後編
自然学習が終わったと思ったら、テスト週間がやってきた。部活はテスト週間のためなくなり、授業が終わるとすぐに家に帰される。
「別府さん、次のテストは赤点を取らないようにせいぜい頑張ることね。」
前回のテストの結果を蒸し返し、別府えにしのことをけなすくそ女に対して、彼女が返した言葉は意外なものだった。とはいえ、オレは彼女の実力を知っているので、驚かなかった。
「はい、頑張ります。福島さんも頑張ってくださいね。私より頭がいいみたいですけど、もし私が今回、あなたより良い点数を取ったりしたら、クラスに示しがつきませんから。」
挑発するような言葉に、くそ女がふっと鼻で笑う。
「そんなこと言って、私をけん制しているつもりでしょうけど、おあいにく様。私はあなたみたいにバカじゃないの。あなたなんかに負けるわけないでしょう。」
どうやら、別府えにしは、赤点の補習テストでの点数をオレ以外に公表していないらしい。オレ以外に知らない、別府えにしの情報を持っていることに優越感が湧く。
「わかりました。では、そこまで自信があるのなら、一つ、賭けでもしませんか。」
オレが優越感に浸っている間に、話はどんどんおかしな方向に進んでいく。別府えにしは、よほどテストに自信があるのか、くそ女にかけの内容をはっきりと伝える。
「もし、私が今回のテストで学年一位を取ったら、こうたろう君と話すのを一切やめてもらえませんか。」
「ずいぶんな自信ね。それで、一位をとれなかったら、どうするつもり。」
「こうたろう君とつき合うのをやめるというのはどうでしょう。」
「自分が何を言っているのか、わかっているのかしら。学年一位なんて、あなたの成績でとれるわけないでしょう。でも、そこまで言うのなら、賭けに乗ってもいいわ。どんな不正をするのか知らないけど、先生に問題を事前に教えてもらおうとでも言うのかしら。」
「おい、ちかげ。その辺にしておけ。えにしは、実は頭がめちゃくちゃい。」
「こうたろう君は、いまだに私とつき合っているのに、福島さんの行動ばかり目で追っています。今もほら、あなたを不利にさせないように、言葉をかけている。」
オレの言葉は、別府えにしに遮られた。オレは、くそ女に彼女の実力を教えようとしただけだ。別に、くそ女が賭けに不利になるから声をかけたのではない。
「だからこそ、今回のテストで白黒つけたい。不正なんてしませんよ。もし不安なら、私や先生を見張ってください。では、私は帰ります。宣言したのに、勉強をしないわけにはいきませんから。」
くそ女とオレを残して、別府えにしは、教室から出ていった。
「おい、そのかけ、今すぐ撤回するように、えにしに伝えろよ。」
「嫌よ。だって、一位なんてとれるわけないわ。この賭けは、私にメリットはあっても、デメリットはないもの。こうたろうが待っていても、私のものになるんだから」
「お前らって、テレビとか漫画とかでよく見る、三角関係そのものだよな。」
「見てて、ドキドキしちゃうね。」
「生で三角関係のドロドロが見れるなんて、すげえラッキー。」
教室にはまだ帰宅していないクラスメイトが数人残っており、皆、オレたちの会話にじっと耳を傾けていたらしい。彼女が出ていった途端に、口々に会話を再開する。
「私が勝つに決まっているでしょう。さっさと野次馬は帰れ。」
「オレもそれには同感だ。人の会話を面白そうに聞いてるんじゃないぞ。とっとと帰ってお前らも勉強しろよ。」
「やっぱり、お前たち二人の方がしっくりくるな。」
「別府さんには申し訳ないけど、あんたたち二人に付け入るスキはなさそうね。」
「まったくその通りだ。」
オレとくそ女が息をそろえて、自分たちに反論するのを聞いて、クラスメイト達は肩をすくめながら、教室を出ていった。残されたのは、オレとくそ女の二人となった。オレは、知らず知らずのうちに、くそ女が賭けに勝つことを口にしていることに気付かなかった。
