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「つまり、幸弥の想い人は世界的に超人気の雨具専門デザイナーで、その人気過ぎる勢いに負けて落ち込んでるってわけだな?」


優一が一通りの話を聞いてから簡潔にまとめてくる。

間違っちゃいないが、こいつに言われるとなんだか腹が立ってくるのは何故だ。

なんやかんや騒いでいたせいで陽はすっかり沈み、カラスも家に帰ってしまった。

零れかけたミルクティーはすっかり冷め、お前のせいだと残りを優一に飲ませてやった。


「お前ずっと雨が降るのを待っていたのに、その雨のせいで風邪まで引いたのか」


「何それ悲惨過ぎる!可哀想に幸弥…!おーよしよしよし」


ベッドに乗り上がってきた優一が俺の頭を抱えて撫で回してきた。

可哀想じゃねえし、とてつもなくうざい。


「やめろ!風邪移すぞてめえ!!」


「いいよ移せよ!そして元気になれよ!!」


優一は泣き真似をしながら抵抗する俺を押さえ込んで撫で続ける。

頭がぐしゃぐしゃになっていくのを感じながら、必死にもがいた。

が、ぎゅーぎゅー締め付けてくるせいで上手く力が入らず、結局されるがままだ。


「で、遠い存在だと思い知ったから、諦めるのか」


定春の言葉に、俺の身体が反応して動きを止めた。

諦める…?

なるべく考えないようにしていた俺に、そんな選択肢は元より存在しない。

つまり、


「諦めねえよ」


どんなに遠い存在だと思い知ったって、彼女への想いが無くなった訳ではい。

これからどうすればいいかなんて分からないが、諦めたりするものか。


「幸弥…かっこいいぞお前!!惚れ直したぜ!!」


優一は勝手に感動して撫で回していた手を止めると、今度は抱きついてきた。

つか、いつの間に惚れてたんだよ。やめろ。

定春は一瞬驚いたように目を見開いたあと、微笑んで納得したように頷いた。

俺の想いが通じたらしい。


「なら、これからどうするか、作戦を練らなければな」


作戦ってなんだよ。そう突っ込もうとした俺の上で優一が叫んだ。


「作戦!?あの子のハートをゲッチュー!作戦か!!?」


「………」


「………優一、外に出てろ」


壊滅的なネーミングセンスに定春が沈黙する中、俺はさっきから間近で叫ばれているせいで激しい頭痛に見舞われ、絶対零度の怒りでひとこと言ってやる。

その怒りを感じ取った優一は、身震いしながら瞬時に俺から離れていった。

大体、静かにするって約束したのに、ものの数分で破ってんじゃねえか。

さっきからわーぎゃー騒ぎやがって、頭に響くったらねえ!

射殺す勢いで睨んでやると、優一の頭に見える存在しない犬耳が垂れ下がり、すごすごと部屋の外へ出ていった。


「で、お前には何か考えがあるのか」


静けさを取り戻した部屋で、定春は聞いてくる。

俺はこの時に初めて、これからのことを考えた。

どうすれば彼女に近づけるのか。

再び店に行ったところで、恐らく二の舞になるのが落ちだ。

だが、それ以外に彼女に会う方法がない。

なぜなら、


「連絡先が分からねえんだよなあ…」


俺のぼやきに定春は小さく溜め息をついてから、提案した。


「なら、原始的な方法でいくしかないな」


「は?」


突拍子もない言葉に困惑した俺が聞き返すと、いたずらっぽく笑う定春がスマホをポケットから取り出した。

文明の利器を使った原始的な方法って、どんなだよ。


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