スートハイスクール開校
今日から高校の新生活。もし、そこが過酷な戦いの場だったら・・・
カーテンの隙間から斜めに差し込む日の光で目覚めた。ゆっくりとベッドから起き上がり、そのベージュ色の綿を左右にかき分け、外向きの観音開きの窓を開けてみた。山と森と湖が目の前に広がっている。ここは、長野県の某所。そして、この高原のペンションの様な建物は、この春開校したばかりの新設高校スートハイスクールの寮だ。
一見2階建ての様な造りだが、屋根裏に3階の部屋がたくさんあり、個室が全29部屋の男子寮は満室で、俺も含めて全室新1年生が一人づつ入寮している様だ。その中で、俺の部屋は1階にあり、両隣に2部屋づつ個室がある。上の階のことは知らないが、この階の他の4人の名前だけは、各部屋の扉に表記されている。入口に近い方から、風下軽身、鬼島金太、国長君主=俺、剣持慶次、近衛宏太。ただ、まだ誰が誰だか、顔と名前が一致する奴はいない。何故なら、入学式前日の昨夜遅くに、山口から越して来たばっかだからだ。
おおよその身支度をしてから、昨夜寮長から教えてもらっていた食堂へ行き、朝食を摂った。食堂では、何人かの他の奴らに会ったけど、みんなそれぞればらばらで、お互い口を利くこともなく、ただ機械的に朝食を済ませていた。きっと、みんなも全国至るところからここに来た奴ばかりなんだと思いながら、俺もさっさと返却口に食器を片付けると、寮の隣の学校へ向かった。小高い丘を少し下り、朝日が眩しいなと思いながらの初登校だ。すると、その陽を背中に浴びながら女子が数人ばらばらとやって来て、同じ校門をくぐった。向こう側を見上げると、男子寮と同様に小高い丘の上にペンション風の建物が微かに見える。どうやらそれが女子寮の様で、学校を挟んで対に建てられているみたいだ。一つ気になったのは、10メートル程ある校門の東端に、女子プロレスラーかと思うくらい体格のいいお姉さんがこっちを睨み付ける様に立っていたことだ。制服姿の俺たちとは違い、ジャージ姿の彼女は、裕に100キロはありそうだ。
校門の正面の3階建てのモダンな校舎に入ると、廊下に案内と矢印が貼ってあり、それに従い進んで行くと、校舎の裏側に出た。そこには、すぐ目の前に、直径50メートルはありそうなドームがあった。矢印案内はその入り口を指していて、数人の男女が並んでいた。一人づつしか入場出来ない様で、自動ドアが開くと最前の人が入り、次の人が入るのを遮る様に警告ブザーがなり、ドアは閉まった。待つこと3分余り、順番が来て入ると、向こう側に奥へのドアがある、受付の小部屋になっていた。それにはタッチボードがあり、何故か、❝あ”から❝わ❞までと、❝が❞から❝ぼ❞までの50音が表示されていた。前に立つと、機械が自動的に反応して、「名前の頭文字を入力して下さい。」と音声が流れた。名前って、苗字なのか下の名前なのか迷う奴はいないのか?と思いつつ、俺の場合どっちも❝く❞なので、さっと❝く❞を押した。すると画面は変わり、❝国長君主❞と、その下に❝はい❞、❝いいえ❞が表示され、「くになが、くんどさんですね?」と音声が流れた。❝はい❞にタッチすると、「おはようございます。」と音声が流れ、中へのドアが開いた。その時ふと気付いたのだが、確か寮の1階の奴全員が❝か行❞で、しかも姓と名のそれぞれの頭文字が同じ奴ばっかだなと、不思議に感じた。他の奴らも、みんなそうだったりして?なんてくだらないことを考えてしまった。でも、それがまじだとすぐに分かった。
中に入ると、先にもう30人くらい来ていて、全員ある規則に従って整列していたのだ。各列の前に無人プラカード立てが置いてあり、それぞれ❝あ行❞から❝ば行❞まで12個のプラカードが立っていた。さすがに❝ら行❞はいないらしく、❝や行❞と❝わ❞は一括りになっていた。そんでもって、どの列も5人以内だったんだ。しもか、男の列は男だけで、その隣は女子の列になっていて、どうも50音の行ごとに男女が交互になっている様だ。冗談みたいに、名前が規則的に揃ってる。全く持って変な学校だな。そう思いつつも、素直に❝か行❞の列の真ん中に並んだ。どうやら、この列では俺が4番目みたいだ。並び順から言って、剣持がまだみたいだ。両側は女子で、あ行はもう全員揃っているが、さ行はまだ2人しか来ていなかった。
やがて、まだ来ていなかった奴らもおおよそ来て、いよいよ入学式が始まる。そう思っていた時、突然ドーム内の照明が落ちた。一瞬騒然となりかけた次の瞬間、巨大スクリーンが目の前に突然出現した。再点灯するまでの僅かの間にだ。どういう演出だよと思っていると、
「新入生の諸君、おはよう。」 画面上に、スーツ姿の上半身だけの校長先生と思しき人が現れた。どよめきもすぐに静まり、全員それに集中した。
