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乙女ゲーのヒロインにTS転生したけど、攻略対象どもを無視して最凶の悪役令嬢と学園ダンジョンに挑む。  作者: 真嶋 青


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第1話 TS転生しちゃったらしい

「おっと、お嬢さん。落とし物、ダゼ?」

 

 陽光を浴びて輝く(まばゆ)いブロンドヘア。深いサファイアブルーの瞳は、星空を閉じ込めたような澄んだ輝きを放つ。

 その瞳に見つめられるだけで、心が吸い込まれそうに――()()()()

 

 (なるわけねぇだろ!!)

 

 キラキラした笑顔でハンカチを差し出す金髪男。

 その瞳の奥に、絶対的な自信と、他人への支配欲が透けて見える。

 ()()()()()()()()()()、自己中心的で、他人を振り回すタイプ。


 (この野郎、やっぱ気に食わないわ)

 

「……どうも」

 

 金髪男からひったくるようにハンカチを奪い、汚れを払うように目の前でパンパンと叩く。


「はぇ?」

 

 目を見開いて固まる男を尻目に、()()スカートが(ひるがえ)るのも構わず駆け出した。

 

 

 俺は、日高(ひだか)一二三(ひふみ)。三十路手前のしがないサラリーマンだった。

 理不尽な上司に頭を下げ、無茶な納期に追われる日々。

 唯一の癒やしは、ゲームの時間だった。

 

『兄貴、早く! シャルル様の次のイベントが見たい!』

『あんな俺様野郎のどこがいいんだ? こいつ、俺の上司と話し方が似ててめっちゃ不快なんだけど……最初だけ優しくて、後からオラついてくるところとかそっくりだわ。今戦ってる女の子の方が可愛くて良いだろ。めっちゃ強いし』

『リゼットは主人公の邪魔をする悪役令嬢でしょ!』

 

 乙女ゲーム『プリンス・ヴァイブス』、略して『プリブス』。

 やたら気障(きざ)ったらしいイケメンたちに、()()()()()()()がチヤホヤされる逆ハーレムストーリー。

 攻略対象の男たちに前世の妹は熱を上げていたが、俺には理解不能だった。


 そんなプリブスには、ダンジョン探索をメインとした冒険要素が取り入れられている。

 ゲームが下手でシナリオパートしかプレイできない妹に強請(ねだ)られ、俺は仕方なく冒険パートをプレイするようになった。


 しかし、マニアックなマップ探索に、やけに難易度の高い敵とのバトル、乙女ゲーとは思えないやり込み要素が満載で、いつの間にか俺もプリブスにハマっていた。

 

 (だからって……T()S()()()させるか普通⁉)

 

 しかも、ゲームの主人公、リーナ・フローライトに――。


 自室の鏡に映るのは、銀色の髪を持つ、いかにも庇護(ひご)欲をそそる美少女。

 白を基調とした、西洋の軍服とセーラー服を足して割ったような制服は、ゲームで良く見慣れたものだ。


 転生に気づいた日、俺はいるかもわからない神様を呪った。

 

 だが、俺にはこの『プリブス』における圧倒的なアドバンテージがある。

 ダンジョンのギミック、隠しアイテムの場所、ボスモンスターの弱点。

 その全てが、頭の中に入っている。

 この知識は、俺がこの世界を生き抜くための最強の武器だ。

 

 (正規シナリオ? そんなのガン無視して好き勝手に生きてやらァ!!)



 そんなわけで、()、リーナ・フローライトが、前世の記憶を取り戻したのは、エリシア中央学園に入学した、正にその日だった。

 学園の外観、中央にそびえる時計台を見た瞬間から、「あれ? 初めて来たはずなのに、知ってる気がする?」なんて思っていた。

 

 さらに異変が起こったのは入学式の最中。

 入学生代表を務めたエリシア王国の王子、シャルル・エリシアの演説を聞いた時だ。

 なんだか視界がグワングワンと揺れ、その場に倒れかけた。

 

 それから、私は最悪な体調のまま入学式を乗り切り、やっとの思いで学園の寮へ戻った。

 そして、トドメになったのが、自室の鏡で自分の姿を見た時だ。

 

 その瞬間に、私の、否、俺の…………。


 (っって、めんどくせぇぇ! ちょっと考え事する度に、自分の一人称に困る! ……もう私で良いか)


 とにかく、あの瞬間、私の意識の中に、日高一二三の記憶が(よみがえ)った。

 

 前世と現世で性別が異なるせいで、まだ自分のアイデンティティが揺らいでいる最中であったりする――。

 

 そんな私は、現在、寮の自室で悶絶している途中であった。


「あ~もうっ! 世界の強制力的なものが働いてるのか? ポケットからハンカチが落ちる要素なんて何もなかったのに、アレのせいでシャルルの野郎と関わっちまった!」


 ゲームのシナリオは妹が楽しんでいるのを横目で見ていた程度で、しっかりと把握していないが、今日のイベントの事は覚えている。

 『王子様にハンカチを拾ってもらう』という、ベタ過ぎるシチュエーションが印象に残っていた。


 (正規のシナリオだと、あれをきっかけにシャルルと仲良くなっていくんだったか)


 前世の記憶を取り戻した私に、あの気障すぎる輩と仲良くやっていく自信はない。それは、他の攻略対象にしたって同じだ。

 喋り方がネットリしてるし、女を思い通りにできると思ってそうな態度(偏見)も気に入らない。あと、イケメン過ぎてウザい(私怨)。


「でもなぁ~、私、支援職なんだよなぁ」


 学園の地下には、ダンジョンと呼ばれる巨大な魔窟が存在している。

 生徒たちは学園の卒業までに、ダンジョンを何回層まで踏破できたかによって、その後の進路が大きく変わる。

 10階層なら非戦闘職。20階層なら町の衛兵。30階層なら王城の騎士。

 ざっくりしたイメージだが、そんな感じで卒業後の就職先の選択肢が広がる。

 

 私にとって、ここはもう現実の世界。

 卒業後の選択肢は増やしておきたいものだ。

 

 (でも、支援特化の私だけでダンジョンを進むことは難しいわけで)


「だからって、いけ好かないイケメンどもに姫プされるのなんて嫌だ!」


 そうして、私は、頭を抱える事になるのだった。

 

 だが、私は思い至る。


「――いや、一人だけいる。とんでもないのが」


 とある、最強のキャラクターの存在に……。

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