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人は見掛けで判断してはいけません!  作者: 内守谷ひみか
1章 灰色世界
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10話 備えあれば憂いが起きても大丈夫

僕がまずはじめに取った行動は、

ヒイロを避難させるという事だった。


「良い?ここから動かないでね、僕が負けそうだと思った時だけ走って逃げて…………出来れば寮まで」


小さい子に言い聞かせるみたいに、優しくそれでいて有無を言わさないように。


「分かりました………私は兄さんを置いて逃げたくありません…だから…絶対勝ってくださいよ!絶対ですからね!」


両手をぎゅっと握りしめ、少し上目遣いで僕にお願いを言ってきた。


「信じてますからね兄さん」


テテテッと噴水の前まで小走りで駆けていくヒイロを微笑みながら見送り、十分な距離を取ったことを確認してから敵へと向き直った。


「ほぉ〜ほぉ〜、見せつけてくれるねぇ、ホント仲の良い兄妹だことで、俺、忘れられてんじゃねぇかと少し妹ちゃんにジェラシー感じちゃったよぉ〜」


粘っこいいやらしい視線と口調で飄々と僕たちのやり取りを揶揄する暗殺者に、これまた冷静に受け答えをする。


「お待たせしました、あと、あんまりヒイロを見ないでくれませんか?怯えて震えてますから」


ニヤァァァァァァァ

と擬音をつけるとこんな感じで口を三日月のように裂いて笑いながらこんな言葉を吐き始めた


「僕だけを見ろって事でいいんだね?そういう意味なんだよねぇ?おじさん照れちゃうよぉ〜」


「その喋り方とか照れ顏とか生理的に受け付けないのでごめんなさい無理です」


あと、付け加えるなら

そんな事言ってないし…

頭の中どうなってんだろうか


「これが今ちまたで流行ってるツンデレってやつなんだねぇ、こんなの今までならイラッとするだけだったのになんでだろうお前に言われると…」


あの………

1つ言いたい事というか、

思った事があるんですが…

良いですか?


この暗殺者キャラ変わってない?


グッルングルン変わってない⁉︎

そして、なかなか戦い始まらないね⁉︎

うーん、

もう逃げたほうが早いんじゃないかな…

なんか、始めの雰囲気が必然的に戦いになる感じしかしなかったんだけど…

今の雰囲気的に逃げた方が絶対手っ取り早かったよね



なんて、ぐるぐる考えを巡らせていると、いきなり横から厳しい声が飛んできて僕はこの思考を始めてしまった事を後悔する事になった、何故なら…


「兄さん上です!」


たくさんの火球が頭上に現れていて、今にも僕に降りかかるところだったから。


「っづ!」


ギリギリのところで横に飛んで火球を避ける。


「あーーあ、気づかれちまったか、妹様様じゃねぇかぁ!全く、お前を油断させるためとは言え随分きもい事を言っちまったよ、見てみろよこの鳥肌のたちよう!腕がブワーってなっちまった。まあ作戦通り油断してくれたみたいなのが不幸中の幸いだがなぁ!」


ギリッと奥歯を噛み締める。

奥歯から血が出ているのか口の中が鉄の味がする。

まんまと相手に乗せられた。


焼け焦げた制服の袖を見ながら気を引き締める。


「おいおい、素手かよ!学院生なら剣くらい持ってんだろ?」


暗殺者の言う通り

普通なら中等部から成績上位者のみ街中でもどこでも帯刀する権利がある。

高等部の学院生ともなると、成績上位者のみだけでなく全員が帯刀を許されている。

そう、普段なら。

あいにく、今日は入学式だったので帯刀していなかった。


「おいおい持ってないのかよ!運の尽きだな!大人しく…やられろ!!」


暗殺者がナイフを振り上げて迫ってくる。

スロー再生したみたいに世界が遅く感じられる。

殺す気はないのか致命傷になる場所以外に狙いを定めて振り下ろす。

あと、

30セルチ


10セルチ


5セルチ


「兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




パァン!


カランッと音を立てて地面へ吸い込まれるかのように落ちるナイフ。


ドサッと音を立てて地面へ崩れ落ちる暗殺者。


「フゥーーーーーーーー」


ギリギリの所まで粘って敵を近づけ無ければ意識を刈り取る事ができない非殺傷系銃を使用したので1番敵が隙を見せる止めの一撃を利用せざるを得なかった。

実に心臓に悪い。

未だにドクドクと高鳴っている。


「兄様!無事ですか⁈死んでませんよね⁈生きててくれてますよね⁉︎」


「死んでないし大丈夫だよ。傷1つ無いし…少し精神的にダメージ負ったくらいだし、ヒイロは?大丈夫?」


少し落ち着いたヒイロを慮ると、

ヒイロは取り乱したのが恥ずかしいのかいつになく早口だ、


「大丈夫です。兄さんが戦って守ってくれましたから」


まるで昔の頃の様に優しく言葉をつぐんだ。

しかし次の瞬間、僕的には思い出して欲しくなかった事をまるでさっきの優しくて儚げな声はどこへやら、割と本気めの怒りを滲ませた感じで迫って来た。


「ところであの銃はどうしたんですか!武器を携帯するのは今日は禁止のはずですよ!なのになんで!」


「落ち着いて!確かに今日は武器の携帯が禁止されてるよ、けど非殺傷系の護身用おもちゃまで携帯を禁止されたわけじゃ無いでしょう?」


そう、

ルールの緩い所をかいくぐっているだけだ。

これなら、もし見つかっても「おもちゃの銃です、武器じゃありません」で強行突破できる…はず。

そう、命名は

"これはトイガンです……トイガンだよ?本当だよ?"

である!


「全く、兄さんは。そういう小狡い所はかわりませんね」


「え?昔の僕ってこずるかったの?本当に?」


「ええ、兄さんはにぶにぶの天然なのにたま〜に小狡いところがありましたよ?しかも!本人が無自覚という本当にたちの悪いやつです!」


やばい、これ以上この話題を続ける事は藪蛇だ

さっさと話題を転換しようそうしよう!


「へ、へぇ〜…………まあこれのお陰で助かったんだし良しとしようよ」


言い足りませんが仕方ありません、というように肩をすくめるヒイロに、

そういえば…となんとなく聞いてみる


「兄様、なんじゃないの?」


ニヤニヤしながら聞いた僕に少し怒ったようにバシバシ叩きながら恨み節(という名の心配していたという事が丸分かりの文句)を騒ぎを聞きつけた衛兵が来るまで延々と続いた。


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