1話 セリアルへの入学
ども、RENTOです。本日から、〝小説家になろう〟にて、作品を書くことになりました。蛙鳴蝉噪で拙劣な文章かもしれませんが、読んで頂けると、自分は歓喜します、多分。それでは、お楽しみください。
「…よし、着いたな」
目の前にそびえ立つ巨大な学園の敷地内。俺はそこに立ち、そう呟いた。
セリアル魔法学園。魔法が発達したこの世界で、魔法学園の中でも最高峰の学園。
入学出来るのは、ほんの一握り。所謂〝天才〟や〝秀才〟の魔導士のみが、入ることを許される。そんな学園の前に、俺は立っていた。
「…さて、入学式の時間には…まだ間に合うか」
俺は懐中時計で時刻を確認し、まだ時間に余裕があることを確認した。入学式まで、あと20分と言ったところだった。
「…何もすることが無いし、先に集合場所に集まっておくか…」
俺は集合場所である【魔術の庭】…簡単に云えばグラウンドに行く為に、その魔法を詠唱する。
「風を纏いし波動、その微かなる自然の力で、自由を求む、〝風翔〟」
詠唱を終えると、俺の足は地から離れ、無重力を思わせるかの如くふわふわと浮き上がった。〝風翔〟は第一段階風属性魔法、飛行が可能になる魔法だ。魔術段階 (魔法段階)と属性に関する説明は、敢えて省略させてもらう。後に授業の基本として習うだろうしな。そして、俺は宙に浮いたまま、【魔術の庭】に向かう…。
「よっ、と」
【魔術の庭】に到着した俺は、〝風翔〟を解除して着地する。因みにこの学園、物凄く広い。この庭だけでも、一般的なグラウンドの20倍くらいはある。これも、この学園が最高峰たる所以なのだろう。魔術を扱う訓練は、もしかすると一般的なグラウンドよりも広い範囲に被害を齎すかもしれない。そうなった場合、対処が面倒だ。
だからこれだけの広さを設けている。周囲に配慮した、良い造りと云えるだろう。
「…ん?」
そんなことを考えていると…突然何か肌を刺すような冷たい視線が、俺を射抜く。それも、一つじゃない。十数にも及ぶ、不愉快な視線。
その中に、温かい視線は何一つとして無い。あるのは冷気を帯びた視線のみ。
「はぁ…やっぱりか…」
そう、溜息を吐く。
自分がこの学園に入学したことを周りから納得されていないことは、端から理解していた。だが、初日からこんなだとは…。
恐らく俺は、基本的にこの学園の生徒全員から嫌われる、いや既に嫌われているのだろう…その理由は。
「…おい〝無能〟」
「…」
突如、そんな声が響き渡る。その声は、俺に向けられていた。ということはつまり、俺を〝無能〟と、そう呼んだのだろう。
俺はゆっくりと、声がした方を振り返る。そこには、男が立っていた
その男は青髪で黒眼、体格がやや逞しい。そして…俺はその男を知っている。
「ああ…アルスか」
アルス・マルベーニ。古くからの知り合い、いや友人と言うべきか。向こうはそうは思ってなさそうだが。アルスも、この学園に入学できた選ばれし魔導士だ。
…こうして会うのは、久し振りかもな。
「…お前、なに生意気に呼び捨てしてるんだ?アルス〝さん〟もしくは〝様〟だろ?」
まあただ、俺に対しては少々当たりが強い。
「あ〜はいはい、分かりましたよ〜アルス様〜」
適当に済ませておこうと、そんな雑な返しをした。
「…ふざけてるのか…!〝無能〟風情が!」
アルスが俺の胸倉を思い切り掴む。
…〝無能〟。それが俺の呼ばれ方だ。曰く、〝魔法構築が素人より断然遅い〟、〝どんなものでも全てフルで詠唱しないと魔法が放てない〟、〝魔法の威力が全般的に低い〟。これら3つのことから、知らぬ間にそう呼ばれるようになったらしい。
それを気に入らない奴等が、大勢居るのだ。目の前のアルス然り、周囲の傍観者然り。
「…」
「…チッ、クソ!」
アルスは俺を投げ飛ばし、その場から離れていった。投げ飛ばされて転けた俺は、周囲からの嘲笑を一身に受けながらも立ち上がる。
「結局何が言いたかったんだ…ったく、入学式前に制服汚れたんだが…」
服に付いた土埃を懸命に払う。まあただ、そんな行動だけで完璧に綺麗になるわけじゃない。
「…参ったな…これじゃあとんでもない晒し者になっちまうな…」
と。俺が、そんな愚痴を吐いていると…。
「大丈夫?」
またしても、背後から声。先程と違う点は、今度は女の声であり、俺を心配してくれた点だ。
振り返ると、長い赤髪で青眼、女にしては高身長。そんな奴が立っていた。心配そうに、こちらを見つめている。
「…別に大丈夫だ、これくらい」
心配してくれるのはありがたいが、生憎と視線は痛い。〝無能〟の肩を持つなど、何を考えているのだろうか。