「こうたろう。別府えにしはやめておいた方がいいわ。」
二人きりになった途端、くそ女は真剣な表情でオレに忠告する、いつだったかに聞いた、男のように低い声で、話を続ける。
「彼女、あんなことを言っていたけど、きっと学年一位を取る算段が付いているんだわ。もともと得体の知れない女だとは思っていたけど。」
そこで彼女はいったん、言葉を止めた。そして、くそ女にしては珍しく弱気な発言をした。
「こうたろうは、本当に別府えにしのことが好きではないのよね。彼女に言われて、しぶしぶつき合っているんでしょう。そうだと言ってよ。じゃないと私。」
「しぶしぶではない。オレも彼女とつき合うことに同意している。双方の意志は同じだ。だからこそ、彼女の賭けにお前が乗ることに反対だ。」
好きとも嫌いともいえぬ言葉を返したオレは、内心で動揺していた。オレの内心の動揺を読み取ったのかわからないが、くそ女はオレの言葉で安心したようだ。
「その顔だと、大丈夫そうだね。じゃあ、私たちも帰りましょう。別府えにしに負けないように勉強しないと。」
「そ、そうだな。」
オレたちはその後、二人で下校した。久しぶりに幼馴染として、たわいもない会話をしながら帰宅した。先日の自然学習の話、今日の授業の話、はたまた天気の話などの話をした。まるで、今までのぎすぎすとした幼馴染の関係が嘘のように、会話が弾んだ。
「それじゃあ、また明日。」
「ああ、また明日。」
お互いの家の前で挨拶をして家の中に入る。
「オレは、本当に彼女のことが好きなのだろうか。」
くそ女のことが、嫌いで嫌いでたまらないはずなのに、今日のオレは、そんな幼馴染と和やかに会話をしながら、二人きりで下校していた。
きっと、別府えにしの存在が、オレにとってもくそ女にとっても、得体の知れないものだと共通の認識を持ったからだろう。そのことに安どして、会話が弾んでしまったのだ。
決して、別府えにしより、くそ女の方が可愛く、心の内がわかって楽だと思ってはいないはずだ。彼女と別れることに期待しているわけでもない。
19
「テストを開始してください。」
別府えにしが「今回のテストで学年一位をとる」と宣言してから、一週間がたった。いよいよ今日からテストが始まる。
オレも別府えにしに影響されて、いつもよりテスト勉強を頑張ったので、今回のテストは今までよりいい順位を狙えると思っていた。先生のテスト開始の合図とともに、最初のテストである数学のテストが始まった。オレたちはいっせいに問題用紙に目を落とし、解答用紙に鉛筆で答えを記入していく。
カリカリと解答用紙に記入する鉛筆の音が教室に響き渡る。こっそりと別府えにしのことをうかがうと、真剣に問題に取り組む姿があった。
「テスト問題について、訂正や質問はありませんか。」
途中で数学の先生が、テストの不備がないかどうか、教室を回ってきた。特に間違いは見つからず、オレたちは、誰も訂正などの指摘をしなかった。クラスの誰も手を挙げなかったので、先生は黙って教室を出ていく。
今回のテストは、オレなりに勉強した方だと思っていたが、勉強がテストに反映されることはなかった。数学では、文章題の問題も多くあった。文章を読んでも、さっぱり計算式が思いつかない。文章問題が苦手なオレはそこで苦戦していた。
何から手を付けていいのかわからないまま、時間だけが過ぎていく。オレはどうしようもなくなって、今度はくそ女の様子をこっそりうかがうことにした。くそ女も頭は悪い方ではないが、良い方でもないので、オレと同様にテストに苦戦しているようだった。
そのことになぜかほっとしているうちに、テスト時間の残りが少ないことに気づく。慌てて、何とか頭の中から絞り出した計算式を当てはめて問題を解いていく。
「解答をやめてください。一番後ろの席の人は、前の人の解答用紙を集めて前に持ってきてください。」
