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わたしの初恋相手は姉の元婚約者です。今でも大好きなので、病弱なわたしと思い出作りしてください!  作者: 海空里和
第一章 運命の再会

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 フローレンス前侯爵が生きていたころ、リクスはよくフローレンス邸へ遊びに行っていた。

 前侯爵から魔法を教えてやって欲しいとエリシアに引き合わされ、よく奥にある離れの庭で練習をした。


 エリシアは病弱で部屋にこもりきりらしいが、会うたびに笑顔を向けてくれた。それが可愛らしくて、幼いながらに守ってやりたいと思うようになった。


 リクスは一度だけ前侯爵に連れられ、エリシアと祭典を見に行ったことがある。


 リクスの父と前侯爵が美しい魔法で民衆を歓喜させている様は、幼いリクスの肩にずしりとのしかかった。毎年後継者として関係席で見ていたが、この年はエリシアと観客席で見ていた。そのせいか、観客の期待や喜びがより身近に感じられ、急にプレッシャーに襲われたのだ。


 次期当主としていつか自分があそこに立つのだと思えば、足が震えた。


「すごい……」


 エリシアの呟きにハッとする。はぐれないようにと握りしめていた手からは、ふるふると小刻みに震えが伝わってきた。


 エリシアを見れば、キラキラとした瞳を潤ませ、興奮で頬を紅潮させている。

 金色の瞳が「わたしもやりたい」と言っていた。


 リクスは初めて父の祭典を見たときの感動を思い出して笑った。


 順当にいけばリクスとダリオンがあの祭典を引き継ぐことになる。もしリクスがエリシアと婚約すれば、あの祭典は無理でも、領民に向けて一緒にやることだって可能だ。


「いつか俺たちで一緒にやろう」


 そう告げれば、花のような満面の笑みが返ってきた。

 エリシアは純粋に喜んでいるが、きっと意味はわかっていないだろう。


(でも俺たちなら上手くやっていける。シアは俺が守るんだ)


 幼いながらにリクスは将来の相手を決めた。


「エリシアを選んでくれるのか? リクスになら安心して任せられる」


 前侯爵も喜び、認めてくれた。前侯爵と仲が良かったリクスの父はもちろん、皇帝も賛成した。そうして婚約の手続きを推し進めていた最中、フローレンス前侯爵が病気で他界した。以前から患っていた病が悪化したらしい。それでもフローレンス家が誇る薬のおかげで医師の見立てより長生きしたのだと、リクスは父から聞いた。


 喪が明けて婚約を進めようとするも、爵位を継いだフローレンス侯爵からエリシアの病弱を理由に断られ、急に話がなかったことにされた。

 魔法省の件で仲が拗れると、フローレンス家は祭典も拒否してきた。皇帝が仲裁に入ると、あちらはリクスの婚約者として、姉のアメリアを進めてきた。


 リクスとアメリアの婚約が噂になっていくのと同時に、エリシアが表に出てくることはなくなった。フローレンス家とも疎遠になり、そうこうするうちに、リクスも魔力を失った。


 エリシアのことも記憶の片隅に追いやった。それなのに、彼女は今さら会いに来たと言う。


(なんで今さら! どうして俺の心を乱す!)


「ねえ、リーク! 今の見た?」


 エリシアの声にハッとする。彼女はまだガッツポーズをしていた。嬉しそうにはにかむ笑顔が昔のエリシアと重なる。


「これなら祭典、復活させられるよね?」


 まだ的に当たっただけなのに、楽天的なエリシアに溜息をつく。


「こんな初歩で躓いてるやつが祭典級の魔法を使いこなせるもんか」

「そこは、ほら! 努力するし! わたし、しぶといんだよ!」

「魔力量も少ないんだろう」

「だいじょーぶ!」


 この前向きさと自信はどこからくるのだろうか。


「祭典は二家間の問題で、皇族も関与する話だ。学生の俺たちがどうこうできる問題ではない」


 現実的なことを突き付ければ諦めるかと思えば、エリシアはにかっと笑った。その表情にリクスはたじろいだ。


「だから、学生の私たちだからこそできる文化祭でやるんじゃない」

「は?」


 耳を疑うリクスに、エリシアは意気揚々と語っていく。


「三か月後に学園祭があるでしょ? そこのメインステージの催しでフローレンス・ルミナリエを再現するの!」

「……俺は生徒会役員だぞ。許可するとでも思うのか?」


 ドヤるエリシアの話に水を差すも、彼女の笑顔は崩れない。リクスからは溜息が漏れる。


「魔力を失った俺とは無理だ。諦めろ」

「魔力が戻ればいいの?」

「無理だろ。皇族の魔法でも戻せないんだから」


 リクスが魔力を失ったとき、すぐに皇族であるアーセルが診た。しかし、時を司る皇族の魔法をもってしても、リクスに魔力が戻ることはなかった。マナ自体が失われてしまってはどうにもならないことは実証済だ。


「でも――」

「どうしてその祭典にこだわる?」


 食い下がろうとするエリシアへ口調を強める。


「それは――」


 言い淀む彼女に、答えられないのかと苛立った。でもエリシアはすぐに笑みを作る。


「約束したから?」

「くだらない!」


 何で疑問形なんだと余計に腹が立ち、言い捨てる。


 気づけば、がやがやと訓練場の中心が騒がしくなっていた。それと同時に終業のチャイムが鳴る。どうやら授業は終わりのようだ。


「じゃあな」


 リクスは踵を返すとエリシアの元から離れていった。


「くだらなくないよ! 二人でやれば最強だよ!」


 エリシアが大声で叫んでいる。リクスは振り返らずに訓練場を出ていった。心の中にざわざわする想いを抱えながら。

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