3話 事実確認
「コホンッ!、ということで兄さんで遊ぶのは一時止めにして、本題に入りましょうか?」
いま一瞬聞き逃しちゃいけないような言葉があったような気がしたんだけど⁈
と恨みがましい目をヒイロへ向けると、
ヒイロはニコリと微笑み『はよ、話せ』と笑顔が威圧を放っていた。
その気迫に負けたわけではないが、
僕はこの約3年の表向きの結果を話し始めた。
「結果をまず話すと、イヅナ姉さんは見つからなかった」
と簡潔に結果を報告する。
聞いた瞬間は表情を暗くしたヒイロだが、
次の瞬間には表情を元どおりにして、
「で?結局兄さんはなんの情報も得られないまま無駄で無為な2年8ヶ月を過ごし、私を敵のど真ん中に放置したという事なのですか?」
さすがヒイロ。
どんな時でも僕を弄る事に手を抜かない!
そこに痺れないし、憧れもしない!
「別に無駄でも無為でもなかったよ!
だってひとつは情報を手に入れたんだから!」
そういった瞬間、
ヒイロは顔色を変えて僕の思い切り近くに歩み寄ってきた。
うっ…!
顔が近い…
僕は少し顔を赤くしながら、咳払いをしてこう切り出した。
「えーと、落ち着いて聞いてね?」
と、前置きをしながら話を続ける。
「実は、とある謎の組織の手による大規模な事件がついこの間エルディで起きたのはしってるよね?」
無言で真剣な顔をして頷き返してくるヒイロのを確認して、また話を続ける。
「その、謎の組織は全員長くて黒いローブを着ていて身元が分からないようにしていたんだけど、1人だけ学都の魔術師の風魔法でローブのフードが持ち上がって長い白髪の女の人が見えたんだって、しかも慌てて手をかざした時に手に変な模様があったって」
そこまで聞いたヒイロは自身の包帯を巻いた右の掌を眺めた。
そこから、暫くの沈黙のあとヒイロは嘆息と共に言った。
「取り敢えず、その姉さんがいるかもしれない謎の組織(笑)とやらは各地で事件を起こして回っているのですよね?」
ヒイロらしい少し毒の含まれたまとめ方に僕は「うん」と小さく頷いた。
「なら、この王都で謎の組織(笑)が事件を起こすまで私達は学生生活をせいぜい楽しみましょう」
姉さんを見つけあの時の真実を聞き出す為に力をつけておこう
と、言った事が易々と浮かび上がる心強い妹の言葉に僕は破顔させながらこう言った。
「友達出来るといいね、ヒイロ?」
そこには、少しの意趣返しを含ませておいた。
その事にヒイロが気づかないわけがない。
「兄さんに言われるまでもありません。絶対に友達、作ってあげますよ。兄さんが羨むぐらいの大親友を!今に見ている事ですね、後で泣いて謝っても遅いんですから」
過剰に反応する妹を笑いながら、
僕達はこれから色々な事が起こるであろう学院生活に足を踏み込んだ。