第3章 第35話
ようやくできたのは、あれから3日ほど経ってからだった。非常に、果てしない道のりだった•••。バランスの良い落とし所を見つけ、とりあえず『硬化』の付与を施してみた。問題なく、魔法は発現しており、支障はなさそうだ。
「ふぅ•••。長かったぜ•••」
僕は作業をしていた自室で、うんと体を伸ばす。
いつも不思議に思うのが、どんなことも終わらないことはないってことだ。どんだけ時間が経っても、どれだけ先が見えなくても、いつかは終わりが来る。不思議なことに。
まあそんなこんなで、今はなんとか形にはなったが、これはまだスタートラインにしか過ぎない。こっから付与を木の枝のように、いくつもくっつけていく。ふっふっふ、コツはもう掴んだ。後は僕のエゴで行かさせていただこう!!!
寝ずにぶっ通しで付与をし続けて、次の日の朝。
ふっふっふっ•••。ファーハッハッハッハ!!できたぜ、僕の考えた最強のローブってやつがよお。
付与した魔法は『硬化』、『防寒』、『防暖』、『撥水』などなど。まあ付与はどこでも生きていけると言ったのをコンセプトに当たり障りのない魔法を付けただけ。そもそも、このローブはバジリスクのお陰で、何もしなくても空気汚染地域に突入できる仕様になっていた。ならば、そのコンセプトを破るような付与をするのは野暮というやつ。なので当たり障りのない付与魔法を施した。
では何がいいかって?
僕は付与魔法を繋げて行っている中で考えた。魔力反応型と併用して作れないか、と。それから僕は、繋げていく中である文字列を全体像で見たときに別の魔法陣になるように配列してみた。つまり、素材の魔力量では付与魔法として発現するが、それ以上の魔力を通したときに、素材の魔力供給が阻害され、僕の魔力がそのある文字列に反応し優先魔力回路が変わり、ひとつの魔法陣を発現させれるのではないか、という考えだ。
そして作ってみた。
「ならば、あとは試すのみ!」
僕はローブを羽織り、口元を隠して、フードを被る。仮面はないが、今僕はムメイモードだ。
魔力を立ち上がらせ、ローブに魔力を注ぎ込むっ!わかる、わかるぞッ!!付与魔法を通っているバジリスクの魔力の供給は遮断され、僕の魔法が通るッッ!!!
ローブに描き込まれた、もうひとつの魔法陣が発現するッ!!!!
僕の足元に、足場となる魔法陣が出来上がる。
そう、これは忍者ハンゾウが上空に浮かんでいるときに僕も足場となる位置固定の魔法を利用とした魔法を使って、空に立っていたことの再現である。
僕は自室で軽くジャンプする。そして瞬間に、魔力をローブに通す。すると足元に魔法陣が現れて空に立てる。
ふっふっふ。計画通りだ。
この魔法陣の出現位置は僕の足元になるように設定されている。だから空中での移動も足場を蹴って、足場を作ってとで可能だし、魔法陣を組み立てる手間も省ける。さすが、いい素材だ。この位置固定の魔法陣を成り立たせる強度もしっかりとある。もう捗りに捗っちゃったよ。でもまあ、やれるとしたらここくらいが限界かな。これ以上すると魔法陣も反発して成りたたなくなりそうだし、そもそも素材が耐えれない気もする。ここら辺がバランスが良い、というやつだろう。
よし、これで僕の防具はとりあえず完成、と。オリビアの防具は学校が終わってからだな。
さて、父様から手紙が来てたな。前と比べて、父様の返信が遅くなっていて、ここ数日のやり取りで、どうやら父様は遂にヴァルヴィデアにいることがわかった。王城ではないけど、ヴァルヴィデアの外れにいるらしい。中々に忙しいとのこと。都市マドワキアまでは行けないが、中間地点くらいのところで落ち合えるとのことだ。早くて今度の休日会えるらしい。よし、オリビアの防具も残ってるし、それをちょうど付与したら休日くらいになるかな。うん、ベストタイミングだ。もしかして父様の未来視の眼はここまで予測できるのか?さすがに、ないか。いや、有り得なくもない気がする。
よくわからない自問自答を続け、ピコーんっと、これは恐らく睡眠不足による思考能力の低下だ!ということに気づき、そのまま30分ほど机で寝た。
「なんだかすっきり」
三日三晩以上寝ずに動いていたために、少しの睡眠でも頭が冴え渡る。これをランナーズハイって言うのかもしれないけど。さて、学校に行くか。
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「あれウィル君、なんだかご機嫌?相変わらず顔色は悪いけど、なんかいいこあった?」
「わかるかいアディ?遂にね、やらねばならぬことを1つ、終えたのさっ」
僕はアディにサムズアップする。
アディはお〜と大袈裟に驚く。彼なりの無駄なリアクションというかもしれない。ただ、気分は悪くない!
