7話 脱朴念仁……してません
ヒイロとお祭りを一緒に回る約束をした次の日。
なぜか僕はシュヴィに呼び出しを受けていた。
「いきなり呼び出してごめんなさいアオハ。人がいると言いづらいことだったのでここに呼び出させていただきました」
普段より少し硬い言葉遣いに、落ち着かなさげにもじもじしている。
制服の黒いローブについた蒼い宝石の留め具を手で弄っている。
そして、意を決したのか留め具から手を離してスカートをグッと握りしめた。
「わ、私と…も、お祭り…回ってください!」
少し下を向いて、さらにググッとスカートを握っている手に力を入れた。
きっと離した頃には真ん中に小さくシワが出来上がっているだろう……。
「いいよ」
ぱあっと明るくなった顔をこちらへ向けてくるシュヴィ。
「ありがとうございます!」
「ううん、大丈夫だよ。ちゃんとグレンも誘って行くからね!」
「…………………………はい?」
一拍遅れてシュヴィの間の抜けたような返事が聞こえてきた。
「え?照れなくても大丈夫だよ、ちゃんと僕が!責任もって!グレンを誘うからね!」
いやあ〜、まさかシュヴィがグレンのことを好きだなんて思わなかった。
いや、まあ昨日のヒイロとの話の時2人一緒に出てきたからもしかしたら……って薄々感じてたけど、
もしかして、僕って勘が鋭くなったんじゃないかな?
よし、これでもう姉さんにからかわれることはないね!
朴念仁なんて失礼しちゃうよね、まったく!
アオハ・アルカディラ16歳にして冴え渡る勘だよ!
僕が脱・朴念仁したことにホクホクしていると、対照的に何故かワナワナ震えているシュヴィ。
「どうしたの?顔が真っ赤になってるよ?そんなに心配しなくても、この脱・朴念仁な僕がどうにかしてでもグレンを誘うから心配しないでね!」
「ア……」
「ア?」
顔を下げて、詳しく表情が見えないシュヴィ。
「アオハの馬鹿!」
勢いよく顔を上げて真っ赤な顔でプルプルしながら握りこぶしを振り下げて大きな声で怒鳴り走って逃げて行ってしまった…
「そんなに恥ずかしがらなくても良いのに……」
よし、ここはシュヴィのために一肌脱ごうじゃないか!
頑張るぞ!
一方その頃、ヒイロはというと……
「兄さん……」
何故か草むらにいた。
そして、シュヴィとアオハのやり取りをただひたすらに見つめていた。
「兄さんに近寄る女の子たちはなにがなんでも追い払いたいという妹心はあるんですが、シュヴィですし友達なので応援したいという友達心……うーん、難しい…いえ、ままならないものですねぇ」
まあ、恋する女の子の心がわかる身としては言えることはひとつだけです。
「兄さん、脱・朴念仁はしていませんよ」
ハァー
と深いため息をつくのだった。
お読みくださりありがとうございます。
少し感覚が空いてしまい申し訳ありません。
次回はもう少し早く更新出来るよう頑張ります!
是非とも感想、評価のほどよろしくお願いします