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意外?な五月十二日

 繁華街に着いてから御蔵さんの案内で来たのは、それなりに大きな本屋だった。

「統|此処が、御蔵さんの行きたい場所?」

「美|このあたりでも、大きい所じゃない?」

「要|ちょっと欲しい物があって。…出来たら、別行動をしたいんですけど…」

「統|えっ?此処で?それはちょっとなあ…」

なるべく一緒に居た方がいいんだけど…

主にそこでフラフラと何処かに行きそうな新城さんに対してだけど。

「統|何を買ったか知られるのが嫌なら、言わなくてもいいんだよ?

俺や新城さんに報告する義務があるわけじゃないし」

「美|何を買うつもりなの?」

「統|余計な詮索はやめておこうか、新城さん…」

「要|あ、ありがとうございます。そういう事なら先に買いに行くので、分かりやすい所に…」

「美|ちょっとあたし、雑誌見に行ってるね」

「統|あっ!ちょ、新城さん!」

退屈だったからか、新城さんは急に本屋に入っていった。…本当に自由すぎる…

「統|はあ…しょうがない、俺は新城さんを探してるから、御蔵さんは買いたいものを先に買ってて」

「要|分かりました。…いつもああなんですか?」

「統|…そうでない事を祈ってて…」

そう言って御蔵さんと別れた。

広い本屋の中、新城さんを探すのは大変だと思っていたが、案外簡単に見つかった。

言っていた通り、雑誌コーナーを見たら、熱心に雑誌を読んでいる新城さんが居た。

ファッション雑誌が並んでいる所で読んでいるから、何を読んでいるかは分かるけど…

その集中力を授業に使えばいいのにと思う程、集中していた。

邪魔をするのもどうかと思うから、少し離れた所で周りを観察していると。

「統|御蔵さんだ。ちょうどいい、何処で待ってるか言いに行こう」

偶然にも御蔵さんを見つけて、俺と新城さんが何処に居るのか伝えに行く事にした。

「統|御蔵さん。ちょっといいかな」

「要|っっ!」

後ろから話しかけたせいか、顔を見ずとも驚いてる事がよく分かるくらい驚いていた。

そのせいで御蔵さんが持っていた本が二、三冊落ちてしまった。

「統|驚かせてごめん。今、拾…」

「要|いいです!大丈夫ですから!」

落とした本を拾おうと動く前に、素早い動きで御蔵さんは本を全部拾った。

「要|見…見てません、よね…?」

「統|えっと…本の表紙なら、見えなかったけど…」

何せ、本の表紙を見る時間もなく本が拾われて、呆気にとられてたから、

御蔵さんが見られないように隠してる本が何なのか全く分からない。

「要|そうですか…見てないならよかったです…」

「統|じゃあ、話したい事を話すよ?」

そう聞くと、御蔵さんは頷いてくれた。

「統|御蔵さんの買いたいものはそれだけかな?」

「要|いえ、まだあります…」

「統|そっか。じゃあ俺と新城さんはあそこに居るから、終わったら声をかけて。

…それと、そんなに警戒しなくても、無理矢理見たりしないから…」

「要|そっ…そうですか?」

ほっとした様子を見せる御蔵さんだが、警戒を解く様子は無く、

本を背中へ隠して俺に見られないように必死になっている。…そんなに隠されると気になるな…

「統|だけど、どんな本を買おうとしてるか気になるんだけど。…恋愛ものとかかな?」

「要|えっ?あ、その…」

「統|さっきも言ったけど、無理に言わなきゃいけないわけじゃないから」

「要|えっ、えっと…詳しくは言えませんけど、そういったものです」

詳しく言えない?一体どんな本を…いや、これ以上気にしたらいけないな。

御蔵さんは隠したがっているんだし、あまり追求したら困らせるだろう。

そもそも、そこまで興味ないしな。

「統|へえ、意外だね。

御蔵さんって純文学?とかの堅苦しそうな小説を読んでそうなイメージだったんだけど」

「要|そうですか?」

「統|俺の勝手なイメージだから、違うのは当たり前だけどね」

「要|それじゃあ、国東君はどんな本を読みますか?

