2話 静けさの中で
あれから数日たって、ようやくタメ口というのに慣れて来た。
例えば、
授業を受けている時には、
「アオハ〜、教科書忘れたから見せてくれよ〜」
「え、また?いいけど……ちゃんと持って来た方がいいよ?」
「わりーわりー」と笑いながら手を合わせ来るが、絶対あんまり悪く思っていないと思う。
「実を言うとさ〜、教科書行方不明になってんだよねー笑えるよな!」
いい笑顔でグッとサムズアップしているグレン。
因みに、まだ入学式からひと月ぐらいしか経たないしグレンは隣室の筈なので寮生活だ。
なのに、「教科書無くした」と来たのだ、僕がクラッとしたのは言うまでもないだろう。
などなど例をあげればキリがない。
たった数日にもかかわらずだ。
世の学生たちは友達付き合いがとても大変だということがわかった。
ただ、
授業に対する態度が悪いだけで性格や考え方はわりと言い方は酷いがまともだった。
などと、ここ数日を振り返っていたら背後から手を挙げてブンブン振りながら大声で叫んでこちらへつっこんでくる人がばっちり見えた。
「おーい、アオハー!」
廊下に出ていた他のクラスの数名が僕の方を凝視してくる。
正直、この視線が1番勘弁してほしいことだったりする。
僕は本当は誰からも注目されずに、ただ、大多数の中の1人として過ごしたかったのだ。
そこに、隣に妹が居ればそれで良かったのだ、本当なら。
「おーい、無視すんなよ〜俺が悲しいだろ?」
ゲラゲラ笑いながら少しボゥとしてしまっていた僕のおでこを人差し指でツンッと軽くついた。
「あ、ごめん。なんかボーとしてたよ」
つつかれたおでこを手のひらでさすりながら、笑って謝る。
仲のいい友人同士はこういう風に謝るものらしい。
初日に、頭を下げて「すいません!」と謝ったら額をぐりぐりされた。
何故か周りにいた女子たちが色めきだっていたような気がする、そして、なんかひたすら「尊い!」とか「ありがとうございます!」とか言ってバタバタ倒れて居た。
「アオハー、お前ほんとに大丈夫か?今日すっげーボーーっとしてんぞ」
「ごめんね、大丈夫だよ、少し考え事してたから……」
グレンは、まだ疑わしそうにこっちを「む〜〜」と言いながら見ていたが、それ以上詮索されてもお互いいい思いのするものでもないので、僕としてはそろそろ諦めて欲しい。
まあ、グレンならさっきまでの愚痴みたいな事を言っても「すまんすまん」で笑ってすぎそうだけど……
「ところで、何か用事があったんじゃなかったの?」
と、僕がはぐらかすと、すぐに表情をころっと変えて、そうだった!と慌てて話し始める。
「アオハんとこ今週の土曜補習あんじゃん?あれの後遊びにいかねぇかな〜って思ってよ、かたっ苦しい授業の後は遊ぶに限るんだぜ!って事で遊びいかねぇ?」
言ってることはそれでいいのか……?
って感じだけど、友達と遊びに行く。
友達と……
「もちろん行くよ!僕友達と遊んだことないからすごく楽しみだよ!」
「おう!絶対行こうな!」
ガタガタっという音が背後から聞こえたので振り返って見てると、物陰からヒイロとシュヴィが潜んでいたらしい。
2人とも身を隠していたと思しき花瓶付きの台座をガタガタ揺らして居る音だったらしく、落っことしかけていた花瓶を慌ててキャッチしていた。
こちらの視線に気がつくと、2人揃って「あはははは〜」と乾いた笑いを浮かべていた。
「何やってるの?2人とも……?」
そう聞くと、2人は笑いながらフイッと顔を背けながら「だって、アオハと…」とか「はじめては私と……」とか「私だって、同い年の子と遊んだこと無いのに……」とか「兄さんと遊んだのなんて子供の頃以来ないのに……」とかいっていた。
なんか、後半物悲しくなるような事言っていた気がする…
チラリとグレンの方を見て、目線で『いい?』と聞いてみると、しょーがねーなーみたいな感じで頭をガシガシかいて、嘆息混じりに、
「なら、特別授業終わったらお前らもくっか?みんなで遊ぼうぜ」
というと、
シュヴィは目を輝かせて
「是非ご一緒させて下さい!」
と言い、
ヒイロは、
「まあ、しょうがないですね。行ってあげますよ。本当は兄さんと…………なんでもありません」
と言ってた。
4人で遊ぶ約束をしたところで、次の授業が始まるチャイムが鳴り響いた。
それは、普段より荒々しい音に聞こえた。
まるで、この約束は果たされないかのように…
更新が遅くなりすいませんでした。
今話もお読みくださりありがとうございます。
男の子同士の会話は難しいですね、なかなか話が進みませんでした。
次回はなるべく早く更新出来るように頑張りますのでよろしくお願いします。
感想と評価をいただけましたら、幸いです。