魚の切り身
魚の種類、わかりません。
食卓のひと皿にのせられた魚の切り身
まるっと尾頭つきの焼き魚とちがって この切り身が
どんなつらを歪めながら
必死で水をかいて泳いでやがったのか
どんなしっぽを巻いて
大波に呑まれまいと逃げ惑っていたのか
その全貌を知ることはできない
思えば あんたとおれのつきあいも
たがいの切り身のひときれずつを
食卓のひと皿にのせて
箸をつけあうような仲だから
一匹の魚としての姿を知らぬまま
口にしたその味わいだけで
あいてのいくらかを知った気分になってるってわけだ
焼き魚のように おたがいを
まるっと尾頭つきで味わうことなど
けっして かなわないとしても
知らないのだという気づきや
知ろうとする努力にまで
なんの価値もないわけではあるまい
とりあえず
こどもの頃にめくって時間をすごしてた
ハードカバーのでっかい図鑑でもひっぱりだして
この切り身はどんな姿をした魚だったのか
それを調べるところからはじめよう
僕にまず 必要だったのは
知らないのだという気づきと
知ろうとする努力だったのだから
ぶりとはまちが、おなじ魚だってずっと知らなかった!




