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わたしの初恋相手は姉の元婚約者です。今でも大好きなので、病弱なわたしと思い出作りしてください!  作者: 海空里和
第4章 フローレンスルミナリエ

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「なんてことをしてくれたんだ!」


 バシッとダリオンに頬を叩かれ、エリシアは床に倒れ込んだ。


 今朝、エリシアが寮から出ると、フローレンス家の私兵に囲まれて拉致されてしまった。そのままフローレンスの屋敷に連れて行かれると、兄姉が怖い顔で待ち構えていたのだ。


「まさかあなたが特殊能力持ちだったなんてね。よくも長年騙してくれたわね」


 アメリアが倒れ込んだエリシアの身体を踏みつける。


「学園祭で俺たちの邪魔をしたばかりか、ルミナリエに魔力を取り戻させるなんてな」


 冷ややかに見下ろすダリオンをぼんやりと見上げる。


 リクスに全魔力を渡したからには、こうなることはわかっていた。

 今のエリシアにはマナを枯渇させてまで渡したから、魔力がない。それは、兄姉がエリシアの魔力を吸い取れないことを意味する。

 リクスが魔力を完全に取り戻したという噂は、あっという間に貴族の間で広がった。それがエリシアの愛の力のおかげだというロマンスとセットで広まっているらしいが、兄姉はもちろん信じるわけがない。状況からエリシアの能力がバレるのは予想していた。


「最初に卑怯なことをしたのはあなたたちです」


 リクスの魔力をノクーに奪わせたのだ。エリシアが睨めば、ダリオンから再び平手が飛んできた。


「黙れ! 平民が!」


 強い痛みから目を閉じる。それを見たアメリアが、エリシアを踏んだままクスクスと笑った。


「ほーんと、よくも恥をかかせてくれたわね。ま、もうあんたの顔なんて見ずに済むから、せいせいするわ」

「先ほどお前の退学届けを提出した。俺たちの魔力供給の家畜として大人しくしていれば、卒業だけはできただろうに」


(よく言うわ……)


 ふん、と蔑んで見下ろすダリオンに心の中で抵抗する。

 エリシアを早くに厄介払いしようとしていたのは知っている。だからこそ、学園祭で約束を果たすという名目でリクスに近付き、魔力を渡すのを急いだ。

 まさか気持ちを返してもらえるなんて、夢にも思わなかったけど。


 最初は魔物に襲われたとき。元々フローレンス・ルミナリエをやるために少しの魔力を気づかれないよう渡そうと思っていたのだが、急遽渡した。あのときは愛の力だと誤魔化したが、能力に気づかれなくてホッとしたものだ。

 学園祭の最後に一気に渡す方法を模索していたが、好きだと言ってくれるなら構わないかと思わずキスをしてしまった。最後に思い出が欲しかったのもあるが、あの方法が一番手っ取り早く魔力を渡せるのだ。

 それは喧嘩のキスで気づいたことだった。あのとき、唇を重ねるのが一番魔力を流しやすいと気づいた。原理はわからないが、短時間で一気に渡せる方法に気づいても使えないと思っていた。だから、その方法が取れて良かったと思っている。あれならエリシアの能力にリクスは気づかないだろう。実際、愛の力で押し切れた。


 エリシアは兄姉たちに魔力を根こそぎ吸われないよう、マナに宿る魔力量を抑えて生きてきた。そして今後二度と奪わせないよう、リクスにマナごと渡した。上手くいって良かったとエリシアは思い返す。


「お前にはすぐにノクーへ嫁いでもらう!」

「!」


 予想はしていたものの、現実を突き付けられればショックを受ける。頭でわかっていても気持ちは別だ。エリシアはぐっと唇を結んだ。


「父上が今、あちらと連絡を取っている。準備が整うまでこの部屋にいるんだな」


 そう言い捨てると、立ち上がったダリオンが部屋を出て行く。


「最後の最後にフローレンス家の役に立てて良かったわね」


 エリシアから足をどけると、アメリアも出て行った。


 部屋は施錠され、エリシアは取り残された。この部屋は、ずっとエリシアが閉じ込められていた離れの物置部屋だ。祖父が他界してからは、ここに閉じ込められていた。


 魔法学園に入学できることだけを心待ちに、ずっと耐えてきた。魔力を吸われようが、暴力を受けようが、どんな酷い仕打ちにも、リクスに会えると思えば耐えられた。


 ――リークに会いたい。


 それだけがエリシアの生きる希望だった。


(これから何を希望に生きていけばいいんだろう)


 思い出があれば生きていけると思っていた。しかしエリシアにとってリクスは生きる意味のすべてだった。会ってしまえば毎日顔を見たいと思ってしまう。最初は睨まれても目が合うだけで嬉しかったのに、笑顔が見たいと思ってしまう。そして、そんな彼の傍にこれからもいたいと願ってしまう。

 想いが通じ合った今は、彼との将来を夢に見てしまうのだから。


(思い出があればいいなんて、嘘だ……)


 エリシアの目から熱いものがこぼれ、頬を伝っていく。


(リークに会いたい)


 このまま会えなくなると思えば、心臓が引き裂かれそうな思いだった。

 あんなに目に焼き付けたリクスの姿が見られなくなるなんて、生きていく希望が見いだせない。

 好きだと伝え続けるのが自分から他の子に変わることを考えるだけで嫌だと思う。


(殿下に偉そうに言っておいて、リークと離れる覚悟さえないじゃない……!)


 閉じ込められている間にずっと計画していたことなのに。自分を責めても、リクスと再会してしまったエリシアに欲ばかりが積もっていくのは、仕方のないことだと思う。こんなことは予想外だった。

 そればかりか、また彼を傷付けたかもしれない。せっかく好きだと告げてくれたのに。


「リーク……ごめんねえ……」


 エリシアはリクスを想ってただ泣くことしかできなかった。

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