「そう…ちょっとじっとしてて__〝浄化〟」
彼女がそう唱えた瞬間、汚れた制服が、まるでなにも無かったかのように、元に戻っていた。〝|浄化〟は第二段階光属性魔法。その名の通り、浄化を行う魔法だ。大体は、元の状態に戻す魔法だと思ってくれて良い。
…あと、ついでに言うと彼女は無詠唱で魔法を発動していた。無詠唱はそれなりの実力が無いと、第一段階ですら不可能なのだが、目の前の女は、第二段階でそれをあっさりとやってのけた。
「…ふぅ、これで良いかしらね?」
「…まあ、感謝するよ。汚れたまま入学式に出るわけにはいかなかったしな」
流石に〝浄化〟を掛けて貰ったのに、礼の言葉も無しは少々気が引けるので、そう感謝の意を述べた。
「そうね、私としても、貴方をこのまま見過ごすなんて嫌だったしね」
そう言うと彼女は、こちらに向けて手を差し出してきた。
「カルミア・ライミールよ。宜しく」
その挨拶は単純なものであれど、気持ちが伝わる魅力的な挨拶だった。俺は、その差し出された手を握り…。
「…レイドだ。こちらこそ宜しく、カルミア」
「あら、家名は?」
と、家名を名乗らなかった事を指摘するカルミア。そんな彼女に、俺はこう返す。
「さあな。自分で考えてみたらどうだ?」
「む〜…まあいいわ。それじゃあ宜しく、レイド」
意外にも、すんなりと諦めてくれた。深掘りしないタイプか。正直ありがたいかもしれない。
…そして、俺とカルミアが自己紹介を終えた直後。
《__入学式を始めます。生徒の皆さんは、指定された場所へと移動してください》
「あら…もうそんな時間なのね。それじゃあ、また後で」
「ああ…またな」
カルミアと別れ、俺も指定場所へと移動する。
…全員が指定場所と着き、入学式が開始された。
今から、学園長からの言葉があるらしい。
《まずは入学おめでとう。私は学園長のキング・フィバレットだ。さて、君達も知っていると思うが、この、セリアル魔法学園は、数ある学園の中でも最高峰に位置する学園だ。君達はその学園の名声に恥じない才能を持った、選ばれし生徒だ。誇りに思うといい》
学園長の声が、魔法を通じて響く。学園長は言葉を続ける。
《でも、ここから君達は更なる躍進をしなければならない…そこで、この学園の制度として、〝階級〟を設けさせてもらう。階級は〝任務〟の遂行、〝決闘〟の勝利、〝測定〟の値の上昇など、様々な要因で変動する。勿論、階級が高ければ高い程、学園内での地位が高まる。下から順に、最下級、下級、中級、上級、特級、絶級、天級、帝級、神聖級だ。是非とも上の階級を目指してくれたまえ。私も出来る限り、君達をサポートしよう》
それだけ言って、学園長は話を終えた。階級制度…か。やっぱり、どんな世界でも、格差というのは存在するんだろう。社会に出ても、いくつもの階級に分けられているからな。この世界は、完全実力主義。どんな形であれ、勝ったものが正義なのだ。
俺は拳を握り、今一度決意を固めた。
…入学式が終わり、次に俺達が集まった場所は…。
「…学園長室、か」
前には、【学園長室】と書かれた扉。何故学園長室の前に集まっているか。それは、個人の〝階級〟を表すバッジを受け取るためだ。
どうやらこの学園は、自身の階級の象徴となるよう、制服の何処かにバッジを付けるらしい。
階級によって、バッジの色が違ってくるが…今のところ詳細は不明だ。
「次、レイド」
「ん…」
名前を呼ばれた俺はゆっくりと立ち上がり、扉を開ける。
「…来たな」
入学式では遠目からで外見を把握出来なかったが…あと数年で初老を迎えるであろう外見。黒髪に、相手を圧倒する威圧感がある赫眼を持つ学園長、キングはそう言って、懐から何かを取り出す。それは先程言っていたバッジ。青色のバッジだ。
「日常の評価と入学試験の結果から、君の階級を定めた。君は…〝最下級〟だ」
「…」
〝最下級〟、このセリアルの中で一番下の階級。〝無価値な魔導士〟とも云われる、残酷な階級だ。最下級というだけで、魔術の世界から淘汰されること間違いなし。そんな階級に、俺は位置してしまった。
「どうした?何か不満が?」
「…いいえ、特には」
「それじゃあ、次を待たせてるから、早く教室に行ってくれ」
俺に優しくそう言ったキング学園長。だけどその奥に、侮蔑や忌避が乗っている気がしたのは俺の勘違いなのだろうか。
…まあ、この学園は完全なる実力主義。実力無き者には、とことん当たりが強いのだろう。