何とか、時間内に最後の問題まで数字を埋めることができたが、それが正解だという自信はない。
一時間目のテストが終わり、二時間目、三時間目とテストは続いていく。テストの出来は、どの教科も似たり寄ったりだった。勉強したと思っていたが、自分の努力と点数は結び付かないらしい。
テストは二日間に分けて行われた。今回は、期末テストとは違い、五教科のテストだった。一日目のテストが終わり、オレたちは、午前中で帰ることになっていた。
「やっと、一日目が終わった。勉強したと思ったのに、できなかったな。」
「そうですか。私はできましたよ。明日もテストは続きます。明日のテストに備えて、テスト勉強をしたいので、私はこれで。」
オレの独り言を拾った別府えにしが言葉をくれた。しかし、オレに興味がないのか、明日のテスト勉強のために、さっさとオレを置いて帰ってしまった。
「本当にオレのことが好きなのだろうか。」
いくらテスト勉強をしないといけないと言っても、彼氏のオレを置いて、さっさと帰るものだろうか
とはいえ、オレも明日のテストに備えて勉強をするため、急いで帰る支度をする。ちらりとくそ女の様子を見るだけ見ると、くそ女もオレと同じように、あまりテストの出来が良くなかったようで、沈んだ表情をしていた。
「おい、ちか。」
声をかける寸前で、オレは言葉を止めた。ここで声をかけて何になるというのか。昨日のくそ女との会話を思い出し、オレはそのまま言葉をかけることなく教室を出た。
二日目のテストの出来もあまりよくなかった。オレの勉強の仕方が悪かったのだろうか。
「解答をやめてください。これで最後の教科ですね。二日間、テストお疲れ様でした。」
最後の教科は国語だった。数学同様、文章を読むのが苦手なオレは、国語でも苦戦した。しかし、国語は解答を書けば、多少の部分点がもらえる可能性があるので、何とか解答欄を埋めて、提出した。
「ええと、連絡になりますが、自然学習でカメラマンさんに撮ってもらった写真が出来上がりました。廊下に張り出しましたので、欲しい人は、今から渡す用紙に番号を記入して、封筒に入れて、先生に提出してください。写真代金も忘れずに封筒に入れてくださいね。」
帰りのHRの連絡で、自然学習の写真が出来上がったという話を担任がしていた。帰りに見ようかと思ったが、テストが終わった当日から、すぐに部活は再開される。久しぶりの部活なので、写真はまた明日の休み時間にでもゆっくり見ようと思った。
20
テストが終わって次の日の休み時間、オレは自然学習で撮られた写真を眺めていた。オレの他にも、数人の生徒が廊下に貼られた写真を眺め、欲しい写真の番号をメモしていた。
写真を番号順にずっと追っていくと、オレたちのグループが映った写真がちらほらと見つかりだした。オレが映っている写真で映りがいいものを何枚かピックアップして、欲しい写真の番号をメモしていく。メモしていくうちに、オレはあることに気が付いた。
「オレとくそ女のツーショットが多くないか。」
自分が映った写真を確認するのが普通だが、オレも同じだった。自分が映っている写真を確認していると、オレが映っている写真には、くそ女が多く映り込んでいた。さらには、オレとくそ女の二人きりで撮られた写真も数枚見つかった。これでは、オレたちがつき合っていると言われてもおかしくない。
「そ、そうだ。えにしの写真はどうだろう。」
現実から目をそらしたくて、オレは、別府えにしが映っている写真を探すことにした。同じグループだったため、彼女が映っている写真は、オレが映っている写真のすぐ近くで見つかった。オレと一緒に映っている写真もあるが、オレとのツーショットの写真は一枚も見当たらない。彼女が映っている写真を探しているうちに、ある写真を見つけた。
「あれ、この写真って……。」
オレはある一枚の写真にくぎ付けになった。
