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精神的に辛くなる六月七日

 何となく予感はしていた。

それが良いか悪いかは別として、いずれはこうなると分かっていたのかもしれない。

御蔵さんに呼び出されて階段の近くまで来て、何を言われるのか怯えながらそう思った。

…周りに人が居ないのは配慮なのかな…?

「統|…話って、もしかして朝俺の事を見てたのと関係あるのかな?」

「要|…どうしても気になって…授業も集中出来なかったので聞こうと思いまして…」

だろうねえ…一限目の授業中も俺の事をちらちら見てたし…

一限目後の休み時間にこんな所に呼び出した時点で、物凄く気になっていたのはよく分かった。

「統|俺も何なのか気になってたから、遠慮なく言っていいよ」

「要|その前に…別な事を聞きたいんですけど…いいですか…?」

「統|ああ…うん、別に構わないけど…」

別な事?それって、聞きたい事が二つあるって事だよな?

…思い当たる節が一つも無いんだけど…

じ~っと見られる理由を考えてみても、何一つ思い浮かばなかった。

「要|本当は聞くべき事では無いかもしれないんですけど…何かおかしい気がして…」

「統|それでも気になるんでしょ?だったら言いなよ」

「要|…美尋さんと何かありましたか…?」

「統|ぐふっ!」

予想外の事を思わぬ人に聞かれたよ!これどう答えるのが正解なの!

動揺で頭が混乱してしまった。

「要|だっ、大丈夫ですか!私、そんな言いにくい事を聞きましたか…?」

「統|いや…今、不意打ち食らって瀕死になったようなものだから…」

「要|全然大丈夫じゃないですよね!」

「統|すぐ回復するから平気…それより、どうしてそう思ったのかな?」

「要|今朝から美尋さんの様子が変だったので…本当に大丈夫なんですか…?」

本心を言えば、今の質問のせいでかなりまずい状況になっている。

新城さんの様子が変な理由が何にしろ、

御蔵さんが俺と新城さんとの関係を疑うのはあまり良くない。

そのせいで御蔵さんが新城さんに話を聞いて、

新城さんがうっかり俺に嘘の告白をした事を御蔵さんに話したら目も当てられない。

あともう少しなのに、嘘が知られたら悔やんでも悔やみきれない。

「統|朝から新城さんがこっちを見てたのは気付いてたよ。

でも、何かあったわけじゃないはずなんだけど…」

「要|どう考えても何も無いようには見えませんでした。何か思い当たりませんか?」

「統|…何だか、やけに熱心だね。一体どうしてかな?」

ここまで真剣に新城さんの事を聞いてくるのは珍しいため、

余程気になっているんだろうかと疑問に思った。

「要|…友達ですから…心配になるじゃないですか…」

「統|………」

「要|って、話を逸らさないでください!美尋さんの様子がおかしい理由を教えてくださいよ!」

「統|…意外とちゃんとした友達になってたんだね、二人を引き合わせて良かったって思うよ」

「要|さっき言った事を聞いてましたか!」

聞いてたよ、聞いてたけどこっちの方が大事だからあえて流しただけ。

そう言おうと思ったが、口に出すと怒りそうなのでやめておく事にした。

「要|美尋さんに聞いても答えてもらえなかったから、国東君に聞いているんですけど…」

「統|あっそうなんだ。既に聞いてたんだね」

「要|…その言い方…何だか引っかかるんですけど…」

「統|いや、御蔵さんが新城さんに話を聞いてたのが意外すぎて」

「要|…確かにそうかもしれないですけど…」

「統|自分で認めちゃうのはどうなのかな?」

否定出来ないのは分かるけど、肯定しなくてもいいんじゃないかな?

