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【完結】転生三回目、俺はもう幸せだけを追わないことにした「ようやく人生を掴んだ俺の話」  作者: なみゆき


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6/10

 目を覚ました瞬間、まず感じたのは体の軽さだった。

手は小さく、指先は細く、制服の感触は軽やかで、視界に映る天井は低い。

俺はすぐに気づいた。これは――小学生の身体だ。


そして、胸の奥にふわりと広がったのは、喜びだった。

今度は、もっと前からやり直せる。

そんな確信が、体の隅々まで染み渡っていく。


窓から差し込む朝の光が、まるで祝福のようにまぶしくて、俺は思わず目を細めた。

この光の中で始まる新しい人生に、俺は静かに息を吸い込んだ。



「今度こそ、三回目は絶対に間違えない」


幸福ポイントの仕組みは、もう知っている。

幸せを積み重ねることで幸福ポイントを消費してしまい、早く死ぬ。

二度目の人生では、徹底的につらい出来事を避けて通った結果、わずか二十五歳で命を落とした。

一度目よりも十年も早かった。


だから今回は、“バランス”を取る。


成功と失敗、幸福と不幸――その両方を、うまく織り交ぜて生きるんだ。



* **


学校の勉強は、三十五歳まで生きた俺には簡単だった。


だが、目立ちすぎてもいけない。

幸福ポイントを減らさないためには、褒められすぎても、好かれすぎても、危ない。


俺は、成績を平均的に保つよう調整した。

賢くもなく、馬鹿でもない。

教師に褒められすぎず、叱られすぎず。


この“中庸”を保つのが、想像以上に難しかった。


テストの点数を微妙に調整し、発言の頻度も周囲に合わせる。

友人関係も、深すぎず浅すぎず。

常に「普通」であることに神経をすり減らす日々だった。




 * **


中等部に進んだ頃、俺は一つの決断をした。

セリーヌ・ローレンに、もう一度告白する。


一度目の人生では、人気のない中庭でこっそりと。 それが、彼女を困らせた。

今回は、幸福ポイントを減らさないためにも、もっと不幸に、こっぴどく振られなくてはならない。



そのために、皆の前で堂々と告白した。


「セリーヌ・ローレン! 俺は君が好きだ!」



教室がざわめく中、セリーヌは一瞬きょとんとした。

その場の空気が張り詰める。

俺の心臓が、静かに、しかし確かに高鳴っていた。



そして数秒の沈黙のあと―― 彼女は頬を赤らめ、ゆっくりと、微笑みながら頷いた。



結果は、成功。


そんなはずではなかったのに。

そして、胸の奥で幸福ポイントが減る感覚を、俺は確かに感じた。



でも、後悔はない。

この関係を大切にしながら、次の一手を考える。




* **


高等部では、騎士クラスを選んだ。

一度目で失敗した場所だが、今度は違う。

二度目の人生で文官として学んだ知識を思い出し、体の動かし方や訓練法を理論的に見直した。



けれど、心の奥では不安があった。

また怪我をして、道を断たれるのではないか。

その恐怖を払拭するため、俺は徹底的に基礎体力を鍛えた。


走り込み、筋力トレーニング、柔軟性の向上―― 毎朝、誰よりも早く起き、誰よりも長く汗を流した。 自分の限界を少しずつ押し広げるように、黙々と鍛錬を重ねた。


すると、思いがけないことが起きた。

俺の身体が、驚くほど素直に応えてくれたのだ。

動きが軽くなり、剣の扱いも自然と上達していく。

筋肉の動きが意識と一致し、技術が身体に馴染んでいく感覚は、何よりも快感だった。



教官から「君には騎士としての素質がある」と言われたとき、 俺は初めて“才能”というものを実感した。

努力が報われることの喜びと、自分にしかない可能性を感じた瞬間だった。



練習試合では、ジュリアン・ヴァルモンに勝利した。

一度目の人生では、彼とセリーヌが一緒にいるところを見て、心が折れた。

そして戦う前に怪我をしてしまい、俺は、ジュリアンに不戦敗で敗れた。


あのときの悔しさは、今でも胸に残っている。 だが今は違う。

剣を交え、正々堂々と勝利を掴んだ。


セリーヌは誇らしげに笑い、俺を見つめていた。

その笑顔は、まるで俺の努力をすべて肯定してくれるようだった。



ただ――彼女の笑顔を見た瞬間、胸の奥で確かに感じた。

また幸福ポイントが減った。


けれど、嬉しかった。

この瞬間だけは、失ってもいいと思えるほどに。

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