「ああ、この写真だけど、別府さんに頼まれたんだよ。僕が一緒に映るなんておこがましいかとは思ったんだけど、彼女からどうしてもと言われてね。結構きれいに映っているね。僕、この写真買おうかな。」
別府えにしと一緒に写真に映っていた男子が、オレに声をかけてきた。
「えにしがお前に頼み込んだ……。」
「ええと、うん。なんかごめん。付き合っている人の前で、この話はダメだよね。今のなし。僕、この写真買わないよ。だからそんな怖い顔しないで。」
オレの形相に恐れをなしたのか、オレと自然学習で同じグループだった男子は、慌てて違う写真を探し始めた。しかし、オレは彼にこの写真の真相を詳しく問い詰めることにした。
「いったい、どういうことか説明してもらおうか。」
「説明と言っても、そもそも、僕より、彼女に直接聞いた方がいいと思うよ。だって、君たちは付き合っているんでしょう。」
「いや、まずはお前から話を聞いて、それからえにしにはきいてみる。」
男子は、最初は嫌そうにオレへの説明を拒否していたが、オレのしつこさに嫌気がさして、説明してくれることになった。
『中里君と福島さんを見て、この二人の間に割り込むことはやっぱりできないことがわかったわ。自然学習で再確認したの。中里君が私を好きになってくれる見込みがないと思ったの。こうたろう君は、私を見ているようで、実は福島さんのことばかり気にしている。見ていればわかるわ。これ以上は見ていられないし、私も限界。せめて、すっきりとあきらめられるように二人きりにしてあげたい。現実を突きつけられれば、自分の気持ちにあきらめがつく。』
男子が別府えにしの言葉をオレに伝える。
「それから、こうも言っていたよ。」
『二人きりにしてあげるだけでは、私はただのいい人だよね。だから、せめてもの仕返しに、私が男子とツーショットで撮ろうかと思って。こうたろう君がどんな反応するのか楽しむ権利くらい、私にはあるでしょう。』
「そんなことをえにしは言っていたのか。」
「そうだよ。かわいそうだから、僕でいいなら、一緒に映ってあげるよって答えて、この写真を撮ることになった。僕のことを恨むのは違うと思うよ。」
「わかってるよ。」
「それならいいんだけど。」
オレは、その後、とりあえず欲しい写真だけメモして、教室に戻った。いろいろ彼女に問い詰める必要があった。くそ女とのツーショットの写真は、オレが映っているからと、仕方なくメモすることにした。
21
昼休みに、オレは別府えにしに、自然学習の写真について、どういうことか説明してもらうことにした。
「えにし、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「こうたろう君。怖い顔をしてどうしたんですか。」
「自然学習の写真についてなんだけど。」
「写真ですか。ああ、廊下に貼られていましたね。私はまだ、しっかりとは見ていないのですが、何か変な写真でもあったのですか。」
別府えにしは、写真を見ていないと言っていたが、オレが自分に何を聞きたいのか、見当がつかないわけではないだろう。オレと一緒に居たグループの男子が言っていたことが本当だとするならば、あの写真は、故意に撮られたものだ。オレが気にしないわけがないことを彼女は当然わかっているはずだ。
オレの顔が相当怖かったのだろう。別府えにしは、怖いと言いながらも、オレに一つの答えをくれた。
「その顔だと、あの写真を見つけたみたいですね。それで、どういうことか説明して欲しいというところでしょうか。」
「わかっているなら、どうして、そんな写真を。」
「なになに、写真がどうしたの。こうたろうの不細工な写真でもみつかったの。」
「それでこんなにぎすぎすした雰囲気にはならないだろ。もしや、浮気写真でも見つかったか。」
「こうたろう、だから言ったでしょ。この女はやめておいた方がいいって。」
