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人は見掛けで判断してはいけません!  作者: 内守谷ひみか
1章 灰色世界
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8話 会議は踊る、されどあんまり進まず

シュヴィのお誘い、もといドッキリを受け、まず僕が取った行動は女子寮にいるヒイロに知らせることだった。


何故ヒイロに知らせる必要があるのかというと、ヒイロ曰く「もし打ち合わせか何かあった時兄さん1人だと心配すぎる、だから打ち合わせがある時は私を必ず!必ず呼んでください、良いですね?絶対ですよ!」って釘をさされたからだった。


妹にこんなに心配される僕って一体……

何て考えた事は無い、無いったら無い。


そんなこんなで、今現在ヒイロとシュヴィという超が付くほどの美少女を両手に花の状態で王城に続く商店街を歩いていた。

すると、

商店街がにわかにざわつくのが分かった。

そして、そんな僕は街ゆく男性たちから嫉妬の視線を頂戴していた…………

わけではなかった、とても、そうとっても不本意な事だけど、さっき通った所の露店の店主らしき人から、


「お嬢ちゃん達3人凄い可愛いからおまけしちゃうよ〜」


って言われたし。

聞き間違えの方がとても有難かったけど、残念な事に聞き間違えじゃありませんでした。

僕ってそんなに女顔なのかなぁ…

泣いてないよ?大丈夫だよ?こんな事慣れっこだし…グスリ


目から光るものを流しながら、僕を見てニコニコ笑っているシュヴィについて歩いていたらいつの間にか会議をする部屋の前まで来ていた。

そして自然に3人で部屋に入ろうとした所で部屋を護衛する兵士に止められた。


「今回の会議にはシュヴィーラ様とご学友のアオハ様以外の人物を部屋に入れるなと申しつかっております。それに見た所女性の方しかおられませんが…?」


「いえ、アオハは此方にいますよ?それともう1人はアオハの妹で私の友人のです。」


シュヴィが説明している間僕はと言うと、遠い目をしていた。

本当、そんなに僕って女顔なのかなぁ…

帰ったら鏡見てみよう。うん。

ヒイロは、何か察した顔をしていた。

ごめんね、お兄ちゃん凄い女顔で…


「失礼しました。しかし大臣方からシュヴィーラ様とアオハ様以外を部屋に入れるなと申しつかっております故ご学友様は別の部屋でお待ちください」


ヒイロは反論していたが、この件には部外者だと言われた事でブツブツ文句(という名の呪詛)を言いながら別の部屋へ案内されていった。


そんなこんなで、会議室には僕とシュヴィ、そしてこの国の大臣達が集まっていた。

大臣達より僕たちがいる所の方が高い事と仕切板がある事で見えないようになっていた。

この仕切板は会議が始まると下に引っ込むようになっている。


確か、

いくらこの国で権力ある大臣だとしてもそう易々と王女の顔を見る事が出来ない方が色々と便利なのだそうだ。

そのお陰かシュヴィは堅苦しいドレスも着ないで堂々と制服のまま出席していた。

僕は心の中で、


これシュヴィが楽するために自分で決めたんじゃ…


何て気がしてきていた。

だって、僕の隣でお茶菓子として置かれていたスティックチョコレートをリスみたいにぽりぽり齧って、ほお袋(?)をぱんぱんにしてる姿を見ちゃったら…ねえ?

というより、給仕に来ている人達が「癒されるわぁ〜」みたいな感じで満足気に出て行くのが気になりました、はい。


ひとしきりチョコを頬張って満足したのか、シュヴィは僕の方を振り向き、


「ふぅ〜、食べに食べました。チョコはいつ食べても美味しいですね〜、これを食べられない何て方がいたら人生の9割9分損してますよ!」


ほっぺたにチョコをつけたまま、こちらへ得意気な顔を向けてくるシュヴィに苦笑いしながら、一応ツッコミを入れておく事にした。


「チョコ食べられないだけで人生の殆どを損してるってどんな考え方なの…あとシュヴィほっぺにチョコ、ついてるよ?」


ちょんちょんと自分のほっぺを指差して教えてあげると、一瞬きょとんとした後いきなり勢いよくほっぺを手のひらで隠して耳まで真っ赤になるシュヴィ。


あ、ちょうど入ってきた騎士兵の1人があまりの可愛さにノックダウンした。

続いて入ってきたもう1人の騎士兵は、恥ずかしがるシュヴィを見てあまりの可愛さに吹き飛んで行った。

大丈夫そんなにダメージは大きくない(多分)立ち上がるんだ!


