0話 絶望の始まり
夜、
走る走る走る
痛みで感覚が鈍くなっている足に鞭を入れて住宅街の屋根の上をひた走る。
ヒイロを助けるために走らなければならない。
一体いつどこでばれたんだろうか。
兎に角、目的の場所まで一刻も早く辿り付かなくてらならない。
そして、僕の命とヒイロの身の安全を交換するのだ。
後少し、後少しで助け出せる。
目の前の丸太小屋の扉を蹴破る。
「ヒイロ!」
叫んで妹の無事を確かめようとする。
そして部屋の隅で猿轡をさせられ手足を後ろ手で荒縄で拘束されていた。
近寄りしゃがみこんでヒイロを抱き起こす。
すると、
手に生ぬるいドロッとした赤い液体がこびりついていた。
頭から、殴られたのかおびただしい量の血が出ている。
慌てて首に手を当て脈を確かめる
「よかった、息はある」
頭から血は出ているが、一応は大丈夫そうだ。
安心して気が抜けていたのか、後ろから来る敵に気づかず、あっさりと殴られ捕まってしまう。
まずい、非常にまずい。
こうなったら、
僕の命なんてくれてやる。
ヒイロは絶対に助けないといけないんだ、それこそ本当に僕の命を、いや、すべてを投げ打ってでも!
「おい、僕の命をお前らにくれてやる。好きにして良い……だけど、その代わりヒイロは、妹は助けてくれ!頼む!いや、お願いします、妹だけは、ヒイロだけは助けて下さい!お願いします!」
必死になって僕の襟首を掴んで吊り下げていた大男に頼み込むと大男は下卑た笑みを浮かべると…
「言ったな?その言葉忘れるなよ?」
と、言って
僕を床に乱暴に落として、動けない僕目掛けて鉄パイプを振り下ろした。
僕の意識はそこで途絶えた。