オレと別府えにしが話しているところに、クラスメイトが口をはさんできた。その中には、くそ女の姿もあった。
「おや、皆さんも、自然学習で撮られた写真が気になるのですか。こうたろう君が気になっている写真の番号は、確か『E155』だった気がします。」
自分の周りにクラスメイトが集まってきたことに、別府えにしは驚きながらも、あっさりと、オレが説明を求めていた写真の存在について、知っていると暴露した。やはり、見ていないというのは嘘で、しっかりと確認していたようだ。
「Eってことは、結構後ろの方の写真だよな。あの辺りで変な写真は……。」
「あれじゃないか。ほら、別府さんと、あいつが映ってる、ツーショットの奴。」
「なるほど、確かに付き合ってるやつが他の男子とツーショットっていうのは、説明を求めたくなるな。」
「もし、こうたろう君がその写真についての説明を求めているのなら、映っている男子に聞いた方がいいですよ。彼に伝えていたことが本当です。賭けについてもそうですけど、こうたろう君は、いつまでも私を見てくれようとはしない。それに。」
別府えにしは、その後の言葉をオレの耳もとでささやいた。他のクラスメイトには聞かれたくなかったのだろう。ささやかれた内容に、オレは一瞬、思考が停止した。
『私、もうすぐ引っ越しするの。転校するってことね。その手土産に、あなたたちの絶望した顔が見たい。それくらいの権利、私にはあるよね。」
「ひっこ。」
「それに、そんなことが続いたので、私のこうたろう君への愛は、結局、幼馴染の愛のパワーには勝てなかったと思ったのです。」
オレにささやいた言葉を無かったことにして、言葉の続きをクラスメイトに聞こえるように話し出す。それを聞いたクラスメイトは、大いに盛り上がりを見せる。
「おおお、別府さん、なんて健気なんだ。こうたろうには、やっぱりもったいないな。さっさと別れた方がいいぞ。」
「幼馴染パワーか。私もそれ、同意かも。どうにも、二人には、二人の世界があるからね。」
「別府さん、それでも私は、あなたを応援したいわ。」
「あんたとこうたろうの仲は、テストで判明する。それまでは、保留にしてあげてもいいわ。」
クラスにくそ女の声が響き渡る。別府えにしも、その言葉に異論はないようで、頷きながら、同意する。
「そうでした。テストの結果次第ですね。私とこうたろう君の関係が変わるのか、そのままなのか。結果が楽しみです。」
「ふん。」
「キーンコーン、カーンコーン。」
話は終わりとばかりに、昼休み終わりのチャイムが鳴った。オレたちはしぶしぶ席に着いて、次の授業の準備を始めた。
22
「じゃあ、テストを返していくぞ。そうだ、今回のテストだが、満点を取った生徒がいる。個人情報だから、誰かとまでは言わないが、おめでとう。」
最初に返ってきたテストは、国語だった。国語の教科担は、定年間近と噂される男性教師だった。名簿順に名前が呼ばれ、呼ばれたクラスメイトが返事をして、先生の元に歩いていく。
「中里。」
オレの名前が呼ばれ、返事をして、席を立つ。先生から答案を受け取る際、特に悪い点数でも良い点数でもなかったのか、先生からコメントはなかった。点数を確認すると、前回のテストよりも点数は上がっていたが、満点ではないし、大して良い点数でもなかった。
「福島。」
「ハイ。」
くそ女の番が来た。くそ女は、外面用のかわいい声で返事をして席を立つ。先生の元にたどりついて答案をもらうと、すぐに自分の席に戻る。答案をもらう際に、先生にこっそりと言葉をかけられていた。オレは、たまたま席替えの際に、一番前の席になってしまったため、その言葉を聞いてしまった。
「福島、今回のテスト、調子でも悪かったのか。今までになく、悪い点数だったぞ。まあ、赤点ほどでもないから、次のテストは頑張れよ。」
「あははは。私にだって、調子の悪い日はありますよ。」
