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真相が聞けた六月四日

 放課後、先生に言われた通り新聞部の部室前に来た。

「統|何の話をするんだろ…」

御蔵さんのいじめについて話をするのは聞いたが、問題は俺に何の話をするつもりなのかだ。

…保健室に居た時に御蔵さんに話を聞けばよかった…

「統|とりあえず…暇だな…」

中に入ろうと思ったら鍵がかかっていたので、先生が来るまで待ってないといけない。

さて、どうしようか…と思っていると、誰かがこっちに来ているのが見えた。

「知|あっ、国東君?何で部室の前に?」

「統|あっ…財部さん…部室に用があるのかな…?」

その誰かは、俺が知っている新聞部員の財部さんだった。

鍵を開けに来てくれたのかな…?

「知|先に私が聞いたんだけど…私は先生に呼ばれて来たの」

「統|えっ?それってもしかして…御蔵さんの事でじゃ…」

「知|そうだけど…何で分かったの?」

「統|俺も先生に同じ事で呼ばれたから…偶然だね…?」

「知|絶対にそう思ってないでしょ…」

まさか俺の他にも話をする人が居るなんて思わなかったから、少し動揺したかな…

「知|豊中先生はもう少ししたら来るそうだから、先に部室に入りましょう」

「統|あ…やっぱり鍵を持ってたんだ…」

財部さんが持っていた新聞部部室の鍵を使って中に入る。

新聞部の部屋は、長机が並んでいる事以外は空き教室とあまり変わっていなかった。

他にはホワイトボードがあるくらいか?

「統|此処が新聞部の部室なんだ…校内新聞は此処で刷ってるの?」

「知|此処では校内新聞や、時々発行する学年新聞の会議をするだけ。

実際に刷る…と言うより、記事をコピーするのは職員室横のコピー室よ」

「統|ああ、だからホワイトボードと長机と椅子しか無いんだ」

「知|部室と言うけど、あまり使う事は無いわね」

「統|部室としての機能を果たせてない…」

そんな話をしていると、部室の扉がガラッと開いて、豊中先生が入ってきた。

「早|二人共揃っているね。それじゃあ、話を始めようか」

「統|その前に先生、何で財部さんも居るんですか?」

「早|財部はいじめの件の担当をしていてね。色々と調査をしているんだ」

「統|色々?って、何ですか?」

「早|そこは後で話すから」

そう言われて、向き合って左に財部さん、右に豊中先生が座ったので、対面する形で俺も座った。

…何か刑事ドラマの取り調べみたいだな…もしくは三者面談?いや、それだと俺が教師役になるな…

「早|さてと…前に話したけれど、御蔵がいじめられているって噂があったんだけれどね」

「知|調査の結果、誰もいじめの現場を見ていない事から、事実無根のデマだと分かったの」

「統|そうなんですか…もしかしなくても、俺を呼んだ理由はそれを伝える為ですか?」

だとすればこんな事をしなくてもいいだろうし、調査の結果も間違ってるけどね…

「早|いや、実は調査をしている時にある話が出てきたんだ」

「知|それは、国東統次郎が御蔵要のいじめに利用されている、なの」

「早|前に、国東がいじめに関わっているって噂があったから、もしかしてと思ってね」

「統|それは…何とも言い難いですね…」

意外な所の事実を見付けていた事に少なからず驚く。

…何でいじめの件は間違えてるんだろ…いや…間違えてくれる方が助かるけどさ…

「早|御蔵に関わる事で、誰かに利用されてるなって思う事は無い?」

「統|そう言われても…」

「知|何か変だなって思う事や、誰かにああしろとか言われた事は無い?」

「統|ん~…思い当たる事は全く無いですね…」

変だなと思う事はあったが、それは忘れているか聞いてない事にしているし、

あの三人組は俺に何かさせようとするんじゃなくて御蔵さんにだけ何かしろって言ってる。

だからこう答えないとおかしくなる。

…俺はどっちかと言うと被害者側だし…利用されていると知っている方が変じゃないかな…

あ、それを言ったら今の状況は変だな…

「早|そう…だとするといじめの話も、国東が利用されてるって話も根も葉もない嘘か…」

「知|もしくは国東君が無自覚に利用されているか…」

「統|何だか馬鹿にされてる気がするので、その言い方はやめてくれません?」

事実は後者の方が近いですけどね?何も知らずに利用されてるわけじゃないんですよ?

