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わたしの初恋相手は姉の元婚約者です。今でも大好きなので、病弱なわたしと思い出作りしてください!  作者: 海空里和
第一章 運命の再会

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 翌朝、学園に行けば掲示板の前に人だかりができていた。

 何だろうとエリシアが近付けば、人だかりがエリシアを避けるように、綺麗に真っ二つに割れて道ができた。


(どうしたのかしら?)


 相変わらず遠巻きにエリシアを見ているが、フローレンス派の貴族からは悪口が聞こえてこない。


 掲示板に近付き、張り紙を見る。そこにはアーセルによって選出された実行委員の名前が貼りだされていた。もちろん一年生から選出されたのはエリシアだ。


(おお、殿下仕事はやーい)


「どうしてあいつが……」

「腐ってもフローレンス家の娘だからじゃないか」

「殿下にはお考えがあるに違いない」


 ひそひそと憶測が飛んでいるが、エリシアが脅しただけである。しかしそんなことが知れ渡れば、エリシアは学園でさらに孤立する。ぼっちなのは良いとして、リクスとの計画を邪魔されてはかなわない。とりあえずその場からは、逃げるようにして教室へと向かった。


 教室に入れば、またエリシアが視線を集める。そしてひそひそ話が始まる。表立って言って来ないのは、アーセルの決定に異を唱えることと同じになるからだろう。


(うーん、教室にいても同じね)


 いつもなら飛んできそうなフィオナは教室にいないらしい。落ち着かないのでエリシアは教室を出ることにした。確か実行委員に任命されたら、学園祭が終わるまで生徒会役員と行動を共にするはずだ。そう思い、生徒会室へ向かうことにした。




「はあ……リクスが来るまでこの資料をまとめて」


 生徒会室へ行けば、アーセルが嫌な顔をしながらも中に入れてくれた。


 二年から二人、三年から一人の実行委員が選出されており、彼らはすでにアーセルの指示のもと仕事をしていた。ちなみに一年生はエリシア一人だ。


(とりあえずここまでこぎつけられたわ!)


 にこにこと資料作りをしていると、バタバタと生徒会室に向かって来る足音が聞こえて来た。


(あ、リクス?)


 まだここにいないメンバーはリクスだけだ。顔を上げたエリシアは、期待とともに頬を紅潮させる。


「おい! どういうつもりだ!」


 怒鳴りながら生徒会室に駆けこんで来たのは、やはりリクスだった。

 リクスが睨む先はアーセルだ。


「……彼女を学園祭の実行委員に任命した」

「それは見ればわかる。どういうつもりだと聞いているんだ!」


 リクスはかなり怒っているようだ。二人のやり取りを他のメンバーは緊張しながら見守っているが、エリシアだけは笑顔のままだ。その光景が余計に他のメンバーをゾッとさせたようで、空気が凍り付いている。


「私の決定は絶対だ。従ってもらう」

「はあ?」


 表情を変えないアーセルに対して、リクスの眉間の皺がどんどん真ん中へ寄っていく。


「あと、彼女の企画を承認した。担当はエリシア嬢とお前だ」

「はああ!?」

「生徒会の威信にかけて成功させろよ」


 状況をのみこめないリクスにそう言い放つと、アーセルは実行委員全員を連れて生徒会室を出て行ってしまった。

 呆然と立ち尽くすリクスにエリシアが近寄る。


「一緒にがんばろうね、リーク!」

「お前、アーセルに何をした?」


 リクスの冷たい視線を受け流し、エリシアはにこにこと答えた。


「約束を果たしてもらっただけだよ」

「アーセルとも約束を?」

「まあ、おじいさまが、だけど……。あ、今、アーセル殿下とも(、、)って言った?」


 リクスの言葉をエリシアは聞き逃さない。


「やっぱり、わたしとの約束覚えてくれているんだ!」

「言葉のあやだ」


 嬉しくて笑いかければ、視線を逸らされた。


「俺はやらない。実行委員の仕事は裏方や雑務だ。前に出ることじゃない。お前は設営でも手伝え。それが嫌なら委員を辞退するんだな」


 リクスはそう言い捨てると、生徒会室を出て行こうとする。


「わたし、諦めないから!」


 リクスはエリシアに振り向くことなく行ってしまった。エリシア一人だけが生徒会室に取り残される。


 リクスはああ言ったが、皇太子の命令に逆らえるはずがない。リクスはエリシアを手伝わなければいけなくなる。少し強引だったが、エリシアに手段を選んでいる時間はないのだ。


 アーセルにお願いしたことは三つ。


 フローレンス・ルミナリエを実現する手助けをして欲しいことと、遺言の二枚目の内容はアーセル以外には秘密にしてもらうこと。そしてエリシアが脅したことをリクスに言わないこと。


 アーセルは「それだけ?」と拍子抜けした顔をしていたが、それでもまだエリシアがリクスに近付くことを警戒していた。手紙を盾にアーセルを脅したのだから仕方ないが、せめてリクスには悪く思われたくないという乙女心なのに。


「好きなだけって言っているのに、本当貴族ってめんどくさいわね」


 エリシアにあるのは、ただリクスが好きだという想いだけだ。だから彼に会いたくて学園に入学して、約束した祭典を一緒にやりたいと言っている。


 貴族の思惑だとか陰謀だとか、駆け引きみたいなそんなものはないのに。


「……これからもっとめんどくさくなるかもしれないわ。でも誰にも邪魔はさせないんだから!」


 むんっと拳を掲げると、エリシアは自身を鼓舞した。

次話から第二章に入ります!ぜひブックマークをしてお待ちいただけると嬉しいです(^^)!

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