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Secret Sorcerer  作者: RENTO
第一幕《刻が満ちるヴィンディクタ》
3/22

3話 中級魔導士ヘルメス

 俺達はセリアル魔法学園の1-Bへと戻ってきていた。


「…鋼靭蝿の討伐を確認した。お前達は2位での任務遂行だ、おめでとうと言っておこうか」


 教室に入って、剥ぎ取った鋼靭蝿の皮膚を確認した後、イア先生はそう言った。


「え、2位…!?」


 驚きを露わにするリーシャ。俺も一応、結構早い討伐だったんだなと驚いている。


「ふふ…実に面白いな。周囲から〝無能〟〝落ちこぼれ〟などと生徒達から蔑まれていた者達が、あのカルミアに次いでの2位だ。あいつらはさぞかし悔しがるだろうな」

「あ、あはは…」


 …1位はやはりカルミア(とティア)か。魔法では頭一つ抜けているからか、乃至は運に恵まれていたのか。いずれにせよ、〝1位〟という結果、これがカルミアの実力ということだろう。


「で…そのカルミアは今どちらに?」

「お、何だ?あの女に気があるのか?」

「さあ?…俺はただ居場所が気になっただけですが」

「そうか…あいつは今〝書物庫〟に居るぞ。中々に勤勉だ。自身の才に驕らず、精進し続けている。あれ程の才は稀有(けう)なのだがな、よくあそこまで直向きになれるものだ」

「…分かりました、ありがとうございます」


 そう言って(きびす)を返す俺に、「頑張れよ〜」というイア先生の野次を無視し、俺は〝書物庫〟に向かう。











「…ここが書物庫か」


 書物庫に初めて足を踏み入れた感想としては、〝デカい〟ただそれだけだった。皆はよく見るであろう、大図書館というものだ。


 絶対に届くわけがない、天井にまで届いている本棚には本が隙間無く並んでいる。その本達に囲まれて読書をしている少女が一人。


「あら、レイド。もう任務は終わったのかしら?」

「そりゃこっちの台詞だ…呑気に読書までしてるしな」


 カルミアの方に歩み寄りながら、そんな会話を繰り広げる。


 …流石に、早すぎやしないだろうか。一人で、且つ相当早く終わったであろう、俺とリーシャよりも更に早く終わって、こうして本を読んでいる。


 …これがカルミアの実力、という事だろう。


「ティアが寝ていたお陰で、存分に力を発揮出来たもの。ストレスなく戦えて満足よ」

「…流石だな…あ、そう言えば。一応聞いておきたいんだが…お前って強いのか?」

「え?」


 あまりにも予想外だった質問だったのか、そう素っ頓狂な声を漏らす…そして、数秒の硬直の後。


「ふふっ、あははっ…!貴方っておかしな人ね。まあ強いて言うなら…強い方?一応バッジは〝赤〟だし」

「…赤ってどれくらいだ?」

「あ、あれ?学園長から聞かされてないの?」


 どうやら学園長から聞かされているらしい。もしかしてだが…あの学園長、俺だけ説明を端折ったんじゃないだろうな…?


 まあ学園長は俺を歓迎してないような感じだったからな。そもそも関わりたくないという事だろう。普通にぶん殴りたい。


「ま、まあいいわ…最下級が青、下級が水色、中級が緑、上級が黄色、特級が紫、絶級が赤、天級が銅、帝級が銀、神聖級が金よ。私は赤だから、〝絶級〟の魔導士ってことになるわね」

「へえ…」


 つまりリーシャは水色だったから下級魔導士、ティアは緑だったから中級魔導士か。


 …〝落ちこぼれ〟と呼ばれているリーシャですら、下級か。だったら最下級の俺って、相当弱いんじゃないか…?