実際に、実力の有る者と無い者によって態度が一変する魔導士はそう珍しくない…というか、ほぼ全員がそうだろう。
この世界は実力が全て。その本質が核である以上、人間はどうしてもその本質に釣られてしまうものだからな。
「…はい、失礼します」
素直に俺はそう言って、学園長を出る。仕方無いだろう、実力主義なのだから。
…実力の無い者に、人権など無いのだから。
…そして、教室に来た。俺のクラスは1-Bだ。
扉を開ける。既に何人か到着していて、自席に着いているようだ。
「あら、偶然ね。同じクラスだなんて」
ついさっき会った…確かカルミアだったな。そのカルミアが、この教室に居た。
「ああ…そうだな」
何故か少しぎこちない言葉を交わす。別に緊張とかはしてないぞ、多分。
「ほら、貴方の席は私の後ろ。座って」
「ああ、ありがとう。」
俺は席に着き、そこで気付く。なんか、侮蔑の視線と嫉妬の視線が突き刺さってるな〜…。結構痛い。
「…?どうしたの?」
「ああいや…なんでもない」
〝多分お前の所為だぞ〟なんて言えるわけもない。〝最下級〟である青のバッジを付けている俺だが、カルミアの付けているバッジは赤。赤の階級は知らないが、第二段階魔法を無詠唱で発動していたところを見ると、〝特級〟は堅い。この学年でも、最優秀と云えるだろう。
要するに、〝無能と魔導士〟。それも、〝無才と天才〟として比べられているのだ。だから、誰しもが憧れる上位魔導士に、魔法の才が0に等しい者が親しくするというのは、納得がいかないと。そう思う者が殆どなのだ。困ったものだ。
………。
まあ、そんなことはぶっちゃけどうでも良い。他に気になることがあるのだから。それは…。
「…なんでこいつ寝てるんだ…?」
「…スヤァ…」
俺の隣の席で、銀髪の女子生徒がめちゃめちゃ幸せそうな顔で寝ている。見ただけでも、好きな事が〝睡眠〟だということがよく分かるくらい、幸せそうな顔で寝ている。
スヤスヤと寝息を立てながら寝ているその様は、宛ら小動物。可愛いもの好きなら一生見ていられるような光景だ。
…だが、流石にそろそろ教師が来る時間だ。このまま寝させるわけにはいかない、と俺が彼女の身体を揺らすと…。
「んぅにゅ…?」
という声と共に、目を覚ました。そして、周囲をニ、三度見回し、その金色の双眸で俺の方を向いた。
「…んぅ、おはよう、お母さん…」
見事に寝ぼけていた。声が似ている女とかならともかく、見ず知らずの男を〝お母さん〟と呼ぶのは中々だ。
「…いや、もうそろそろ教師が来るだろ。起きといたほうがいいぞ?」
「ふあぁ…ん、仕方ないね、分かったよお母さん」
「いやお母さんじゃないから」
そんなツッコミを入れた数秒後…教室の扉が開いた。
そこから、ロイヤルブラックの髪で翠眼の教師が教室に入ってきた。生徒全員が静かになり、響くのは教師の足音のみ。そして、教師は教卓にバインダーを置いて、口を開いた。
「私は1-B担任のイア・ライシンだ。まず改めて、入学おめでとう。今日からお前達は晴れてこの学園の生徒だ。有意義な学園生活を送ると言い…ただ__」
次には、イアという教師は、何処から取り出したのか。いつの間にか白いチョークを持っていて…。
「〝爆散〟」
そう唱えると同時に、チョークを俺達生徒の方向へと投擲した。そのチョークは弾丸のような速度で、俺達生徒の間を掻い潜っていって…そして。
ドカーーーン!
気が付けば、後ろで爆発音。生徒全員が、恐る恐る後ろを見てみると…後ろの壁がその被害を受けていた。嫌でも、その爆発の威力を痛い程思い知らされた。
だがイアという教師は、まるで何事も無かったかのように、先の言葉の続きを紡ぐ。
「…サボれると思うなよ?…お前達には今から…〝課題〟があるからな…?」
一話、如何でしたでしょうか?都合上、どうしても物語の進行が早くなってしまっているのですが、そこら辺は温かく見守って頂けると幸いです。
それと、〝魔法〟と〝魔術〟の違いなんですが、この物語の世界では違いは特にありません、単なる気分です(厳密には違うらしいけど、この物語の世界は地球じゃないから)。自分がミスして〝魔術段階〟とかを〝魔法段階〟と書き間違えても、物語に支障は出ませんので、そこは目を瞑って欲しいです。
…因みに。この一話だけでも、かなりの伏線を張り巡らせているので、気になる方は是非考察を。ちょっとした違和感を、見つけられるかもしれませんね。
…改めて。自分は、〝小説家になろう〟にて、〝Secret Sorcerer〟を書きます。魔導士達が送る、セリアル魔法学園での生活を、これからどうぞお楽しみに。