕の睡眠を奪ったこともだ。