「まあ、そんな階級(バッジ)なんてあまり信用しないほうが良いわね」

「…?どういうことだ?」


 意味深な事を言うカルミアに、俺はそう問う。


「貴方は最下級。その貴方が、ここまで早く任務を終わらせられた。恐らく貴方達の順位は2位でしょう?」

「よく分かったな」

「〝魔探(サーチ)〟は常に使うようにしてるの…それで…」


 カルミアは俺へと歩み寄り、そして顔を近づけて、俺に訊ねた。


「…貴方の〝本当の階級〟は、何かしら?」

「…はぁ?」


 言っている意味が理解できなかった。俺の階級…?そんなの、決まってる。


「…俺は最下級──」

「あら、私は〝上辺だけの階級〟を訊いているんじゃないのよ」

「何を言いたいのかがさっぱりなんだが…何だ上辺だけって」


 上辺だけ…表面上は、と、そう言いたいのだろうか。つまり、コイツは俺の階級が御飾りだと。そう言いたいのか…?


 カルミアは俺の周りをぐるぐると徘徊しながら説明する。


「…考えたことない?何もかも容易く出来てしまう人間が居るとする。その人間は他者から妬まれ、やがてそうならないようにする為に辿り着いた答えがあった…それは〝自身を出来ない人間にする〟ということ。そうすれば嫉妬の視線を向けられることなく、平穏な生活が手に入る…まさに今の貴方みたいじゃない」


 今の俺みたい…だと?俺が、自身を取り繕い、〝出来損ない〟を演じてる…そう言いたいのだろうか?


 …全く以て、意味が分からない。


「…分からないな。何故それが俺に適応されるんだ?俺は本当に──」

「だったら、貴方から溢れ出ている魔力にはどう説明をつけるのかしら?」


 またしても俺の言葉を遮ってきた。溢れ出る魔力…?魔力は、誰の中にだって在る。無論、魔力のコントロールが出来る奴も居るが…。俺の魔力操作はそこまでに至ってない。


「貴方の魔力はとても綺麗、洗練されてる証拠。そんな人が〝最下級〟?…私はそうは思わないけど」

「…」


「さあ答えて。貴方の本当の階級は──」


 (ガチャリ)


「レイド君、大変………あ」

「…」

「…」


 突如として書物庫の扉が開かれてリーシャが入ってきたと思えば…この場に居る3人が固まった。理由は単純。俺達は急にリーシャが入ってきて困惑したから、リーシャはもう少し近づけば接吻出来るほどに俺に接近しているカルミアを見たからだ。それを勘違いしたのか、リーシャは赤面し…。