「今日は天気にも恵まれ、スートハイスクール開校の門出に相応しい日となりました。諸君はその栄えある第1期生として、今ここに晴れてご入学の時を迎えられました。57名の新入生の皆さん、改めて、おめでとう。」 まあここまでは、よくありそうな挨拶だと思っていたが、
「さて、我が校は既存の高校とは違い、社会での即戦力を養う為の教育を第一にしており、諸君にも、実際の競争社会さながらの実践をして頂きます。早速、その第1期の授業内容を告知、説明します。期間は来週からの13週間、1節1週間で13節とする。月曜から木曜までを実践日とし、金曜と土曜は普通授業を行い、日曜は休養日とする。尚、祝日は全て平日扱いとする。次に競技方式ですが、全競技5人一組の11チームのトーナメント方式とし、優勝チーム以外は、敗退即1競技の終了とする。チーム編成は、1競技ごとに組み換えることを原則とするが、同じ者同士の組み合わせの禁止の制限はしないものとする。但し、優勝チーム及び準優勝チームのメンバーは、次の競技のシード選手となり、互いに次の競技のチームメイトにはならないものとする。又、その10人のみが勧誘権を有し、他の者はその勧誘なしにチームを選択することは出来ない。競技により多少の違いはあるが、基本月曜日と火曜日は、予選や1回戦、水曜日は準決勝、木曜は決勝戦を行う。又決勝戦終了と同時に、次のチーム編成の勧誘を解禁し、勧誘を受けた者はそれを受けた範囲内でチームを選択出来る。その決定は土曜の13時をもって締め切り、その時点でチームを決められなかった者に関しては、学校側がランダムにチームを決定し、土曜の15時に発表する。又、それに続いて、競技種目と対戦組み合わせを発表する。次に、得点配分と順位について。得点は競技ごとに異なるが、優勝チーム全員に当該競技に割り当てられた最高得点を与え、準優勝チームにはその2分の1を、準決勝敗退チームにはその4分の1の得点を、1未満切り捨ての上同様に配分する。又、優勝得点11以上の競技にて、決勝戦以外で優勝チームに敗退したチームに属した者は、その健闘に応じて特別ボーナスとして1得点を与える場合がある。そして最終順位は、13競技終了時点で個人別に獲得点数の多い者を上位とする。尚同点の場合は、登校の秘密規定により優劣を決定する。そしてその順位ごとの賞品又は、処罰であるが、以下の通りとする。」
その画面に記された内容は、
1位賞金 52億円、 副賞 52日間超豪華世界1周旅行 又はカップルでの26日間同等旅行。
他、当校の学費及び寮費を卒業まで全額免除。
国内を含めた全世界の希望大学の学費及び滞在費用を卒業までの全額免除優遇入学確約など。
2位賞金 13億円 副賞 26日間選択豪華世界旅行 又はカップルでの13日間同等旅行。(アジア、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、オセアニアのうちいずれかを選択。)
他、当校の学費及び寮費を卒業まで全額免除。
国内の希望大学の学費及び滞在費用を卒業まで全額免除優遇入学確約など。
3位賞金 5億2千万円 副賞 26日間豪華日本1周旅行
他、当校の学費及び寮費を全額免除から、国内の希望大学優遇入学など。
4位賞金 1億3千万円
5位賞金 5千2百万円
6位賞金 千3百万円
7位賞金 5百2十万円
8位賞金 百3十万円
9位賞金 52万円
10位賞金 13万円
11位賞金 5万2千円
12位賞金 1万3千円
13位賞金 5200円
4位~13位までは、当校の学費及び寮費を卒業まで半額免除。
14~26位は、当校の学費のみ半額免除。(但し、期間は14位の卒業までから、26位の1年時の第1期限定まで、順位により少しずつ差を設ける。)
27位~39位には、校内ボランティアを科す。尚、内容及びその期間は、順位に応じて差を設けるものとする。
40位~52位 人体実験の被験者とする。(風邪薬のモニターに毛が生えた程度から、下位へ下がる程、命に係わる度合いが大きくなる。)
53位以下 全臓器提供者とする。
その内容に、一同騒然となった。
ご愛読頂き、ありがとうございます。<(_ _)>
正直のところ、この話しを書き始めたのは、もう3年くらい前だったと思います。ある程度書きためてから、週1で続きを発表するつもりで、5話の途中まで書いてはみたものの、その後一向に進まず、多少の手直しをする目的も含めて、発表予約を3年くらい先延ばしし続けていました。大枠の案だけあるものの、書く余裕なく、まだしばらく発表を控えるつもりでしたが、パソコンのトラブルと、ログインのパスワード忘れの為、発表予約の先延ばしに失敗して、ようやくログインできた時には、この通り1話目が出てしまいました。
取り急ぎ、2話目以降は先延ばしした次第です。本当のところ、今後は未定です。m(_ _)m