「知|さすがに冗談よ。私が言った事が本当なら、調査結果が間違ってるって事になるじゃない」

「早|いじめの調査はしっかりやっているし、目撃証言も集めてる。間違っている事はほぼ無いよ」

「統|結構ちゃんとしてるんですね…」

なのに調査の結果が間違ってるって…余程あの三人組が証拠も証言も残さないように徹底しているか、

財部さんが証拠を見落としてるかのどっちかだな…

今、それに明言するのはやめておこう…

「統|そういえば気になったんですけど、御蔵さんにはどこまで話したんですか?」

「早|御蔵にはいじめの話は嘘だったと伝えただけだよ。何も知らない可能性もあるからね」

「統|本人は否定してましたしね…」

余計な事を伝えれば傷付くかもしれないゆえの配慮は、俺にとってもありがたかった。

…俺が関わっているのはなるべく知られたくないからな…

「知|あれ…?国東君が何で御蔵さんがいじめを否定していると知っているの…?」

「統|あっ…普通は知らないって思うよね…」

「早|あたしが御蔵にいじめられていないか聞いてた時に、ロッカーに隠れて聞いてたんだよ」

「統|偶然その場所に通りかかっただけなんだけどね…すれ違える空気じゃなかったし…」

別に聞きたくて聞いたわけじゃなかったけど、話の終わり際だったし…ねえ?

盗み聞きをしたくて隠れていたわけじゃない事を弁解しながら、そう思った。

「統|だからといって、ロッカーに隠れたのは失敗だったなあ…」

「知|そもそも、何で隠れたの?」

「統|御蔵さんが俺の方に来て、思わずまずい!隠れないと!って思っちゃって…」

「早|だからってロッカーに隠れていいわけじゃないからね?」

「統|反省してます…」

だけど、必要になったらまたロッカーに隠れますけどね?少し前みたいに。

反省していないわけじゃないけど、きっと次も同じ事をするんだろうなと思った。

「早|ならよろしい。とりあえず話す事と聞きたい事はもう無いよ」

「統|じゃあ御蔵さんのいじめの件はもう調べないんですか?」

「知|新しい情報が入らない限りはそうなるかもしれないでしょうけど…」

「早|いじめの話が何処から出たか調べないといけない。…火の無い所に煙は立たないからね…」

「統|まだ終わりじゃないんですね…」

新聞部って大変なんだな…と思うと同時に、

調べた結果があの三人組に繋がらないで欲しいとも思った。

「早|念のためにね…何か分かったら、また教えてあげようか?」

「統|そうですね…知らないよりは聞いておきたいですし…」

どこまで真相に近付いてるか知っておかないと、後で大変な事になるからな…

「早|なら次も新聞部部室に呼ぶから、もう帰ってもいいよ」

「知|取材する事があるかもしれないから、その時はよろしく」

「統|まあ…答えられる事ならね…」

質問責めにされるのは出来る限り遠慮したい…

そう思いながら新聞部部室を出た。


 「統|考えてみると…関わってる割に、色々と知らないな…」

御蔵さんが何時からいじめられているのかとか、あの三人組と御蔵さんの関係とか。

誰も居なくなった教室で帰り支度をしながらそんな事を考える。

「統|根本的な解決の為には知っておくべきかな…」

ずっとこのままでいるわけにはいかない。

いずれは本当の事を言わないといけないし、御蔵さんのいじめを放っておくわけにはいかない。

…利用されて黙ったままでいられるような性格を、俺はしてないしな…

「統|まあ、それは後ででもいいだろ」

今すぐいじめをやめさせたいわけじゃないんだし、焦って調べる必要も無いだろ。

そう結論付けた俺は、帰る準備が終わったので教室を出た。

誰も居ない教室を出て、誰も居ない廊下を歩く。

そうすると、ある事に気付いた。

「統|どうやって御蔵さんのいじめの事を知ればいいんだろ…」

本当の事を伝えて御蔵さん本人に聞いてみるか?

いや、いじめられているのを知っているからって教えてくれるだろうか?