笑いながらも、目は笑っておらず、くそ女はごまかしていた。
「別府。」
いよいよ、別府えにしの答案が返ってくる番となった。彼女も他のクラスメイト同様に返事をして、答案をもらいに先生の元に歩いていく。
「よく頑張ったな。」
先生は一言、彼女に言葉をかけた。彼女は少しだけ嬉しそうに微笑むが、すぐに無表情になり、ありがとうございますと、お礼を述べて、席に戻っていく。
「これで、全員の答案が返せたようだな。今回のテストは、教科書の題材も難しかったが、みな、よく頑張っていたおかげで、平均点は結構良かったぞ。」
先生が今回のテストの総評をした。そして、テストの点数に不備がないかの確認を始めた。数人が先生に点数間違いを指摘して、点数を訂正してもらっていた。オレもくそ女も、別府えにしも、答案に不備はなかった。
それからも、続々とテストが返却された。別府えにしは、宣言通り、本気で学年一位を狙っていたようで、他の教科の先生にも、頑張ったなと褒められていた。
英語では、スペルミスがなければなあと、先生に苦笑されながらも、先生の嬉しそうな顔を見れば、点数が満点に近かったことが伺えた。社会でも、漢字のミスがなければ、まったく、しっかりと漢字は覚えておけよと言われていた。こちらも、先生は嬉しそうな表情を浮かべていた。理科でも同じように、しっかりと見直せば、満点も夢じゃないぞとのコメントを先生からもらっていた。
全教科が返却されたのは、テストが終わった次の週の火曜日だった。最後に返されたのは、オレが一番苦戦した数学のテストだった。
「ええ、今回のテストは、文章題が多かったみたいで、皆さん、苦戦したみたいですね。ですが、その中でも、しっかりとテスト勉強をしてくれた人もいたみたいで、先生はうれしいです。」
先生は、ちらりと別府えにしの方を見た気がした。数学でも、彼女は良い点数をはじき出したようだ。
他の教科と同じように名簿順に、クラスメイトの名前が呼ばれ、次々と答案が返されていく。
オレの名前が呼ばれて、答案を取りにいくと、先生から厳しい言葉をもらった。
「中里君。もし、次のテストでもこの点数だと、進学希望の高校、危ないかもしれませんよ。」
テストを受けたときにも、やばいなと思っていたが、点数はかなりひどかった。
「次は頑張ります。」
テストの点数を改めて自分の席で確認すると、確かになかなかにやばい点数だった。オレが自分の点数にショックを受けているうちに、彼女たちのテストは返されたようだ。
「こ、これは。で、でも今回は、難しかったから、平均点も低いし、まあ、こんなものでしょ。」
「良かった。これなら、何とか一位をとれそうです。」
くそ女と別府えにしのテストの点数に対する反応は正反対だった。くそ女はオレと同様に、かなりやばい点数だったようで、慌てて皆に点数が悪かったことを言い訳していた。それに対して、別府えにしは、ほうっと安堵のため息を吐いていた。
すべてのテスト結果が返ってきて、クラスは今回のテスト結果に湧いていた。
「今回のテスト、結構難しかったよな。」
「まったく、本当に、難しかった。」
「来年受験だと考えると、もっと勉強しなくちゃなと思うよね。」
自分たちのテスト結果に盛り上がるが、中学校のテストと言ったら、テストの順位も気になるところだ。
「それで、今回は、誰が一位になると思う。」
「そりゃ、隣のクラスのあいつだろ。あいつ、塾に通っているらしくて、そこでも、結構いい順位らしいぞ。」
「いやいや、うちのクラスにも、一位を取るって、意気込んでるやつがいるだろ。」
「別府さんのことか。いやいや、さすがにそれはないでしょ。」
盛り上がっていたテストの結果発表によって、オレの人生が大きく変わることになるとは、この時は、思ってもみなかった。
23
「これから、テストの合計点数と順位が書かれた紙を配りますから、名前を呼ばれたら取りに来てください。」
