5話 人の噂も75日
空が青いなあ……
大昔の闘技場のような造りの建物の隅の草が生えるところで三角座りをしてアウェー感を味わいながら、みんなが剣や魔法の練習をしているのをボゥと眺めていた。
何故僕だけ修練の授業をぼっちで見学しているのかは先週まで遡る。
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「うわぁっ!」
ドンッという音と共に上がった可愛らしい悲鳴。
女子同士のチームか?と視線を向ける男子が何人かいたが、そんな声を上げた様子がある者はいなかった。
みんなが一様にナイフや細長い剣をぶつけ合いキンキンいうたびに火花が散る。
「キャーこわーい」
みたいな悲鳴をあげる女子など1人もいなかった。
みんながみんな勇ましく超速で剣さばきを披露していた。
もはや、この学校にか弱い女子の存在など都市伝説に近い。
さあ、そんな中めったに聞くことのない可愛らしい声はどこから上がったのだろうか…
ヒント1、女子にはいない
ヒント2、うちのクラスには声の高い男子がいる。
答えは……
「うー、グレン強過ぎるよ」
練習場の隅の方で模擬戦をしていたアオハだった。
グレンの放ったひときわ強い剣撃に軽く吹き飛ばされたらしい。
グレンの方は剣の背で肩をトントンして尻餅をついているアオハを見下ろしていた。
それはもう「え?こいつ巷で有名な通り魔捕まえたんだよな?な?」みたいにキョロキョロしてアワアワしていた。
「大丈夫ですか兄さん!」
割と最初から周りの目を集めていたアオハとグレンだったが、心配で駆け寄ってきたヒイロの大きな声でさらに注目を集めていた。
「大丈夫だよ、剣が当たったわけじゃないし」
「剣が当たったら大事件です!」
ヒイロは昔から心配性だった。
こんなところも変わらないのかとうれしく思う。
まあ、心配性度がアップしている気もしなくはないが、可愛い妹だ。
「グレンさんもグレンさんです!こんな非力で弱そうな外見の兄さんにバシバシ剣撃を与えるなんて」
うわぁ、やめてー!
グレン悪くないから!
「ヒイロ!」
しかし、僕の制止など全く聞かずにまだまだヒイロマシンガンは続く
「大体、兄さんは昔から女の子に間違われるくらいなよなよしてるんですからそんなに強い剣撃では全身粉砕骨折しますよ⁈あなたは傷害の罪で投獄されたいのですか?」
「うっ、わりぃ」
「ヒイロ……僕そんなに非力じゃないよ?ただ剣技が苦手なだけで…まあ弱いけど」
周りはそれを聞きながら思った。
あ、女子に間違われるってとこは否定しないんだ…
と。
そんなこんなで、あれよあれよと言ううちに僕は見学扱いになっていった。
次の日には学院中に
アオハ・アルカディラは女子並みの力しかない。
という噂が蔓延ることになった。
お読みくださりありがとうございます。
今回はアオハがヒイロからどさくさまぎれて散々言われる回となっております
ヒイロが何故こんなに心配性なのかはおいおい作中で語られるはずです
コメントや評価など頂けましたら幸いです