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伝えないといけない六月七日

 二人の視線を感じてからずっと不安だったが、蓋を開けてみれば大した事ではなかった。

だけど、御蔵さんや新城さんに本当の事を誤魔化して話さないといけなくなった。

…何て言えばいいんだろ…

「統|…言える事だけ言えばいいか…?」

昼休みになった今、

新城さんより先に御蔵さんと話をすれば疑われずに済ませる事が出来るかもしれない。

まだ新城さんが御蔵さんと一緒でないのを確かめて、

今居る教室から少し離れた場所で話をしようと御蔵さんに近付いた。

「統|ねえ、御蔵さ…」

「美|要ちゃん、一緒にお弁当食べよ~!」

その時、横から新城さんが俺より先に御蔵さんに話しかけた。

一歩遅かったか…

「要|あっ…はい…分かりました…国東君は何か用があるんですか?」

「統|あ~…ちょっと話があって…」

「美|………」

どうしよう…後で話をした方がいいのかな…?

そう思っていると、新城さんは何かに気付き、不敵な笑みを浮かべて俺を見てきた。

「美|要ちゃんは先に国東君と話をしてきなよ、お弁当はその後にしよ!」

「要|えっ…いいんですか?」

「美|いいから言ってるんだよ。ほら、国東君も」

「統|あっ、うん…御蔵さん、休み時間の時に話した事で言わないといけない事があるんだけど…」

「要|わっ、分かりました」

「統|とりあえず、廊下に行こうか。人の目が気になるだろうし…」

そう言って御蔵さんを教室の外へと誘導する。

その時に新城さんが意味ありげにウインクをしてくるのが少しいらっとした。

…その分かってるよアピール必要かな…?

「統|もう分かっていると思うけど、新城さんが朝に俺をじっと見ていた理由を聞いてきたよ」

「要|聞けたんですね…私には言ってもらえませんでしたけれど…」

「統|言わなかったのは、

俺が御蔵さんにその事を言ってないみたいだから話さない方がいいのかなって思ってたみたいだよ」

「要|そうだったんですか…」

人気の無さそうな廊下の端に来て、すぐに話を始めた。

どうやら御蔵さんは、新城さんが話してくれなかった事がそれなりにショックだったらしい。

でも理由を聞いて納得はしたみたいだ。

「要|それで、美尋さんが国東君を見ていた理由は…」

「統|新城さんと約束してた事があるんだけど、

俺が何時何処でその事をするか気になってたんだって」

「要|その話は…詳しく聞いてもいいですか…?」

「統|ごめん、教えられない。新城さんのためにも話す事は出来ないんだ」

「要|…どうしても…ですか?」

「統|絶対に、とは言わないよ。新城さんが話すかもしれないし」

「要|国東君は、話すつもりがないんですか…?」

「統|新城さんが話してもいいと思ったら話せる、かもね。でも今日は言うつもりは無いよ」

「要|そうですか…でしたら、今は聞きません」

ある程度本当の事を話して、言えない事を誤魔化して話す。

隠そうとしてた所を聞かれたが、新城さんのためという言い訳で話さずに済んだ。

…ほぼ嘘は言ってないけど、大丈夫かな…?

今日聞いてこないよね?明日まで嘘がばれないよね?

「要|わざわざ聞いてもらってありがとうございます。では、教室に…」

「統|あっ、待って。もう一つ話したい事があるんだ」

「要|えっ…何ですか?」

「統|朝に俺をじっと見てた理由。新城さんが知りたいって聞いてきたから話してもいいかな?」

「要|…美尋さんがですか…」

「統|嫌そうな顔しないでよ…気持ちは分からなくも無いけど…」

新城さんに話すと、色々と聞かれそうになるだろうしね…

そう思うと、新城さんにこの話をしたくなくなってきた。

「統|一応は暈した言い方はするよ。後の事を考えると、はっきりとは言えないし」

「要|国東君が言ってもいいと思うのなら反対するつもりは無いですけど…いいんですか?」

「統|全部隠して気にされるよりも、少し話して納得してもらう方がいいと思って」

「要|…私に聞いてこないようにしてもらえれば、話してもいいですけど…」

「統|安心して、御蔵さんに聞きに行かせるなんて二度手間を新城さんにさせないから」

そもそも、二人にこの話をさせないために俺が話すんだから。

聞きに行かせないようにするのは当然だ。

「要|なら…後はお願いしてもいいですか…?」

「統|任せてよ、新城さんには話せる事を伝えておくから。じゃあ、教室に戻ろうか」

「要|はい」

話したい事を話して、御蔵さんと一緒に教室へと向かう。

後は新城さんに朝の事を話せば、今日は何事も無く終わる…はず…

廊下を黙って歩きながらそんな事を考えてると少し不安になった。

「美|あっ、要ちゃんおかえり、ついでに国東君も、話は終わったの?」

「要|たっ…ただいま戻りました…」

「統|終わったから戻ってきたんだよ。それと、ついではいらないから」

言わなくてもいい事だろうに…何で言うのかな…?