「統|でも、新城さんに聞いても答えてくれないなら、聞かない方がいいんじゃないかな?」

「要|…それでも気になるんです」

「統|そっか…なら俺も聞いてみるけど、教えてくれるか分からないよ?」

「要|本当に思い当たる事は無いんですか?それが分かれば聞く必要は無いんですけど…」

「統|さっきも言ったけど、本当に何もないはずだよ。

一応思い出してはみるけど、期待しない方がいいよ」

だって本当に思い当たる事なんて無いんだし。

むしろ、あったら気にしなくていいって言うはずなんだけどね。

何度も同じ事を聞いてくる御蔵さんにそう思った。

「要|そうですか…なら、もう一つの気になった事を聞きますね」

「統|ああ、答えられる事ならちゃんと答えるよ」

「要|その…告白の返事は明日なんですよね…?」

「統|うん、そうだけど」

「要|もし…もし国東君が付き合わないと言ったら、私達二人のそれからはどうするんですか…?」

「統|………」

うわ~…何とも言い難いというか…聞きにくい事だろうによく聞いたな…

ある意味勇気ある行動に、素直に関心してしまう。

「統|…それってどういうつもりで言ってるのかな?」

「要|どういうつもりとは…?」

「統|告白の返事自体は別にしてさ、御蔵さんは最低でもどうなって欲しいの?」

「要|最低でも…付き合うかどうかで変わりますよ…?」

「統|俺が言ってるのは、俺と一緒に居たいかどうかだよ。断られても友達でいたいとかさ」

「要|…それは、断るつもりだと言いたいんですか…?」

「統|誰もそんな事言ってないし…答えは明日まで待って…」

「要|まだ決まってないんですか?」

「統|まあそんな所かな…」

実際にはどうするのかは決めているが、

今此処で御蔵さんに言うと都合が悪くなりそうなので言わないでおく。

「統|俺はどっちを選ぶとしても、御蔵さんが望むようにしていいと思ってるよ」

「要|…私は…今はまだどうしたいのか分かりません…」

「統|そっか…なら明日返事を聞いてからでもいいよ。焦らせたいわけじゃないからさ」

「要|すみません…私から聞いたのに答えられなくて…」

「統|気にしなくていいよ。これからの事を御蔵さんに押し付けてるのは俺なんだし」

むしろ、先延ばしにしてもらえる方が助かるし。

俺は何があろうと、あの三人組に一泡吹かせる迄は関わりを断つつもりは無いからね。

心の中で三人組の恨みを募らせながらも、顔に出さないようにしながらそう思った。

「統|でも、ちょっと気が早くないかな?明日迄待てばいいだけなのに」

「要|…多分、今の関係が心地いいから、変わるのが怖いんだと思うんです…」

「統|変わる…ねえ…別に変わる所なんて無いと思うんだけど?」

「要|…私が…罪悪感に耐えられなくなったら変わると思います…」

あ~…そういう事言うのはやめようか?ツッコみづらいからさ…

御蔵さんの心の心配より、御蔵さんが口を滑らせる事の方が気になった。

「要|もうそろそろ、体を差し出してしまった方が楽になれる気がしてるんです…!」

「統|やめて!いらないって言うわけじゃないけど、色々と都合が悪いから!」

前にも体を差し出そうとしてたよね!それと、ぎりぎりの発言やめて!