私のイメージだと…その…男の人向けの漫画を読んでそうだな…と思うんですけど…」

「統|えっ?そう?俺、小説も漫画もあんまり読まないんだけど」

「要|全く読まないんですか?」

「統|本を読む時間が無くてね。中学生の時はバトル物とか歴史物の小説が好きだったな」

特に三国志を基にした小説が好きだった。

まあ、そのくらいの時の男子はそういった血湧き肉踊るような物語が好きなんだし、

俺って割と本の好みは普通だよな。

そんな話をしている内に、警戒心が解けたのか、御蔵さんは本を隠してはいなかった。

だからって、本の表紙を見たりは…しないぞ?

「統|でも、最近だとグラビアアイドルの…」

「要|あの…もうそろそろ、本を買いに行きたいんですけど…」

「統|あ、そうだね。新城さんをあまり待たせないようにしないとね」

すっかり新城さんの事忘れてたけど、待たせてたら後で、

退屈~早くどこか別な所に行こ~って言いそうだからな。

それに、一人にしてるとどこかに行きそうだし。

「統|じゃあ、俺は新城さんの所に行ってくるよ」

「要|分かりました。すぐに本を買いに行きますから」

「統|焦らなくていいから。また後で」

「要|はい」

そうして御蔵さんと別れて、新城さんの元へ向かうと。

「美|あれ、もう用事終わったの?」

「統|終わってないけど…何してんの…?」

「美|へっ?雑誌を見てるんだけど?」

「統|いや…俺が言ってるのは別な事なんだけど…」

「美|?何の事?」

新城さんは、俺の思った通り、ファッション誌を読んでいた。

ただ…新城さんの前にある本を置くスペースは、読み終えたのかは分からないけど、

色々な雑誌でぐちゃぐちゃになっていた。…幸いにも、折り目はついてないみたいだけど…

「美|用事が終わってないなら、まだ読んでていい?」

「統|ああ…うん…いいよ、まだ…」

「美|…何であたしが読んだ雑誌を片付けてるの?」

「統|元に戻すのが当たり前だと思ってるから」

新城さんが散らかした雑誌を元々あっただろう場所に戻しながら会話していく。

何やら不満そうな顔をしていた新城さんだったが、

特に何も言わずに雑誌に視線を戻したので、気にせず雑誌を本棚に戻す。

その後も新城さんが読み終えた本を片付けたり、

新城さんに読みたい本をとって欲しいと頼まれたりして時間を潰していると。

「美|国東君も、何か読んだら?」

「統|いや別にいいよ、読みたいものもないし」

「美|退屈しないの?」

「統|退屈だけど、本を読んだって気が紛れるわけじゃないし」

「美|ふ~ん、変わってるね」

「統|そうかな?ただ単に、雑誌が好きじゃないだけなんだけど」

そんな他愛ない話をしていると、周囲の雑誌をほとんど読んだからか、

新城さんは雑誌を元に戻して俺の方に体を向けてきた。

「美|国東君って…あたしのどこが好き?」

「統|…いきなり何?」

「美|いきなりじゃないよ。雑誌が好きじゃないから読まないなら、

あたしのどこかが好きだから一緒に居るのかなって思って」

「統|それとこれとは違うんじゃ…」

「美|でも、好きじゃない人と一緒に遊んだりはしないでしょ?」

…ああ…なるほど、新城さんは俺に好きな所を言わせたいらしい。

にやつきながら俺に期待している目で見ている新城さんにそう思った。

「統|強いて言うなら、明るい所かな」

「美|…強いては余計じゃないかな?」

「統|たった五、六日で見つけた好感を持てる部分なんだから、強いての部分は必要だよ」

そうは言ったけれど、実際の所はその部分が俺には少し羨ましいと思ってる。

俺だけじゃあきっと、御蔵さんを可愛く変身させる事は出来ないし、

御蔵さんの心を開かせる事も出来なかった。

それが出来たのはきっと、新城さんが人の心の中に簡単に入れる、明るい性格だからなんだと思う。