「美|ならお昼にしよ、準備は済ませてあるから」

「統|その前に、新城さんに話があるんだけど」

「美|えっ?話って…あ、聞いてもいいの?」

「統|駄目じゃないって、だから今度は新城さんが教室を出るよ」

「美|此処じゃ話せないの?」

「統|別に御蔵さんになら聞かれてもいいけど、この教室では人が多いから…」

「美|そっか…じゃあ何処かに行って話そ。要ちゃん、ちょっと待っててね」

「要|分かりました…」

口を挟む事が出来ず、戸惑っている御蔵さんを教室に残して人の居ない所に向かう。

ぱっと思い浮かんだのが空き教室だったので、近くの空き教室に入った。

「美|それで?要ちゃんは何で国東君を見てたの?」

「統|早速だね…前置きくらいさせてよ…」

「美|必要なかったでしょ?」

「統|いやそうだけどさ…」

新城さんは空き教室に入ってすぐに話を切り出してきた。

…急ぐ理由は無いだろうに…そんなに気になってるのかな…

「統|御蔵さんが朝に俺を見てた理由は、

明日から先の俺との関係をどうすればいいのか考えてたんだってさ」

「美|…えっ?どういう事?」

「統|詳細は言えないけど、俺と御蔵さんって友達になった理由が特殊なんだよね」

「美|特殊ってどんな風に?」

「統|言えたら特殊なんて言わないよ。それに複雑だから、理由を言うのが大変だし…」

「美|じゃあいいや」

「統|ああ…そうですか…」

理由、聞きたかったんじゃなかったのかな…?面倒が無いから別にいいけどさ…

「美|つまりは、国東君と要ちゃんが友達になった理由が要ちゃんにあんな事をさせてたの?」

「統|まあ…大まかに言えばそうなのかな…?」

「美|そうならそうって言ってくれれば良かったのに…」

「統|まあ…御蔵さんは言い辛かったんじゃないかな?俺も誰かに話したくは無かったし…」

「美|だったら何であたしに話したの?」

「統|御蔵さんが気にしてたから。俺が話したく無かったのを分かってても気になったんだろうね」

「美|そうだったんだ…じゃあ、要ちゃんが話してくれるのを待ってみるよ」

「統|話してくれるかは分からないけど…御蔵さんが話すなら、俺も話そうかな」

「美|だったら、教室に戻ったらすぐに…」

「統|それはやめておこうか?何も言わずに待ってようよ」

ついさっき言った事と反対の事を言おうとしてなかった?

何のために俺が話してると思ってるのか…

新城さんが御蔵さんに話を聞こうとしていると思った俺は、食い気味にそれを止めた。

「美|まだ言いきってないのに…」

「統|大体の予想はつくよ、話をするなら、明日からにしなよ」

「美|あたし、要ちゃんが話してくれるのを待ってるね。って言おうと思っただけだよ?」

「統|だとしても止めてあげて…余計に言い辛くさせるだけだから…」

本当に聞きたいのか分からなくなるような事を言う新城さんに、頭を抱えたくなった。

「統|御蔵さんは話したくないみたいだから、今日はどんなに気になっても何も言わない事。

さあ、教室に戻るよ」

「美|え~気になるのに~」

「統|早く戻らないと、御蔵さんが待ってるんだよ」

「美|分かったよ~…」

渋々ながらも言う事を聞いてくれた新城さんと、一緒に教室に戻る。

これでもう二人が朝の事を話す事は無いだろう。

…面倒な事を明日に後回しにしたとも言えるけど…

「美|たっだいま~要ちゃん」

「要|おかえりなさい。話は終わったんですか?」

「美|うん。ごめんね、待たせちゃって」

「要|いえ…元はと言えば、朝に美尋さんが気になるような事を私がしたのが原因ですから…」

「美|それを言ったら、あたしだって朝に要ちゃんが気になるような事してたんだよ。

おあいこだって」

「要|そうですね…お互い様、でしたね」

「美|そうそう。じゃ、お昼食べよ」

教室に戻った新城さんは、すぐに御蔵さんの所に向かっていった。

その時に話していた事を聞いて大丈夫かとひやっとしたが、

二人の表情を見ていらぬ心配だったと分かった。

だから俺は、何も言わずに自分の席に戻ろうとした。

「美|あれ?何処に行くの国東君、一緒にお弁当を食べようよ」

だが、その途中で新城さんに止められた。

…もう話は終わったはずだよね…?何で一緒に食べないといけないのかな…?

