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わたしの初恋相手は姉の元婚約者です。今でも大好きなので、病弱なわたしと思い出作りしてください!  作者: 海空里和
第一章 運命の再会

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 ――やっと会える!


 浮かれて駆け出した足は、久しぶりに走ったせいかもつれてうまく動かない。

 体力もなく、エリシアの足はすぐに止まってしまった。


 魔法学園でこれから同級生になる新入生たちが、遠巻きにエリシアを見ている。まだ入学したての彼らは、エリシアがどちら(、、、)なのか窺っているのだろう。しかしそんな目など気にしている場合ではない。やっとここまで来られたのだから。


 エリシアは背中までの長いラベンダーの髪を後ろに薙ぎ払うと、再び走り出した。


 入学式が終わったばかりで、講堂の出口には新入生たちが波のように押し寄せている。

 生徒たちの間をかきわけ、何とか外に出た。


 入学式には生徒会のメンバーも参加していたはずだ。現生徒会長は第二皇子殿下だ。お姿を一目見られるかと女生徒たちが色めきだっていたのを思い返す。


(今なら追いつくはず!)


 生徒会には彼がいる。


 はやる気持ちと苦しい胸を押さえつけ、中庭を横目に講堂から続いていく道を走っていく。校舎と校舎を繋ぐこの道には、春らしい温かな風が吹き込んでいる。曲がり角に差しかかれば、生徒会メンバーとそれを囲む生徒たちの塊が目に入った。


(いた!)


 背の高い彼は、一際目立つ。

 会うのは六年ぶり。だけどすぐにわかった。

 エリシアは立ち止まり息を整えると、力の限り叫んだ。


「リーク!」


 生徒会メンバーを愛称で呼びつける声に、生徒たちがざわつく。全員驚いた顔でエリシアを振り返った。


「君……新入生だね?」

「はい」


 その中の一人、第二皇子で生徒会長のアーセルがエリシアに優しく微笑み、コツコツとこちらに向かって来る。エリシアも足を進めたが、アーセルを通り過ぎ、すれ違う。アーセルが予期せぬエリシアの動きに驚いて振り返る。エリシアは気にすることなく、まっすぐと目的の人物へと近づいて足を止めた。


「やっと会えた!」


 頬を紅潮させ、息を何とか呑みこむ。ドキドキと緊張が高まり、声が震えた気さえした。

 しかし彼はエリシアが呼びかけるも、目を見開き驚いたまま固まっている。


「約束、果たしに来たの!」


 さらに近くへ行こうすると、その場にいたご令嬢たちが片手を広げてエリシアを止めた。


「なんですの、あなた?」

「いきなり無礼ですわよ! このお方は魔法省長官にしてルミナリエ侯爵のご嫡男、リクス・ルミナリエ様ですわよ!」


 ばばーんと効果音が聞こえてきそうなくらい大げさな紹介をされたが、エリシアには今さらな情報だ。もちろんそんなことは知っている。何年も会っていなかったが、リクスとは幼馴染なのだ。


(リーク、大人っぽくなったわ! 金色の髪も前髪が少し長くなって色っぽい!)


 令嬢たちがバリケードになっているが、背の高いリクスの顔はよく見える。

 切れ長の金色の瞳は驚きで揺れているが、高い鼻梁と薄くてくっきりとした唇が、彼の整った顔をさらに際立たせている。

 

 いまだ固まっているリクスを見つめ、エリシアはうっとりした。


「あの新入生も度胸あるな。ルミナリエ様に声をかけるなんて」

「ヴェイユ伯爵家のフィオナ様ならまだしもな」


 ひそひそと周りの生徒たちから声が聞こえてくる。


 この魔法学園は貴族しかいない。学生だから多少の無礼講は許されるが、もちろん序列は重視されるのだ。


「あなた、お見かけしたことがないですけど、どこのお家の方? あなたみたいな方がやすやすとお声がけして良い方ではないのよ?」


 ずいっと前に出たご令嬢がフィオナと呼ばれた人なのだろう。水色の髪がゆったりと編み上げられ、同じ色の吊り上がった瞳はエリシアを睨んでいる。


 なるほど。同じ新入生でも、家格が釣り合えば話しかけて良いのか。そう思ってエリシアはフィオナの制服に目をやる。彼女の胸に刺繍された国章である星の形は、エリシアと同じ一年生を示す白だ。そして、彼女の家がルミナリエ派(、、、、、、)の筆頭だということを思い出した。

 エリシアを睨んでいたご令嬢たちも、フィオナに対しては一歩下がった態度を示している。


(でも、リークはリークよね。派閥なんて関係ないわ)


 うーんと考えて、にっこりと微笑む。


「リークに声をかけて良いかは、あなたが決めることではないですよね?」

「なんですって!?」


 カッとなったフィオナが目を剥き、アーセルが止めに入ろうとしたそのとき、リクスが一言呟いた。


「こいつ、侯爵令嬢」

「はい?」


 リクスに振り向いたフィオナが笑顔のまま固まる。フィオナだけでなく、その場にいた全員の空気が固まった。


「だからこいつ、フローレンス侯爵家の次女だ」

「えええええええええ!?」


 リクスとアーセル以外の生徒全員が絶叫した。


 驚くのも無理はない。エリシアは病弱が理由で屋敷から出ることのなかった、深窓の令嬢というやつなのだから。


 驚きで口をパクパクさせる生徒たちに、エリシアは綺麗なカーテシーで応じる。


「申し遅れました。わたくし、エリシア・フローレンスと申します」


 そしてぺろっと舌を出してみせたのだった。

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