第二章 第四話
「ご飯できたわよー!」
母様のご飯ができた声が家に響き渡る。
マドワキア中央王国の中のその辺境に追放されたとき、父様と僕は狩や畑仕事に、家事は母様がする様になった。ヴァルヴィデアにいる時と違って全部自分でしなければいけないが母様は料理を趣味でしていたこともあり全然苦には感じていなく他の家事と合わせてむしろ活き活きしている。それとともに父様はますます母様に尻に引かれる様になった。でもその関係性がとても温かく家庭に笑いが絶えない、とても今が幸せなのだ。
テーブルの上には出来立てを引き立てるほのかな湯気が立ち上がる。今日狩ってきた猪のステーキ、とりたてほやほやの季節の山菜の盛り合わせ、また母様秘伝のスープだ。あとは付け合わせのパンが少しばかりある。めちゃくちゃ美味しそうでついついよだれが口の中に広がる。食欲は人間には抑えられない欲の一つということを実感する。僕は席につき母様が作った食事を目の当たりにし食欲が倍増し億増しになっていく。でもいつにも比べて、なんというか今日はとても豪華だ。
「母様、今日もとても美味しそうです!そしてなんだかとても豪華な気がしますが!」
「そうよ、ウィル。聞いたわよ。今日父様に一本入れたんでしょ?とてもめでたいじゃない!だから今日は少しばかり豪華なの。おめでとうウィル!」
そう言って、ぱちんとウィンクをする母様。まだまだお茶目な僕の母は可愛い。
「おぉ、今日のご飯は豪華だなあ。これはウィルに一本入れられた甲斐があったな」
笑いながら父様が遅れて席に着く。そしてみんなでいただきますをして父様と母様はキンキンに冷えたエール、僕はキンキンに冷えた水で乾杯をした。
「ウィル、それにしても本当にすごいじゃない。こんなに早く父様に一本いれるなんて今まで誰もいないんじゃないかしら?」
「母さん、私だって修行用に手加減をしていたんだ。まだまだ負けたわけじゃないからな」
「もう、あなたったら負けず嫌いなんだから。そこは『さすがだウィル』でいいじゃない」
それもそうだなと父様は笑って僕の頭をワシワシ撫でくれる。よくやったと微笑んでくれた。この空間になんだかこそばゆい気持ちになる。
「でも父様、ロード兄様もこのような修行をしたのでしょう?ロード兄様も父様と戦ったのはではないですか?」
僕はこそばゆい気持ちから気を逸らそうと他の兄姉たちはどうだったのか聞いてみる。
「そうとも。ウィルが言うように同じ修行を私自らしたぞ。ただ、ロードが修行用の私に一本入れれる様になったのは高等学校を卒業するときだ」
嘘!?
「ロードは傑物だ。いずれ私を超え、国を統べるものとなっていた。そんなロードがこの修行を終えたのは高等学校でだ。正直、ウィルの成長のスピードはわけがわからん」
そ、そんな人外みたいに言わなくても、、
「故に、ウィルの成長が面白くてついつい詰めて修行してしまったのもあるだろう。ロードの時は私も政策に忙しくてこんなに密にはできなかったからな。そういうのもウィルのいい方向に向いたのかもしれん!」
あー、なるほど。父様は紛いなりにも一国王をやってたわけでそれは日々が忙しかったに違いない。その中で修行をつけれるのはほんのちょっとであろう。それなのにロード兄様は自ら学び昇華し父様に一本入れたのだ。やっぱりロード兄様はすごい。兄様だって学校のことがあって暇ではなかったはずだ。僕はただ、僕も暇で父様も時間がありまってるから修行の時間が密だったに過ぎないのだ。でも、そんな環境に身を置けることが幸せなのだろう。僕も精一杯今を甘えてやろう。
そういえば。
食事をしていく中で母様が作った猪のステーキをうまい!と言いながら豪快に食べている父様にふと思ったことを聞いてみる。これからの修行である。
「父様、真・ヴァルヴィデア流ってなんですか?」
「お、ウィルは美味しいものは最初に食べる派か?楽しみはあとで取っておかないでもいいのか?」
「いえいえ、自分がレベルアップしていることにただ興奮しているんです!そうすると次の父様が言った真・ヴァルヴィデア流がつい意識を遠ざけると隙をついたように入ってくるんですよ。それで気になって気になって」
てへっと可愛くおどけてみる。
「すまないウィル、冗談だ。まずヴァルヴィデア流剣術はだな、ヴァルヴィデアで剣術をかじっているものなら誰でも習うものなんだ。王族御用達の剣術ではあるがそんなに珍しいものではない」
え、そうなの?
てっきり王族だけが脈々と受け継いでた流派なのかと思ってた。
「というのだな。先代がヴァルヴィデア王国が武の国と名を冠するなら兵士でさえ並ではダメだ、ということで教え広めたらしい」
はえー。だからみんなには結構浸透しているのね。
「だからヴァルヴィデア流剣術の免許皆伝は意外にいる。部隊長のヴァレットがいただろう?ウィルに話しかけに言ったと聞いたが覚えているか?」
おお!あのかっこいい人だ!
「はい!もちろん覚えております!」
「あいつも免許皆伝だ」
「はえ!?」
まじか。でも仮にも王国の隊長だったんだからそうであってもおかしくはない、か。
「まあ、あいつは隊長だったからな。元々武の才能もあった。でもそんなもんだ。皆伝していれば確かにすごいが、いることはいるような称号だ。でも真・ヴァルヴィデア流は違う。ヴァルヴィデア流剣術皆伝のその先を行く」
「その先、、、」
「さて、ウィルはそこにたどり着けるかな?」
父様はニヤリと、悪戯っ子のように笑った。