「統|…二人で食べるんじゃなかったのかな…?」

「要|一緒に食べてくれませんか…?お願いします…」

「美|国東君と食べるつもりだったんだけど、あたし言わなかったっけ?」

「統|…嫌というわけじゃないけどね…新城さんからは何も聞いてないよ…」

「美|じゃあ今言った事にして」

「統|新城さんはもういいや…御蔵さんは、友達と二人で食べるのは嫌?」

「要|友達だとしても、二人きりは駄目なんです…!」

「統|いや、どんな理由なの…」

性格なの?性格のせいで二人きりって状況が駄目なの?

御蔵さんの嫌がりように、そこまでの事なのかと思ってしまう。

「統|二人がいいなら、断る気は無いよ。でも…」

「拓|統次郎。三人で食べるなら俺も一緒に食べていいか?」

「統|…拓巳が来るかもしれないけど大丈夫…?」

「要|もう当人が来ているのに、その言い方なんですか…?」

だって…言っている途中に来たからさ…言い換えるのが面倒だったんだよ…

「要|私は四人でもいいですけど…」

「美|要ちゃんがいいなら、あたしも四人でいいよ」

「拓|よし、じゃあ早速準備するか!」

「統|…別に駄目とか言う気は無いけどさ…俺無視されてない…?」

文句を言いたいわけじゃないけどさ、置いていかれてる気がするのは何でかな…?

もやっとした気持ちになりながら、昼食の準備を始める事になった。


 「統|ああ~…今日が終わったら、約束の日が来るな~…」

就寝前の夜の家、俺一人しか居ない部屋に俺の声が響く。

明日が来る事は憂鬱ではないが、まだ決まっていない事がある。

「統|どう言えばいいんだろ…」

告白の返事自体は決まっている。

でも、どう言えばいいのかが分からない。

あっさり言うべきなのか、それともきちんと言うべきなのか。

他にも、人が居ても気にしなくていいのか、人目を気にして誰も居ない場所にするべきかとか。

色々と考えると、どうすればいいのか分からなくなって悩んでしまう。

「統|このままじゃ、また寝れない夜になってしまう…」

考えろ…考えるんだ…そうすれば答えが…

「統|見え…るわけがない!」

もうベットにうつ伏せで倒れ込むしか出来ない程に、頭の中はこんがらがっていた。

そもそも、答えがあるのかすらも分からない。

「統|俺って…何がしたいんだろうか…?」

寝返りをうち、天井を見つめてそう呟く。

何をしたいのかは決まってる、告白が嘘だと俺が知っていると伝える事だ。

だったらその事をさくっと言ってしまえばいい、とはならない。

御蔵さんがいじめられている事を考えれば、

迂闊な事をして御蔵さんを傷付けるかもしれない。

新城さんも罰ゲームで俺に嘘の告白をした事が広まれば、

俺も新城さんも大変な事になるかもしれない。

そう考えると、誰も居ない場所で話すべきなんだろうが…

「統|泣き寝入りするみたいで嫌なんだよな…」

せめて二度と同じ事はしないように釘を差すくらいはしておきたい。

でも、二人に嫌な思いをさせたいわけじゃないから何て言えばいいのか悩む。

「統|二人だって、好きでこんな事をしてるわけじゃないしなあ…」

だから仕方無いってわけにはならないが…

「統|…俺は、二人とどうなりたいんだろうな…?」

御蔵さんはあの三人に言われて嘘を吐かされている。

だから、御蔵さんを責める気はないし、出来るなら友達でいたい。

新城さんは罰ゲームで嘘を吐く事になったが、

俺に告白する理由があるのかもしれないから、それを聞いてから判断したい。

まあ、理由なんて無くても友達でいてもいいかなとは思っているけど。

そこまで考えて、段々と何をするべきかはっきりとしてきた。

「統|今俺が、二人に何が出来るのか…」

そのために何をするべきなのか、それが分かってきて自分がやるべき事が決まっていく。

「統|簡単な事じゃないか…悩む必要も無いくらいに…」

最初から答えは見えていた。

ただ見ようとしなかっただけだ。

「統|俺にとって大事なもの…それが何か考えればいいだけだったんだ」

どうするか答えは見つかった。

それが正しいかは分からないけど、これでいいと思えればいい、そう思った。


 「統|ああ、来てくれたんだね」

「統|ごめんね、こんな所に呼んで」

「統|分かっていると思うけど、話さないといけない事があるんだ」

「統|あっ、何も言わなくてもいいよ。言いたい事は分かるから」

「統|だから、何も言わずにただ聞いて欲しいんだ」

「統|俺は…」

打ち切りという形ですが完結しました!

番外編にあとがきを書いたので、興味が出た人は見てもらえると嬉しいです。

そして、ここまで読んでくれた読者の皆様に感謝の意を込めて。

最後まで読んで下さってありがとうございます!

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