「あ、あわわ……え、っと………じゃ、邪魔したね!どうぞごゆっくり〜!!!」


 リーシャはバタァン!と大きな音を立てて扉を閉め、去っていった。残された俺達は、何とも言えない気まずさに取り残される。


「はぁ…仕方ないわね、今日のところはこのくらいにしてあげるわ。戻りましょう、あの子の誤解を解かないと」

「…それに関しては俺も同感だ。さっさと行くぞ」


 …ちょっとしたハプニングだったが、そのお陰で面倒な尋問に遭わずにすんだな。


 そして、俺達はリーシャの誤解を解くべく、リーシャが戻ったであろう教室に戻るのだった。











「…おい、リーシャ…ん?」


 俺達が教室に戻ってきた時、リーシャが誰かに胸倉を掴まれていた。知らない男だ。


「あ、レイド君、カルミアちゃん…!」

「あ?…お前か〝無能〟」


 …俺の姿を視認するや否や、そう不機嫌そうに言う黒髪黒眼の男。


 …バッジの色は緑…つまり中級か。


「…取り敢えず、リーシャを掴んでいるその手を離してくれ」


 俺はその男に対し、リーシャから離れろ、と。そう言ったのだが…。


「…お前、誰に向かって口利いてんだ?…(なれ)を貫け〝王射(おうしゃ)〟」


 突如として、魔法陣から白く光る矢が放たれる。〝王射〟は第二段階無属性魔法、殺傷性は十二分にある。そんな魔法を放ってきた。


 …しかし、短縮詠唱。完全詠唱と比べて、威力も速度も低くなる…俺の完全詠唱でも、早口で間に合うくらいに、遅い。


「我を愚弄する悪しき敵意と殺意を拒め。我に牙を向けることを禁ずる、〝波障壁(はしょうへき)〟」


 魔力の波で出来た障壁で、その矢を受け流す。その矢は後ろの壁に突き刺さった後、何もなかったかのように消えた。


「っち…」

「…この状況は何だ?なんでこうなってる?」

「はっ…そんなの、お前が一番理解してるだろ?」

「は?」


 俺が一番理解してる…?俺が何をしでかしたのだろうか。心当たりは全くない。


「お前は〝無能〟、こいつは〝落ちこぼれ〟。それのタッグでこの任務を俺より早く攻略だ?…ふざけてるんじゃねえぞ?」


 男はリーシャを掴んでいた手を離し、俺に寄って来る、大きな足音を響かせて。


「俺は簡単な話、鋼靭蝿の外殻を突破するのは困難だと判断した。だから俺とペアになった駒にこっそり自爆魔術の陣を刻んでおいて、鋼靭蝿との距離が縮まったところで起動。それで外殻が脆くなった鋼靭蝿を俺が討伐してやったんだ」


 今さらっと魔導士一人を自爆させた発言をしたな。道理で、俺が知らない顔が目の前のこいつしか居ないわけだ。ペアなので、こいつが帰ってきたならこいつの他にもう一人居ないとおかしいからな。


 …まあ、流石に死んではいないだろう。殺していれば、この世界では大罪となる。魔導士殺しは、御法度だからな。


「…鋼靭蝿の発見も普通より早かった、討伐もそこまで時間はかからなかった、帰りには〝瞬讃(しゅんさん)〟を使った…!」


 〝瞬讃〟…自身が望む場所を想像することで、その場所へ光の速さで移動する第四段階光属性魔法。魔法の段階以上に発動が難しく、多分中級魔導士でも扱える奴は少ないと思うのだが…どうやらこいつは使えるらしい。


「…それなのに何故だ!!!」


 今度は俺の胸倉を掴み、怒号を上げる。目には途轍もない殺意を宿し、俺を射抜く。


「カルミア・ライミールは分かる、そいつは確実に天才だ。1位なんて分かりきっていた…だから俺は2位だと思った…だが、結果は3位…それどころか、2位のお前達に5分以上も差を付けられた………何が言いたいか、分かるよな…?」

「…いや、さっぱり」

「…とぼけるな…お前等、どんな不正をしやがった!!」

「…ふ、不正…?」


 リーシャが首を傾げそう言う。俺達は不正なんてしていない、出来るわけがない。それは少し考えるだけでも分かるはずだ。


「…一応聞いておくが…何故俺達が不正を行ったと睨んでいる?」

「当たり前のことを聞くな…お前等無能コンビが2位攻略はおろか、鋼靭蝿すら討伐出来るわけが無いだろうが…!」

「何故無いと言い切れる?」

「〝無能〟と〝落ちこぼれ〟の分際で、俺より余裕を持って鋼靭蝿を討伐出来るわけねえ…絶対認めねえ」

「あ〜…ちょっと良いかしら?」


 支離滅裂な会話の中、カルミアが横槍を入れてきた。内心少し苛立っているようにも見える。


「な、なんだよ…」

「貴方、恥ずかしくないの?〝負け惜しみ〟なんて」

「ま、負け惜しみ…!?俺はただ、こいつらの不正を…!」

「不正をした証拠は?不正の方法は?内容は?」

「うっ…」

「そもそも、彼らが2位なのは何かおかしいのかしら?単に二人がペアとしての相性が特段良いとか、実は二人は〝無能〟や〝落ちこぼれ〟という蔑称で呼ばれる程弱くないとか…そういうことは考えられないの?」

「っ…」

「それに〝不正〟って何?この任務のルールには〝鋼靭蝿を討伐しろ〟というものしか無い。彼等も私達も、何をしたって不正にはならないわ」

「くっ…!」


 カルミアの有無を言わせない言葉責めにより、男は押し黙る。数秒後、わなわなと震え始め…そして。


「ああ…そうかよ。だったら…」


 男は俺の胸倉を掴むのを止め、俺から少し距離を取る…そして。


「…この、中級魔導士ヘルメス・ハネムーンは…」


 そして、そのヘルメスという男は告げる。


「…〝無能〟、お前に〝決闘〟を申請する!!」

「「「…はぁ?」」」











「…で、結局決闘は受けるの?」

「普通なら即行で断ってるよ…だけど、不正だと言いがかりを付けられるのは少々面倒だからな…一応受けるつもりだ」


 決闘は、学園の制度として、個人が個人に対して決闘を申請し、申請された相手がそれを承諾した場合のみ成立する。


 だから別に断ってもいいのだ…だが、ここで断ったら、「不正がバレることに臆した卑怯者」というレッテルを貼られる。流石に〝無能〟のレッテルを貼られている俺に、新しいレッテルを貼られるのは御免だ。そもそも不正なんて〝ない〟んだけどな。


