真実の封印
数日後、リンは古い地震観測データを独自に解析していた。
地熱センサーが拾った異常値に、彼女は思わず目を見開く。
「……マントルが……膨張してる?」
不規則な揺れ。増加するガスの圧力。
これは、ただの地震ではない。地球の“中身”が壊れはじめている。
リンは急いで、ハルトの元へ向かった。
「地球が壊れかけてるの。もう何年ももたない!」
ハルトは重い目で彼女を見た。
「分かってる……だが、今それを言えば、崩壊は早まる。希望を失えば人間は、火より早く死ぬんだ。黙っててくれ」
「それじゃ……みんな、滅びるのを待つだけじゃない!!」
リンは叫んだ。涙が止まらなかった。
「私は、そんなの耐えられない……太陽が見たかった……ただ、それだけなのに……!」
その夜、彼女は施設を飛び出した。
冷えた通路で膝を抱え、声を殺して泣いた。
数日後──リンは光熱病に倒れた。
熱に浮かされ、唇がひび割れ、体温が昇りきったその時、彼女はケイの手を握って微笑んだ。
「ケイさん……この星、きっと、もう戻れない……でも、私……太陽の夢、見たんだよ……」
その言葉を最後に、リンのまぶたが静かに閉じられた。