「ウィル終わったの!?」
オリビアが目を輝かせる。そう、これはオリビアの防具も入っているからね、オリビアも期待してくれている。でもオリビア、すまんね。まだオリビアのはできてないんだ。
「僕の、とだけ言っておこうか」
「えー」
「なんだか面白そうだね、試験についてかい?」
アディに興味を持たれるが、オリビアが耳元で、でもコツは掴んだってことだよね、さすがウィル。と秘密にしてる冒険者業をバレないように、アディに聞こえないよう耳元で囁く。
び、
ビクビクビクビクビクビクうッ!!!
突如走る電撃!!それは睡眠不足に効く、まさに特効薬!!!疲れ果て折れ曲がった体は真っ直ぐとなり!頭は晴れ渡り鮮明となる!!もはや脳内に虹が掛かっているようだ!!!
ちなみに2人は急にビクビクした僕をみて、遂に壊れちゃったか•••と生暖かい目をしていた。あ〜オリビアの可愛さが効くんじゃ〜。
「いや、オリビアのさ、声が可愛くて、さ」
まだビクビクの余韻に浸りながら僕はなんとか口にする。うん、なんとか言い訳しようと思ったけどもっと気持ち悪くなったね。
オリビアはため息をつきながら、なんでこの人のことを、とごにょごにょ呟いていた。ご、ごめん、連日の徹夜とオリビアの先ほどの刺激で聞き取れなかったよ。
アディはアディでなんか喜んでいた。たぶん僕が無駄すぎる反応をしたからだろう。
でもそのおかげあってか、僕が何をしてたかについてはアディは興味をなくしていた。聞かれてもはぐらかすことしかできなかったから、まあ結果オーライってやつだ。
アディはトイレに行くかなんかで学校の門のところで別れて、僕とオリビアが2人きりになる。
「そう言えば、父様が今週の休みに会えるってさ」
「ほんと!やったー!」
父様についてオリビアに報告する。久しぶりに師匠に会えるのでとても喜んでいる。よかったよかった。オリビアの笑顔が1番。
「ただ、ちょっと父様は今ヴァルヴィデアにいるらしくて、その中間地点で会おうって言う話になったよ」
「そうなんだ、おっけー!久しぶりの遠出だね。馬車で行くよね?」
「遠いしそうしようかなって思ってるよ」
ヴァルヴィデア方面はちゃんと整備された道だし、比較的に寄り道がないので、距離的に同じくらいのホグン村よりも早く着くことができる。ホグン村は大体朝出て夕方過ぎに着くことに対して、こことヴァルヴィデアの中間地点なら半日くらいでつくぽい。
「オリビアのは今日からとりかかるから、申し訳ないけど稽古の方は父様に会うまで自主練ってことでいいかな?」
「そっかー•••うん、まあ多分大丈夫だよ!後はイメージの仕上がり具合な気がするから」
ふふ、オリビアの実力を見るのも楽しみだな。父様は驚くんじゃないかな。さあて、僕もそれに合わせるように付与魔法、頑張ろうかな。