精神的に追い詰められて大変な事になっている御蔵さんに不安になってしまう。

「統|兎に角今は落ち着いて?混乱してるのか、変な事言ってるから」

「要|私の体では不満でしょうが…好きにしてください…」

「統|だから!そういう事は言わないでってば!」

心が暗闇に沈んでる御蔵さんを引き戻そうとしてみるがどうにも出来ず、

とりあえず教室で元に戻るまで待つ事にした。

…後は時間に任せるしかない…


 「統|う~ん…どうしたものかな…」

二限目後の休み時間になって、そう呟く。

御蔵さんは、教室に入る前に深淵の心の闇から戻ってきて、今はいつもと同じ様子だ。

問題なのは、約一時間前に言われた事、新城さんの事だ。

朝に俺を見ていた理由、それが何なのか全く思い当たらない。

御蔵さんの理由と同じなら、そこまで気にする程の事ではない。

でも、それ以外だと多少厄介だ。

それこそ、俺が新城さんに対して吐いた嘘に関する事なら尚更だ。

「統|…聞くしかない、か…」

御蔵さんにも聞いてみるって約束したし、考えたって答えは出ないしな。

そう思って新城さんの席を見た時。

「美|ねえ国東君、ちょっと話があるんだけど」

「統|えっ?新城さん?何で…って、話があるからか…」

「美|話聞いてたでしょ?聞きたい事があるの。…告白の事なんだけど…」

その言葉を聞いてどきっとするが、

まだ怪しまれているわけじゃないと思い、平静を装って普通に答える。

「統|そうなんだ。じゃあ此処じゃなく、廊下に出て話をしようか」

「美|あっ、うん…」

聞かれたくない話になるのは確実なので、廊下に出て空き教室に向かう。

その間も、何を言われるのか分からない不安に襲われて、

心の中では何度も大丈夫…大丈夫…と唱え続けた。

「美|思ったんだけど、別に教室で話しても良かったんじゃない?」

「統|いやさ…やましい事は無いけど、聞かれて困る内容じゃないかな?」

「美|それなら小声で話せば?」

「統|問題はそこじゃないって…」

空き教室に入ってすぐに、そんなやりとりが始まった。

人の気遣いを無にするような事を言わないでよ…

「美|まあ、教室を出た時点でそこはどうでもいいんだけどさ」

「統|なら何で言ったの…」

「美|告白の返事、何時、何処でするつもりなの?朝からずっと気になっちゃって」

「統|…それは明日まで待っててよ…それで解決するよ?」

「美|あたしは、今すぐに知りたいの!」

御蔵さんとは違う理由で朝に俺の事をじっと見ていたようだが、心配するような事では無かった。

そのかわり、それは今気にする所か…?と思う事ではあったが。

「統|そう言われても…告白の返事は、明日にするって事だけしか考えてないんだけど…」

「美|じゃあ今すぐ考えて」

「統|無茶を言わないで…」

「美|どうせ後で考えるなら、今考えてあたしに言っても同じでしょ?」

何でそんなに知ろうとするの…明日になるのを素直に待てばいいだろうに…

自分勝手な新城さんに、忍耐がないのだろうかという疑問が浮かんでくる。

「統|急にそんな事を言われてもすぐには決められないよ。明日になるのを待って」

「美|駄目、今此処で決めて。無理だって言うなら、今すぐに告白の返事をして」

「統|少しくらいさ…俺の都合を考えてくれない…?」

「美|考える理由があるの?」

「統|考えてくれなきゃ困るから言ってるんだよ!」

御蔵さんにも告白の返事をしないといけないんだからねこっちは!

人の都合を無視する新城さんは、自分の事しか考えてないようにしか思えなかった。

「統|そんなに言うなら、新城さんが時間と場所を決める?それが一番楽だし」

「美|別にあたしが決めたいわけじゃないんだけど?ただ気になってるだけだから」

「統|………」

なら何で決めさせようとした…!

心の底から怒りが湧き上がるのを抑えるのに、少しの間何も言わずに堪える必要があった。

「統|…じゃあこの話は明日にしよう…今日は決められないだろうから…」

「美|えっ、教えてくれないの?」

「統|決められないものは仕方無いし、今気にしなければいいでしょ?」

「美|でも気になるんだもん…」

「統|じゃあ、新城さんが決める?それなら気にならないでしょ?」

「美|…分かった…なるべく気にしないようにする…」

嫌々ながらも、新城さんはそう言って引き下がった。

…自分で決めるの、そんなに嫌なんだ…?

「統|だったらもう話は無いよね?なら、教室に…」

「美|そういえば、要ちゃんが国東君の事を見てたけど何でなの?」

「統|どふあっ!」

何も無いだろうと油断していた俺を動揺させるのに十分過ぎる言葉に、

俺はその場で倒れて体と頭が一時停止した。

「美|えっ、どうしたの国東君?変な声出して」

「統|つ…ツッコみ所が違う…」

せめて倒れた事を気にして…ボケたわけじゃないけど…

新城さんのツッコミになってないツッコミに反応して、頭が再生した。

「統|あっ…朝の事だよね…?やっぱり気になったんだ…」

「美|だって友達だもん。悩んでるように見えたから気になっちゃうよ」

友達思いだなあ…引き合わせて良かったよ本当に…でも俺にとっては裏目なんだけど…

新城さんが御蔵さんを気にかける事が心中複雑だった。

御蔵さんの時も思ったが、今度は逆に新城さんに俺と御蔵さんとの関係を疑われたらまずい。

そこから御蔵さんが俺に嘘の告白をした事や、

御蔵さんがいじめられているなんて話が漏れてしまうかもしれない。

可能性は低いかもしれないが、御蔵さんにとって新城さんは数少ない友達だ。

いじめの件は別としても、告白の事は言うかもしれない。

そうなると、確実に面倒な事になるだろう。

それは絶対に嫌だ、回避出来るなら回避したい。

「統|朝、御蔵さんが俺の事を見てたのは分かってたよ。でも、新城さんも同じ事してたよね?」

「美|だって気になったんだもん」

「統|なら仕方無いね。になるわけないから」

「美|要ちゃん、聞いても答えてくれなかったんだよね。だから国東君に聞こうって今思って」

「統|…御蔵さんも同じ事を聞いてきたよ…

話は聞いてるから、御蔵さんに話していいかの確認をさせて…」

「美|そんな事をする必要があるの?」

「統|念の為だよ。それと、御蔵さんが気にしてるさっきの話はしてもいいのかな?」

「美|国東君はいいの?あたしは国東君が話してないと思ったから話さなかったんだけど…」

「統|まあ少し曖昧な言い方をすると思うけど、だってこれからどうなるか決まってないし…」

「美|そっか、ならあたしは反対しないよ」

早めに疑問を解決させて、面倒事を回避出来るように話をする。

今日さえ乗り越えられればそれで何とかなる、だから今は新城さんが気になってる事を無くせばいい。

そう思いながら、新城さんには何て話そうか…とか、

御蔵さんには何と言えば納得するかな…なんて考えていた。

「美|じゃあ話す事は無いから教室に戻らない?」

「統|ああ、そうだね。俺も今は話す事は無いから」

「美|すぐに要ちゃんに聞いてくれるんだよね?あたしが気になった事」

「統|えっ…そんなに急ぐ事は無いでしょ?」

「美|何だったらあたしが話しても…」

「統|やめて?話す時に話したいから」

何のために俺から話をしようとしてるのか分からなくなる事をしないで?

そう思いながら、新城さんを教室に連れていった。

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