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人は見掛けで判断してはいけません!  作者: 内守谷ひみか
2章 蒼色世界
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6話 妹は強し

「あと少しで連休だからか、校内が浮き足だってるきがしますね」


5月、通称リラの花月


この月の最初の月の日から陽の日までの1週間がお祭りになる。

花祭りと呼ばれ、町中いたるところに花が飾られる。


当然、お祭りに参加するお店などは「稼ぎどきを逃してたまるかっ!」と日夜努力して店内の装飾に思考を凝らしている。


ちなみに、売り上げやお客の入った人数が1番多かったお店が女王陛下から直接お褒めの言葉を戴く事ができるので、みなそれを目指して頑張っているのだ。


何故って?


それは、お店に伯が付きお祭りあともお客さんが離れて行って閑古鳥が鳴くのを全力阻止するためだ。


ただでさえ、似たお店が多くいろいろ激戦区なこの町では、商売がうまくいかず田舎に逆戻りする店主や、危ないお金貸に手を出してそれはもういかついお兄さん方とドッキドキでスリル満点な鬼ごっこにおはようからおやすみまで明け暮れる健康的な生活になった経営者が多々いるのだ。


それはもう数え切れないほどいるのだ!

よく川にプカプカ浮かんでいる人がいるほどだ!


「まあ、町をあげた年に1回の大々的なお祭りだし、みんなが待ち遠しく感じるのもしょうがないんじゃないかな?」


ヒイロが校内を見回しながら、フゥとため息をつく。


チラチラとこちらを見ては、「タイミングが…」とか「心の準備を整えて、いざ!……あー」とか聞こえてくる。


そんな、頰を赤らめて両手で顔を仰いで涼しい風を送りながら「フーーー」と深呼吸を何回か繰り返した。


それから、両手で頰をペチンッと叩いて「よし!」というと、いきなり変な行動をしだした妹を心配してウロウロキョロキョロしていた僕を上目遣いで少し見上げた。


僕たちは、ほとんど同じ身長なので見上げるといっても少しだけだ。

なのにすごく破壊力のある攻撃(?)だった。


「兄さん」


意を決して、制服のスカートの裾を少しつまんで、片方の掌を上にして僕に差し出した。


そして、


「私と花祭りを回っていただけませんか?」


と、きりだした。

この行動には覚えがあった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





僕とヒイロが小さいときに、お祭りの日にヒイロは熱を出して寝込んでいた。


お祭りにどうしても行きたがったヒイロは泣いて泣いてそれはもう本当に大変だった。

仕方がないので、母はベランダからお祭りの様子を少しだけ見せてくれた。


ヒイロは泣いてヒクヒク言いながら母に抱っこされて母のドレスの肩のひらひらした布を握りしめながら外の様子を食い入るように見ていた。

そして、町の女性が男性にむけてカーテシーをしているのを見つけたヒイロは「かあさまかあさま、あれは何?」と握りしめているドレスの袖を引っ張って母に聞いた。


母は「あれはね、お祭りに女性から男性をお誘いするときにやる行動よ。一緒にお祭りに参加してくださいませんかっていう意味ね、逆に男性は………………」




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「喜んで、お受けします」


スッと片足を引き床につけて跪く体勢になり、片手を胸の上に、そしてもう片方の手は相手の手のひらの上に重ねる。


ヒイロの表情がびっくりしたものになる。

そして、次の瞬間には花が咲いたような明るい笑顔になり、言った。


「ありがとうございます。兄さん、覚えてたんですね」



あの時の母の言葉の続きはこうだ。

「男性はね、跪いて片手を胸にもう片手は相手の手のひらに重ねるのよ。母様もね貴方達の父様にそれをやられてノックアウトしたのよ、うふふふふっ!」

だった。



すごく幸せそうだったのを今でも覚えている。

それを、キラキラした目で見つめながら「私もかあさまみたいになれる?なれる?」と聞いていた。

それに、母は「もっちろん!だってヒイロは母様の娘で母様以上に美人さんだからね!」と言っていた。

楽しい時間だったのを今でも覚えている。


「忘れる訳がないだろう?」


僕らの間に穏やかで優しい空気が流れる。


手を重ね合ったままお互いに微笑み合う。

そして、そんな薄桃色の空間をいきなり破る声が2人ぶん響いてきた。


「待ってくださーい!お祭りは補講が終わったらみ・ん・な・で!行くんですよね?ね?」


「おーい!なんだよ俺も仲間入れてくれよー!」


ヒイロの目からハイライトが消えた。

そして、にこやかに笑いながらシュヴィとグレンに向き直る。


そこには、とても穏やかに怒りの雰囲気を纏う我が妹ヒイロ様が降臨なされていた。


「シュヴィ?グレンさん?いま、わかりますよね?」


一言喋るだけで気温が1度づつ下がってゆくように感じられる。

直接話しかけられたシュヴィとグレンは顔を真っ青にして冷や汗をダラダラとかいてコクコク頷いていた。


「「すいません、ごめんなさい」」


2人揃って廊下の奥へと走って逃げて行くのを見守ってから、ヒイロはまた口を開いた。

今度は見ているだけで冷や汗が止まらないものではなく、年相応な可憐な女の子の笑みを浮かべていた。


「よろしくお願いしますね、兄さん」


心の底からの笑顔に今度は僕の方が固まる番となったのは言うまでもないだろう。


こんばんは

毎回お読みいただきありがとうございます

次回も間が開かないように頑張って更新いたしますので楽しみにお待ち頂けたらば幸いです。

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