「しっかし…決闘で勝てるかね〜…」

「だ、大丈夫だよ…!レイド君なら絶対勝てる!」

「どっからその確信が湧くんだ…ったく」

「でも負ける気は無いんでしょう?」

「…まあな。決闘は明日。それまでに準備を終えておくさ…」


 そう言って、俺は教室を去って行った。別に、課題が終わったから、学園に残り続けている理由もないしな。早く帰って休もう…。











 俺は学園校舎の玄関口を通り、門へと歩く。今日だけでかなり濃い一日だった。それこそ暫くは忘れられないだろう。


「…!」


 本当に突然のことだった。俺の視界の端から、雷電の奔流が迫っているのを視認した。詠唱は間に合わない…なら、と。俺は地を蹴って横方向に移動して、その魔法を回避した。


「っ…なんだ?」


 魔法を撃ったであろう方向を見る…そこには。


「チッ…」


 アルスが居た。さっき撃ったであろう魔法の魔法陣が手元に残っていたということは、撃ったのはアルスで間違いない。


 因みにアルスのバッジの色は黄…つまり上級。どうやらかなり早く鋼靭蝿討伐が終わったみたいだな。


 アルスは舌打ちをしてからそのまま去って行った、それ以外は何も発さずに。


「…何なんだ…俺が何かしたのか…?」


 …多分何もしてないよな…?うん。何もしてない、それでいいだろう。


 そう結論付けた俺は、改めて帰路に着くのだった。











 …そして、次の日。その時はやって来た。場所は、学園内に在る闘技場…その控室。


「…ん〜、これでいいか」


 どうやら決闘では、武器は決められた中から指定して選ばないといけないらしい。俺が選んだのはナイフ。リーチは短いが、小回りが利きやすい。


「…よし、行くか」


 準備が出来た俺は、その場所へ向かう。そして控室から、この決闘を観に来た生徒の前に姿を現すと…案の定、嘲笑の嵐。実に下らないな、ここは無視しておこう。


 …と、そうこう考えている内に、俺と向かい合う方向に人影。闘技場から一気に歓声が巻き起こる。


 中には「ヘルメスー!そんな雑魚瞬殺しちまえ!」や「ヘルメス君信じてる!」や「ヘルメス様結婚してー!」など、少々ヤバい奴も居る。


「はっ…これだけのアウェー。お前を応援する奴なんて何人居るんだろうな?」

「…さあな」


 少なくとも俺は聞かないようにしているが、超特大の声量で俺を応援する女性が居るような居ないような…だが、あんな声の奴、会ったことあったか…?まあいいや。


「…それではルールを説明する。この決闘方式…〝一騎打ち〟は、相手を気絶、もしくは重傷を負わせる…あるいは降参と言わせられたら勝利となる。殺害は禁止、使えないと思うが〝錬魔力〟の使用も禁止。また、魔法で武器の類を作るのも禁止だ。説明は以上だ、何か質問は?」

「ないです」

「俺も」

「…よし、それじゃあ始めるぞ。決闘〝一騎打ち〟レイドVSヘルメス・ハネムーン…」


 緊張と静寂に包まれた…その数秒の均衡を破るべく、叫んだ言葉は…。


「──始め!!!」

第3話、どうでしたか?ちょっと楽しくなって、ふざけ気味で書きました。


アルスが別クラスに所属してる為出番が少なく、無理矢理出番をねじ込みました。同じクラスにしとけば良かったと(ほぞ)を噛んでいます。



あ、〝錬魔力〟については、かなり後ストーリー上で解説する予定ですので暫しお待ちを。中盤じゃないと目立って使う人が出ませんのでね。


さて、次はレイドVSヘルメスですね。まあ言うなればここは伏線を張るための前座の前座ですので、愉快な気持ちで見ていってください!それでは次のお話で!

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