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人は見掛けで判断してはいけません!  作者: 内守谷ひみか
2章 蒼色世界
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4話 泡沫の幸せ

いつもの放課後の教室で、僕はずっと気になっていた事をシュヴィに聞いてみた。


「そういえば、シュヴィは王女として出てくるときはリシェリアって名乗ってるよね?どっちが本名なの?」


パッと顔を上げてペンを持ちながら鼻下に手を当てて考え出した。


なんか、すごく真剣な表情をしているシュヴィに慌てながら付け加える。


「もし、答えたくなかったら、言わなくても大丈夫だよ」


すると、シュヴィは慌てながら手を振った。


「いえ、私自身どうしてこの名前を使っているのかよく分からないのです。誰かに強要されたわけでもありませんし……ん〜?」


うんうん唸って考え出したシュヴィに僕はこれ以上は聞いてもどうしようもないと考えて助け舟を出そうとした、


しかしちょうどその時シュヴィは顔をあげてポンっと手を打った。


「思い出しました、そうです案外しょうもない理由だったんです…………しょうもなさすぎて忘れてしまうほどでした…」


理由を思い出したというシュヴィの顔はどんどん明るかったものから暗い影を落としたように暗くなっていった。


「なので、アオハには今度私が心を決めた時におしえてあげますね」


「分かったよ、楽しみに待ってるね」


「ふふふ」と笑った彼女は、さっそく荷物を片づさくはじめた。


夕焼けが髪に反射してすごく眩しい


オレンジ色の光をまとった彼女は目を離したらすぐにどこかに消えてしまいそうな気さえしてくる。


「さて、ヒイロを迎えに行きましょう!」


くるりとこちらを振り返った彼女の顔はいつも通り明るいものだった。

誰もさっきまで表情に暗い影をさしていたなんてわからないだろう。


そんなシュヴィのあからさまな話題の転換はこの雰囲気をどうしていいか持て余していた僕には救いだった。


「そういえばヒイロは何をしているんだろう?」


ふと、授業が全て終わり帰りのホームルームが終わると同時に姿をくらませた妹のことが気になった。


一体全体ヒイロはどこで何をやっているんだろう?


「ヒイロでしたら、職員室ですよ?」


「えっ⁈なんで?職員室なんて呼び出される以外は入室禁止じゃなかったっけ?ヒイロ、先生に呼び出されたのかな、何したんだろう」


うわー、と騒ぎ出した僕をシュヴィは不思議そうにみて言葉を続けた。


「ヒイロが呼び出される訳ないじゃないですか〜、逆です逆」


逆とは?

えーと、ヒイロが呼び出されたの逆だから…

ん?

訳が分からなくなってきたぞ


うんうん唸って考え出した僕を見て、シュヴィはふふっと口に手を当てて静かに笑った。


「私たちさっきと逆ですね」


と、言った後にゆっくりと緩慢な口の動きで正解を話し始めた。


「ヒイロが先生を呼び出したんですよ〜、なんやかんやあったとかで友人から相談されたそうなんです、そして話を聞いたヒイロは職員室へ……と言うことです」


なるほど。

つまり、

ヒイロはいつのまにかシュヴィ以外の友人が出来ていてその人の相談話を聞いて怒って先生を呼び出したと……


「その子の相談って?」


「すいません、そこまでは分かりません。ヒイロに聞いてみてくださいね?」


実は私も気になってたんです、

と言って、いたずらっ子みたいに舌を少し出して「えへへ」と笑うシュヴィはひたすらに可憐だった。


「じゃあ、聞くためにも早く迎えに行かないとね」


敷地面積に比例して長い廊下を、他愛もない話をしながら歩いた。


さっきまでの話題には触れないで、

最近こんなことがあったとか新しく甘いもののお店が出来たから今度みんなで行きましょうとか話しながら歩いているとあっという間に目的の場所に着いた。


「ではグレシット先生、その手はずでよろしくおねがいしますね、では失礼します」


ペコっと一礼して職員室から出てくるヒイロは、お手本のような完璧な笑顔を顔に浮かべた。


「兄さん!それにシュヴィも…どうしたのです?先に帰ったのではなかったのですか?」


近づいてきた僕らを見て、どうしたのかを聞いてきた。


「どうしたのかって、ヒイロを迎えに来たんだよ。シュヴィに職員室って聞いたから…」


すると、すこし困った顔をしながらもどこか嬉しそうな雰囲気で、


「先に帰っても構わなかったのに……」


と言った。

ヒイロは小さい頃から照れると語尾が普段の丁寧なものから少し崩れたものになる癖がある。


一種の照れ隠しなのだ。可愛い……

僕の知っているころのヒイロが垣間見ることが出来て兄として少しホッとした。


「ふふ、ヒイロを置いて帰るなんてありえませんよ。さあ、一緒に帰りましょう」


シュヴィがいい感じにまとめてくれて、僕たちは思い思いに話しながら帰り道に着いた。


楽しい。


身に余る幸運を味わいながら、僕はいつまでも続きますようにと願った。


こんな身に余る幸運はいつか相応の代償が来るとこのときは忘れていた。

お読みいただきありがとうございます。

前回言ったようにそう遠くならないうちに最新話を皆様にお届けできてホッとしております。

次回もそう遠くならないよう頑張りたいと思います!

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