高三組の高校入学式編
高三組とは現在軸で言うと高校三年生の高野憂と時暮明日華の2人を指す
高野憂Side
桜の散る頃、真新しい制服に身を包んで、既に4年目に突入したスクールバックをしっかり持ち直して“東野学園高等学校 入学式”と書かれた看板が立った校門を通り過ぎようとした。
後ろから来た強い衝撃に耐えられなくて思わず倒れそうになった。しかし言うほど体幹が弱いわけでもないのでなんとか転けずに済んだのだが、人違いだったらどうするのだろうと思いながら注意する為に後ろを振り向くと案の定奴は居た。
「危ないだろ、時暮」
「あっはは〜ごめんね〜知り合い居て嬉しくなっちゃって〜」
この誠意の篭ってない謝罪と言い訳を並べる女は中学時代からの友達であり戦友の時暮明日華
俺と同じで“東野学園中等学校”の卒業生だ。ほんの一ヶ月ほど前の卒業式で大号泣しながら来てくれた恋人に抱きついてた奴だ………かく言う俺も少し泣きながら恋人に抱きついたのは言わないでおこう。
「てか私の呼び方時暮だと葵と判別つかなくない?」
彼女が言う葵とは俺の部活の後輩で彼女の弟である時暮葵の事である。
確かに区別できなかもしれないが、この兄弟が一緒にいることは滅多にないので何か困ることがあるかと言われたら、ない。じゃあ突然なんでこんなことを言い出したんだ?
「高校に入って、気分転換に、内進生は下の名前で呼んだら?ほら、人も増えて困るでしょ?」
「じゃあお前も俺の事を下の名前で呼ぶんだな?」
「それは話が違う」
下の名前で呼ばせて揶揄おうと思ってたこいつはおもちゃを取られた子供のような顔してそう言う。
うちの校舎は校門から少し歩くと校舎よりも先に聖堂が見えてくる。これは何かを祈る所とかそう言ったものではなく、今日みたいな式典などを行う時や外部の方を招いた室内行事の時に使われるのだ。にしてもバカデカいけど
「私いまだに納得行ってないんだよね、制服がブレザーなことに」
「は?なんで?恋人のブレザー着たいって行ってじゃん」
「採寸してみて分かったよ。サイズぴったりだから私は黎ちゃんのブレザー着れないって…」
「あぁ…」
俺らが通う“東野高等学校”はブレザー式の制服なので下にパーカーを着る事はできるほどの余裕はあるが、サイズが同じじゃないと他人のブレザーを着るのは少し難しい感じである。
天西が時暮の物を着ることは出来るのでは?と思ったが身長関連でキレやすい時暮に対してそれは禁句だと思い言葉を飲み込んだ。
内部進学の生徒からすれば使い慣れてしまった聖堂に着き座席表を見て言葉を失った。
なぜしっかり確認しなかったのだろうと思った、俺がそう思った理由は簡単で後ろの席にはニヤついた顔の時暮が座っていたからである。それが何を意味するのか、それはたった一つしかない。同じクラスということだ。
「四年目だね〜私の人生でも指折りなんじゃない?」
「なんだよ、この引き具合ヤバいだろ」
「まぁ流石だよね〜w」
実は半笑いぐらいの笑顔で言うこいつと同じクラスになって四年目になる。
当然だが最初は中学生の入学式だ。聖堂に座っていたら頭に時暮の筆箱が飛んできたのが出会いである。こう思うと最悪な出会いだが実は親しくしてるのは中二の夏休みからだ。まぁそれはおいおい話すとして、もはやここまで来るとなんの縁なんだろうと思う。神様のいたずらにしては凄すぎる。
そして俺は予想していなかった、後二年はこいつと同じクラスで過ごすと言うことに