などと応援(?)してる間にシュヴィが恥ずかしさから回復したのか会議が始まる時間になったので各々席に着くように告げた。

但し耳まで真っ赤にしたまま

そんなシュヴィを微笑ましく見つめながら僕も指定された席に着いた。何とシュヴィの隣の席にだ。


僕が席に着いたのを見計らって1人の初老の男性がゴホンと一つ咳払いをして部屋の中心に立った。多分会議の進行役兼まとめ役なのだろう、こっちは一段高くなっているため、男性の頭がよく見える。ふむ、てっぺんに10円ハゲか…

苦労してるんだろうなああの人も…

なんて考えていると、隣から吹き出す声が聞こえて来た。誰であろう、シュヴィである。


「てっぺんにハゲ…10ベルハゲ…ブフッ」


なんか、最初に見た時に抱いた人と話すのが苦手そうな物静かそうな女の子っていう印象がガラガラと音を立てて崩れ去って行っている気がするなあ。

あの大人しそうないかにも王女様っていう雰囲気は一体何処に飛んで行ってしまったんだろうか…

悔やまれるっ!


「ゴホン!、では会議を始めます。シュヴィーラ様宜しいでしょうか」


自分のとうはつをネタに笑われていたというのに表情一つ変えない初老の進行役の男性を思わず「凄い!」と思ってしまった。

そして話を振られたシュヴィは、笑いを必死に堪えていた表情から一変、王女らしい顔つきとなり話を始めた。


「今回、巷で横行している通り魔を捕まえるための案を提示したいと思います」


さっきまで、チョコレートをほっぺたにくっつけたままチョコの魅力を熱く語っていた姿はどこへやら、

まるで、

別人のように堂々としている。

声からでもわかる意思のこもる気持ちは聴くものの心をピシリと正してくれる。

それは、僕だけでは無いようで、大臣たちも先ほどとは打って変わって緊張した雰囲気を出していた。

姿が見えないことで余計に緊張するのだろう、表情が全く見えないと言う事は発言のデッドラインも琴線もわからないと言うことと同じなので、発言の隅々まで気を使わなければならない。

さっきリラックスするためとか、堅苦しい服を着たくないからと言う理由からシュヴィが定めたのではないかと疑った事を、こっそりと心の中で謝っておく。


「提案、とおっしゃいましたが一体どのような案を御考えになられたのか、詳しく聞いても?」


大臣のうちの1人が説明を求めてくるのに応じて、シュヴィはとつとつと作戦の具体的な内容を話し始めた。


「構いません、この作戦はまず、囮となる方を立て、夜犯人が出そうなところに立っていてもらいます。そして犯人捕縛兼囮の方の護衛としてつける騎士兵近くの物陰に控えさせておき、いざ犯人が出てきたら出動する、と言う簡単な作戦となっています。とてもシンプルなものでわかりやすいかな、と思ったのですが、いかがですか?」


すると、1人のあごひげを生やした男が挙手して、作戦の問題点を話し始めた。


「王女様の作戦、とても素晴らしいものでございました。しかし、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」


シュヴィが「どうぞ」と肯定を表すと、大臣のうちの1人がニヤニヤと、嫌らしい笑みを顔に貼り付けながらもっともらしい事を言い始めた。


「1つ目に、犯人は女性しか狙わないという点です。女性しか狙わないという事は囮は女性でなくてはならない、しかしながら我が国の騎士兵及び衛兵に女性はいない、まして王女様自ら御出になるなど言語道断です、この点をいかがなされるのか是非ともお聞きしたく」


その質問を待ってましたとばかりに、答え始めるシュヴィは何故だろう、どこか少し格好良く見えてしまった。(これからいう内容はひどい物だと分かっているのに)


「ええ、ですので囮の方は男性にやっていただく事にしました。条件は、女装の似合う女顔の可愛い男の娘です!」


隣で見ている僕はこの時ほどこう思ったことは後にも先にもこの一回だけだろう。


これぞまさしく公私混合。


と。

一方、まだあきらめがつかないのか、ゴモゴモと「そんな事を引き受ける男がいるものか」とか呟きながら批判している大臣達を見て、シュヴィが意気揚々と僕の事を紹介し始めた。


「実は、もうすでに引き受けてくださる方がいるのです。私の友人にして今回の囮を快く引き受けてくださったアオハ・アルカディラです!アオハ自己紹介を」


いつの間にか、脇の分厚い磨りガラスは何処へやら。あっさり取り払われてオープンな状態となっていた。


「えーと、アオハ・アルカディラです。今回囮役をやらせていただきます、よろしくお願いします」


僕の姿が見えたことで、大臣達、もちろん進行役の男もぼう然と固まった。

シュヴィはと言うと、どや顔状態で、気づいていないのか未だに得意気だ。

そして、少し経った頃、5人の大臣のうちの1人がぼそりと蚊の鳴くような声で


「奴隷王子」


と、呟いた。


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