10話 胸騒ぎ
時はヒイロが謎の人物に連れ去れてしまう少し前、大体、勇者を2人倒したくらいに遡る。
あちゃー、
ヒイロを怒らせてしまった。
あれは3日間くらい口をきいてもらえないくらい怒らせてしまった。
やばいなあ…
まさかシュヴィにリラの花祭りに誘われたことを聞いていたとは夢にも思わなかった。
だって、すごい真剣だったんだよ?
まさか、そっちとは思わないでしょうよ…
僕は最初は、どうやって昨日の夜遅くに来た伝令からの命令をヒイロが聞くに及んだのか、そっちの方が気がかりで気がかりでたまらなかった。
そして、命令内容まで知られていたらどうしよう、過去の自分のしてきたことも知られたらどうしよう、ヒイロはもう僕のことを見たくもないと思うかもしれない、絶縁されてしまうかもしれない、と、あの時間はずっとそればっかり考えていた。
そんな、最悪の展開をずっと考えていたのに、実際には、シュヴィにリラの花祭りに誘われて僕に断られた話だったのだから。
僕の気が抜けてああいう風に言ってしまうの
も仕方がないような気がするんだけどなぁ
でも、確かにヒイロにとって友人となったシュヴィからのお誘いを断ったことを、あんなに軽薄に笑いながら言ったら誰でも怒るか、きっとヒイロの心中は「シュヴィを馬鹿にしているのですか、兄さんは!」で埋め尽くされたはずだ。
うーん、
確かに無神経な事を言いすぎた…
よし、午後の授業になったらヒイロも戻ってくるだろうし、そしたら謝ろう!
誠心誠意謝ればきっと許してくれるはずだ。
昔だって、病弱だったヒイロを励まそうと色々空回りして失敗してヒイロを怒らせてしまった時もしっかり謝れば許してくれてた。
まあ、その度に「兄様は本当は凄いはずなのに……」としょんぼりされたが…
昼休みが終わるまであと30分くらいあるし、何か食べようかな
本日のおすすめのローストビーフのサンドイッチとコーンポタージュが良いな、よし!
おもむろに席を立って、食券を買う列に並ぶ。
すると、後ろから肩を叩かれた。
振り返るとそこには、ジト目をしたグレンがいた。
「アオハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……」
地獄の底から響くような声を出しながら背中に枝垂れかかってくる。
「ど、どうしたの?グレン」
悪鬼もかくやという感じで、枝垂れかかっていたグレンがいきなりのしかかり僕を潰そうとしてきた。
慌てて、体勢を整えて倒れることだけは阻止した。
「なんでお前ばっかモテてんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
よし、捨てよう。
この背後の悪鬼は床に打ち捨てて、さっさと本日のおすすめランチを食べよう!
そして、さっさとヒイロに謝って仲直りしてもらおう!
よし、そうしよう
ペイッと悪鬼を捨てて、食券を買う。
そして、カウンターのおばさんに食券を差し出して注文をした。
ちなみにグレンはズルズルと床を這ってきている。
少し怖い。
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そして、30分後の教室で戦術の授業の開始を待つ。
先生が入ってきて、黒板に文字を書いていく。
ヒイロが来ない、
ただのサボりかもしれない…
しかし、変に胸騒ぎがする。
ヒイロがサボるわけがない。
しかし、それほどまでに怒らせてしまったのかもしれない。
今日の授業が終わったら探しに出てみよう、もう寮に帰っているなら良いが、もしかしたら万が一があるかもしれない。
女子寮に男子は入れないからシュヴィに頼んでみてきてもらおう。
借りを作ってしまうことになるが、それで女装をせがまれるかもしれないが、背に腹は変えられない。
ヒイロに危害が加えられているかもしれないんだ、僕にできることならなんでもやってやる。
だから、だからどうか無事でいてくれ…
授業が終わるまでの15分がやけに長く感じた……
更新が滞りすいませんでした。
毎回お読みくださりありがとうございます。
今回は、前回ヒイロが辞書と共闘していたそのときアオハは何をしていたのか⁈
な回となっております。
グレンに絡まれながらお昼を食べていただけのアオハですが次回は少しは活躍するはずです。
次回もお読みくだされば幸いです。