…もし、新城さんのそういう部分が俺にもあったらなって嫉妬したりするけど、

助けられてる時もあるから何だか憎めない。

きっとそれが、クラスのムードメーカーになっている新城さんの魅力なんだろうな。

「統|ほら、御蔵さんの買い物が終わったみたいだから話をやめて合流しに行くよ」

未だに何かぶつぶつ言っている新城さんを気にせず御蔵さんと合流しに行く。

…本当の事なんて恥ずかしくて言えるか!


 御蔵さんと合流した後、本屋で好きなジャンルの話をしている二人を眺めたり、

新城さんの発案でゲームセンターでクレーンゲームをしている二人を見たり、

新城さんが勝手に入ってったカラオケボックスでデュエットで歌っている二人を、

さりげなく盛り上げたりして過ごした。…詳細を省いた理由は、俺が完全に空気になっていたからだ。

特筆すべきものがなければ、言う事もないだろう。悲しいがな…

「美|楽しかった~!ね、二人もそう思うでしょ?」

「要|すごく疲れました…でも、楽しくはありました」

「統|そうだね。ほとんど新城さん主体で動いていたけど、それが良かったんだろうね」

今はもう夕方で、日も傾いてきてもう夜になりそうな時間になっている。

「美|…それどういう意味?」

「統|新城さんはこういった所でよく遊んでるだろうから、

新城さんの案内で遊んだ方が楽しめると思ってたっていう意味で言ったんだけど?」

「美|えっ、そうなの?嬉しい…ってそうじゃなくて!」

「統|ノリツッコミ!ボケから転身でもするつもり?」

「要|そんなつもりじゃないと思いますけど…」

「美|楽しいって言ってないのは何で?今日は楽しくなかったって思ってる?」

意外にも、俺の発言の意図に新城さんは気付いたらしい。存外、人の話を聞いてるようだ。

…でも、ほぼ空気になってた奴に今日の感想聞くなよ…!

「統|楽しかったよ。二人が楽しく遊んでるのを見たら、余計にね」

大嘘を言っているが、これは仕方ないだろう。

誰だって空気でいたからつまらなかったなんて言えないんだから。

「美|そっか、それならよかった」

「要|………」

何やら御蔵さんからすごく視線を感じる。

きっと、ほとんど参加してないのに楽しかったんだろうか?と思ってるが、言いにくいのだろう。

お願いだからその事は何も言わないでほしい。

「美|じゃあ、次はどこに行こっか」

「統|もうすぐで日が落ちる時間なんだから、今日はもう帰るよ」

「美|え~!」

「統|文句言わない…御蔵さんもそれでいいよね?」

「要|は、はい。そうしてもらえると、助かります」

「美|まだまだ遊べるのに~…!」

「統|夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないから。

というか、御蔵さんも俺も疲れてるんだから帰らせて…」

「美|む~…そういうなら、分かったよ」

どうにか新城さんの説得は上手くいったようだ。正直、もっとごねられると思っていた。

「美|今日が駄目なら、別の日にすればいいだけだしね~」

…少し不安になる言葉が出たが、気にしないでおこう。気にしたら負けだ、うん。

「美|じゃ、あたしこっちだから、またね~」

「要|私は電車なので。…また、学校で」

「統|ああうん、それじゃあ」

丁度居た所が駅前広場に近かった為、各々、自分の帰り道へと歩いていった。

今日の事を振り返ってみれば、目的だった新城さんと御蔵さんを引き合わせていじめをどうにかするは、

達成出来ると思っていいだろう。

不安要素だった、二人が俺が嘘をついている事に気付くなんて事も無さそうだ。

この分なら大丈夫そうだな。そんなお気楽な事を考えながら、俺は自分の家へと向かっていった。

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