そういう事は普通知られたくないって聞くし。

そう考えながら階段を降りていくと、静かなはずの校舎で声が聞こえた。

「馬鹿みたい。あの子があんなに臆病だとは思わなかったわ」

その声の主が、御蔵さんをいじめている三人組の一人である事はすぐに分かった。

はっきりと聞こえる声を頼りに三人組を探して階段を昇ると、

御蔵さんをいじめている三人の内の二人の姿を一つ上の階の踊り場で見付けた。

…今度はちゃんと聞こえるな…

「わたし達のやってる事がばれそうだからもうやめようなんて、有り得ないわ」

「誰かに見られた事も無いし、

見られてもいじめられてる本人が違うって否定するのが分かってるしねえ?」

あ~…確かに、御蔵さんは否定してたな…本人が違うって言ったら周りは何も出来無いし…

「だから平気なのに、あの子ってばいじめはもうやめた方がいいって言うし…」

「まあ気持ちは分からなくも無いわよ、ばれたら大変なんだから」

「だから絶対に誰にも知られないようにすればいいだけでしょ?」

「それでも不安なんでしょ。そうでなかったらやめたいなんて言い出さないわよ」

「それで昼休みに言い合いになったのは困ったよねえ…」

ああ、成程。

昼休みの時に言い争っていた理由はその事でだったのか。

何があったのか分からず、もやもやしていた昼休みの出来事の内容が分かってすっきりした。

「わたしは、言い出さないでいるよりはましだと思うけれど」

「ええ?何でなの?」

「何も言わずにいて、急に何もしなくなったら困るじゃない。居なくても支障は無いけれど」

「だからあんな事を言ったの?」

あんな事?一体何を言ったんだ?

昼休みに聞き逃した話を聞くために、話し声に集中する。

「当たり前でしょ?やりたくないならもういい、役目は十分に果たしてくれたんだから、

やめたいならやめれば?って言うわよ。役立たずはいらないわ」

「元々、大した事はしてなかったから居なくても大丈夫だけど…裏切らないかしら?」

「あの子もわたし達と同罪よ?誰かに言うわけないじゃない。それに臆病者なんだから」

「…そうかも、心配しすぎね」

…結構好き勝手に言ってるなあ…友達じゃないんだろうか…?

後、役目って何だろ…ちょっと気になるな…

「まあ臆病者でも役に立つ時が来るかもしれないから、あの子が落ち着いたらまた呼び戻すわ」

「ええっ、役に立つ時なんてあるの?」

「道具は使いようよ、わたしが役に立たせてあげるのよ」

「あははっ、あの子が聞いたら喜びそうね」

楽しげに笑う二人の声を聞いた俺は、あの人達怖っ…!と思った。

…友達じゃない…扱いが下僕に近いって…!

「ああ、そうだわ。次に御蔵に何をするか、今の内に考えないとねえ」

「もう色々とやり尽くしてない?」

「そうだとしても、やりようは…」

とん、とん、という音と共にそんな会話が聞こえてくる。

…って降りて来てる!俺も降りないとあの二人に見付かる!

なるべく音は立てないように、でも急いで階段を降りる。

一階まで来ると、上から足音が聞こえなくなり、逃げる必要が無くなったと安心する。

…鞄でも取りに行ったのかな…

「統|見付からずに済んで良かった…」

あの二人と顔を合わせるのは、今の所都合が悪いからな…話の内容もだけど…

「統|それにしても…あの三人と御蔵さんの関係って複雑なんだなあ…」

俺はてっきり、あの三人は御蔵さんを嫌ってるからいじめているんだと思ってたけど、

さっきの話を聞くと、三人共同じ理由でいじめてるわけじゃないみたいだな…

「統|まあ何にせよ、一人減ってくれたのはありがたいけどな」

敵が一人でも減ってくれるのは正直助かる。

あの二人にとって役立たずだろうとしても、俺にとってはどうなのか分からないからな。

「統|っと、早く帰るか…上からあの二人が来たらまた隠れないといけなくなるし…」

もう此処に居る理由は無いと思った俺は、帰るために靴箱へと向かった。

…いずれはするあの三人への報復…手緩いものにする気は無いからね…?

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