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第3話 天啓《スキル》【魔力操作】

 何が起こったのか飲み込めなかった。

 普通、魔力は体内を一方通行的にしか進めない。

 つまり、右手から魔法を放とうとすれば、魔力は右手に進んでゆく。

 それがまさか、左手に、しかも別属性の魔力が放たれることは有り得ない。

 けれど今、それが有り得てしまった。目の前の光景が、それを示している。


「クロエさん、めっちゃ助かった!」


 背後から飛ばされるドロシーさんの声。

 今度は彼女が、私の前に立つ。


「こっちは準備万端だよ」


 ドロシーさんは前に立ってみるとやはり小柄で。

 肩を抱いたら崩れてしまいなくらい華奢だったけれど。

 彼女の背中は不思議と大きく見えて、思わず息を呑む。


「『アイスランス』」


 右手を、身をよじらせるツノ兎に向け、氷の槍を放つ。

 頭を貫かれたツノ兎は、断末魔を残すことなく絶命した。

 ドロシーさんは「ふぅ」と溜息を吐くと、くるりと振り返り微笑んだ。


「いやー、どうなるかと思った。今度は私が助けられたね、クロエさん!」

「い、いや、そもそも私が森に来なかったら、こんなことにもなっていないし……。それにトドメを刺したのはドロシーさんだから、むしろ、ありがとう」

「いーよいーよ! にしても、今の凄かったね! 二属性の魔法を出してたでしょ?」

「うん。私にも何がなんだか……」

「うーん、クロエさんって確か、天啓スキルが分からないんだったよね」


 頷くと、ドロシーさんは指をピンと立てた。


「なら、あれじゃない? 天啓スキル【魔力操作】」

「魔力操作……」


 魔力操作。

 なるほど、聞いたことがある。

 体内の魔力の動きを操ることができる天啓スキルのはずだ。

 確かにそれならば、両手から違う属性の魔法が放たれたことに合点がいく。

 しかしそれは、かなり珍しい部類の天啓スキルだったはずじゃ?

 でももし本当に、それが私の天啓スキルだとしたら──。


「なるほど……?」

「うん。やっぱりそう思う。違う属性の魔法が出るだなんて、それ以外に考えられないし」

「えっ、じゃあそれって、もしかして凄いことなのかな!?」


 突然発覚した私の天啓スキルに、私は嬉々とした声をあげる。


「そりゃ凄いよ! 魔力操作系の天啓は珍しいし!」

「え、そうなんだ。じゃあ……うん、嬉しい」


 ドロシーさんの言葉に、私は目を輝かせる。

 ずっと疑問だった私の天啓スキル。それがまさか【魔力操作】だなんて。

 …………いや、待てよ? 

 だからと言って、どうなのだろう。

 私の魔法適性はFだ。それは変わらない。

 なら、結局意味ないんじゃ?

 ツノ兎に負傷させたのも、あれは運が強かっただけだし……。

 と、そんな私の邪推を遮るように、ドロシーさんはポンと手を鳴らした。


「というか、早く森を抜けないとね。また魔物に襲われかねないし。それに、さっきクロエさんを追いかけるのに必死で、森を囲う柵を壊してきちゃったから。戻って修繕しないと」


 ……ん?


「……えっと。ドロシーさん、今、なんて?」

「え? また魔物に襲われかねないし、って」

「そのちょっとあと!」

「あぁ、だから、柵を壊してきちゃったからって。でも、町の大人に見つからなければ大丈夫じゃない? 第一、柵周りは魔除けの魔法が──」

「ごめん。その、魔除けの魔法は柵自体にかかってた、気がする」


 私が言うと、彼女はニコニコ笑顔のまま、顔をみるみるうちに青くした。

 私たちの間を沈黙が支配し、そして──。


 ──ゴーン! ゴーン!


 警鐘の音が、沈黙を切り裂く。

 距離と音色からして──学園の方からだ。

 もしかして、魔物が学園に侵入した?


「や、やばいよ、これ! 早く戻ろう!」

「う、うん!」

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