第15話 体育祭だけどいいじゃない!! Part2
体育祭は幸先のいいスタートをきったけど、まだ始まったばかり。先がどうなるかはわからない。
『次は借り物競争です。参加する選手は準備をしてください』
あ、順番だ。
「じゃあ行ってくるね」
「おう。がんばってこいよ」
「がんばれよ!!」
「……がんばって」
皆の声援を受けて行く。こういう種目ならボクでも勝てるかもしれないよね。
で、ボクの番になる。
「位置について、よーい」
パァンッと合図が響き、一斉にスタートする。周りからは少し遅れたけどまだまだ挽回のチャンスはある。ボクは指令の紙を開いた。
『女子のパンツ』
閉じた。
「…………」
……さすがに、今のは見間違いだよね? パンツなんて書かれていないよね? パン……パン……そう、パンストって書かれていたんだよね。そう、見間違い。見間違いなんだ……!!
そっと紙を開いた。
『女子のパンツ』
「見間違いじゃなかったーーー!!」
なんで!? なんでパンツなの!? 女子に「パンツ貸して♪」なんて言ったら変態さん確定だよ!!
で、でも、借りなきゃゴールできないし……恥ずかしいのは我慢して頼むしかないかなぁ。お姉ちゃんなら貸してくれるかな?
「お姉ちゃ~ん」
「ん? なんだあたしに借り物か?」
「う、うん……あのね……パン……貸してほしいの」
「なんだって? パン?」
「それじゃなくて……パ…ツ貸してほしいの」
「パーツ? なんの?」
「そうじゃなくて~」
「なんだよはっきり言えよ」
うぅっ……恥ずかしい。
「……パンツ」
「……は?」
「だから……パンツ貸してほしいの!!」
「はあっ!? ちょ、ちょっと紙見せろ!!」
「ちょっと何叫んでんのよ!!」
「優希さんが変態です!?」
騒ぎを聞きつけた美奈さんと紗彩さんにも紙を見せる。
「うわ~、本当に書いてある」
「ご丁寧に女子のって書いてあるわね」
「なんでこんな指令です……?」
「これでわかったでしょう? だから……お姉ちゃんのパンツ貸して!!」
「わかった!! わかったから顔真っ赤にして叫ぶな!!」
お姉ちゃんはトイレに向かって走って行った。ボクはいったい何回パンツを連呼したのだろうか……
「うぅ~、恥ずかしい……」
思わず顔を覆ってぺたんと女の子座りをしてしまう。穴があったら入りたいとはこのことだよ。
「……この反応、こいつって本当に男?」
「……とっても気になるです。実は女でしたというオチです?」
「いらないわよそんなオチ」
「なんとかして確かめてみたいです」
「そういえば……夏休みに臨海学校があったわね。その時にマサにでも頼んで確認してもらう?」
「それはいい考えです」
なんか二人がひそひそと話している。なんだろう?
「脱いできたぞ」
お姉ちゃんが帰ってきた。
「にしてもノーパンって意外に興奮するな。新しい性癖に目覚めそうだ」
そんなの目覚めなくていいから。とゆーか目覚めないで。
「ほらよ」
「ありがとう」
受け取ったパンツは黒のレース。なんてセクシー。さっきまで履いていたからか、ほんのりと温かい。
「……匂い嗅いでもいいんだぞ」
「しないよ!!」
「どーせ洗濯のときに嗅いでるんだろ?」
「そんなこと!! してないよ……」
「おいコラ語尾が小さくなったぞ今」
「じゃあ行ってくるね!!」
「あ、逃げた」
- ☆ - ☆ - ☆ -
借り物競争も無事にゴール出来た。順位は4位だった。パンツはちゃんとお姉ちゃんに返した。
その後、いろいろな競技があり、お昼休みになった。皆で集まる。
「今日は豪華にしてみたよ」
じゃーんと三段重ねの重箱を取り出す。
「皆の分もあるからめしあがれ~」
「マジで? やったね」
「助かるな」
「さっさと食おうぜ。ハラ減った」
カパッと重箱を開ける。一段目はおにぎり。俵型や三角型のおにぎりが所狭しと並んでいる。
「おにぎりか。具はなんだ?」
「んっと、これが鮭でこっちがおかか、あとは梅とツナマヨと昆布に明太子」
「いろいろ作ったのね」
「いろいろな味が楽しめるほうがいいでしょ」
次は二段目。おかずが入っている。唐揚げに玉子焼きにベーコンの三色巻、煮物や野菜の天ぷらなどなどたくさん。
「おおっ、豪華!!」
「……すごい」
「おいしそうです~」
そして最後の三段目。紫色でプルプルふるえる物体がみっちりと入っている。
「「「「「「ゼリー(です)!?」」」」」」
デザートとして作った。ぶどう味だよ。
「まさかの三段オチだったな」
「意外性があっていいんじゃないか?」
別にオチを狙ったわけじゃないんだけど……
「でもこの人数じゃ少なくないか?」
うぅ~ん。確かに、運動の後だし皆たくさん食べるよねぇ。
「ふふふ、こんなこともあろうかと紗彩も作ってきたです」
じゃーんと紗彩さんは大きな魔法瓶を取り出した。魔法瓶に入る料理ってなに?
「カレーです!!」
「か、カレー?」
「はいです。ナンも焼いてきたので一緒にどうぞ」
「ナン焼いたの? すごいね」
ナンを焼くにはタンドゥールっていう窯が必要なはずなのに。
「別に専用の窯がなくても焼けるです」
へー、そうなんだ。今度試してみようかな?
「美奈はなにか―――っておまえは料理できないか」
「し、失礼ね!! 玉子焼きぐらいできるわよ!!」
「でもあんま出来ないだろ」
「うぐぐ……」
それでもお姉ちゃんより出来てるよ。なんせお姉ちゃんは卵を割ろうとしたら握りつぶすし。
「あ、そうだ。ボクも水筒にデザート入れてきたんだった」
「デザート?」
「……ゼリー……あるのに?」
「おまえホント甘いもの好きだな」
「なに入れてきたです?」
「水筒に入るデザートっつーと……フルーツポンチとかか?」
ふふん、中身はねぇ……
「プリンだよ」
「「「「「「ぎっしり(です)!?」」」」」」
皆の引きつった表情が妙に印象的だった。
その後、大量のプリンは後でスタッフがおいしくいただきました。