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『EMIRI 3』 ~取り敢えず気になるアイツ~  作者: 亨利(ヘンリー)


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8/8

エピローグ

 いつも恵美莉が休憩しているテーブルが空いていた。今日はそこにポーリーと向かい合わせに座った。ポーリーはいつも通りお腹にリュックを抱えていたが、そのままそれを膝の上に載せて座った。

「さっきの日本刀、びっくりしたよ。それ本物?」

「本物デス」

「えええ? どこで買ったの? それヤバイよ」

 ポーリーはリュックのファスナーを開けて、再び脇差を取り出した。全長50センチ程の小型の日本刀の鞘には、赤く立派な装飾が施されており、かなり高価な品のようだった。

「ジョーダンデス。コレハ、オ土産ニ買ッタ、健康グッズナノデス」

「健康グッズ?」

 恵美莉には、それのどこが健康グッズなのか見当もつかない。

「本物ダト思ッタラ、コンナデシタ」

 ポーリーがその立派な脇差しの鞘を抜くと、刀の先端が孫の手になっていた。

「なによそれ? ハハハハハハハ。めっちゃ、おかしいじゃん」

「メッチャオカシイ? オ店ノ一番人気。クールデ便利デス」

「一番人気?(絶対騙されてる)もう、お土産買ってんの?」

「ハイ」

「来週帰国シマス」

「え!? なんで? まだ11月だよ」

「始メカラ、ソノ予定デス」

「そうか、帰っちゃうのかぁ・・・」

「名残惜シイデスガ、致シ方ゴザラヌ」

「でもどうしてそんなに早く?」

「3ヶ月ダケノ短期留学デシタ。モット日本語勉強シタカッタデス」

「それで一所懸命に日本語使ってたのかぁ」

「エミリーハ、トテモ親切デス。沢山日本語教エテモラッタ。アリガトウ」

「ううん、エラそうにしててゴメン。また来る?」

「モウ来ル時間ハ、アマリナイデショウ。仕事ガアリマス。私ニトッテ仕事ハ、取リ敢エズデス」

「・・・? まじめに仕事しなさいよ」

「真面目ニ仕事シテイマス」

「今、取り敢えずって、言ったでしょ。本気じゃないってことよ」

「エ!? ソウデスカ? 取リ敢エズハ、一番大事ナ意味デハナイデスカ?

「まあ、一番っていうのは当たってるけど、よく考えないで適当って意味よ」

『取リ敢エズ、ビール』ト注文スルノハ、一番ニ、ゼッタイ飲ミタイダト思ッテイマシタ」

「あはは、じゃ、さっき刀構えた時、大真面目に『取り敢えず』って言ってたの?」

「法律ヲ守ルハ、大事ノ意味デシタ」

「なーんだ。もう意味不明だったわ。じゃ仕事に燃えてるね。何の仕事してるの?」

 ポーリーは財布から何やらカード取り出した。それを恵美莉に渡すと、

「私ノビジネスカード(名刺)デス。不動産、飛行機ノセールス、ホテル経営、and スーパーマーケットモ シテイマス」

「げ? ど、どんだけ~?」(すごいビジネスマンだったのね!)


「家ハ博物館ニ、ナッテイマス」

「どんなとこ住んでるのよ」

「ケベック州ノ、オ城デス。ドビンズロック城デス」

「お城?」(な、なんてハイソなお家柄!?)

「私ノゴ先祖ハ、イギリスノ、ナイト(騎士)デス」

(貴族ってこと?)

「ダカラ私ハ、日本ノサムライノ精神ガ解リマス」

(それは本当に解ってるか疑問だわ)

「カナダニ来タ時ハ、連絡シテクダサイ。ヘリコプターデ、迎エニ行キマス。デハ、御免!」

 そう言うと、また急ぎ足で去っていった。


(ポーリー・・・。あれ?・・・あれ? オカシイ・・・アイツに惚れたかも) 


 恵美莉は渡された名刺を見た。その隅っこに、あの『土瓶』のハンコが押してある。


「Sir Paul Dobbins(ポール・ドビンズ卿)か」


 そして恵美莉は、リアルゴールドをゴクリと飲んだ。



 おわり

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