運命の日がやってきた。帰りのHRで、担任がクラスメイトの名前を呼んで、テスト結果が書かれた紙を渡していく。
「やった!オレの順位、前より10上がってる。」
「それって、上がったって言えるほどかよ。いや、オレは逆に20下がったわ。」
「よかった。半分よりも上だ。」
テスト結果を見たクラスメイトたちが、渡された結果を元に盛り上がっている。いよいよオレの番がやってきた。
「中里君。他の先生にも言われたと思いますけど、あまりよくないみたいですね。もうすぐ三年生になりますから、気を引き締めて勉強をしてください。」
担任からもらった紙を見てみると、先生に言われるまでもなく、今までで一番悪い成績だった。数学に限らず、どの教科でも、前回のテストより大幅に順位が下がっていた。
「福島さん。あなたにしては珍しい。中里君と言い、どうしたんですか。」
くそ女も、相当に前回から順位を落としているようだ。担任の言葉に、くそ女は軽く答える。
「他の先生にも言われましたが、今回、調子が悪かったんですう。次は頑張るから、問題ありません。」
「まあ、本人が言うなら、そうなのかもしれないですね。次に期待しましょう。」
そして、別府えにしの番がやってきた。担任が名前を呼び、別府えにしにテスト結果が書かれた紙を渡した。
「ずいぶんと今回点数が良かったみたいだけど、これはどういうことかな。」
他の先生たちの反応とは違い、担任は彼女のテスト結果に不満そうだった。彼女の実力を疑っているのだろうか。
「どういうこともありません。これが本来の私の実力です。別に不正をしているわけでもないし、先生方に媚を売っているわけでもないですよ。」
テストの順位が書かれた紙を担任から奪うようにもらい、別府えにしは内容を確認する。そして、担任に満面の笑みを浮かべた。
「先生、私、今回すごい勉強を頑張ったんです。ほめてくれてもいいでしょう。」
先ほどの言葉とは打って変わり、中学生らしい、子供らしいおねだりをする別府えにしに、担任は困惑しつつも、感情のこもらない賞賛の言葉を述べた。
「オメデトウ。これからの別府さんの勉強にも期待していますよ。」
「ありがとうございます。」
テスト結果が返され、別府えにしとの賭けがどうなったか、オレとくそ女、別府えにしの三人は、放課後少しだけ、部活に遅れる旨を伝え、話し合うことにした。
「それで、顔が緩んでいたけど、順位はどうだったのよ。」
その日の放課後、オレたち三人は、クラスとして使われていない、教科準備室に集まっていた。集まると同時に、くそ女がすぐに別府えにしに言葉を投げつける。
「まあまあ、早く部活に行きたいのはわかりますけど、そんなにすぐに本題に入ることはないでしょう。」
結論を急ぐくそ女とは対照的に、別府えにしは余裕を持った態度を取り、それはオレに彼女への不信感をあらわにした。
「えにし、もったいぶってないで、さっさと言ってくれないか。オレもさっさと部活に行きたいんだ。」
「あら、こうたろう君までそんなことを言うのですか。ふうん、わかりました。ですが、最初に、私から、大切なことを言わなくてはいけません。まだ、先生方にも話していない、とても大切なことです。」
オレたちの気持ちを理解したのか、彼女はすぐに本題に入ることにしたようだが、その前に何か言いたいことがあるらしい。すうっと息を吸い、一息に言葉を吐きだした。
「私、二学期いっぱいで転校することになりました。」
『えっ。』
彼女の言葉はそれほど大きくなかったのに、オレには体育館に響き渡るほどの大声に聞こえた。彼女は、以前から、自分の家は引っ越しが多いと口にしていたが、本当に引っ越すとは思ってもみなかった。彼女が転校してきて、まだ一年もたっていないのだ。
言葉の意味を理解する前に、驚きで思わず声が出てしまった。それは、くそ女も同じだったようで、オレとくそ女の声がかぶってしまった。
「ふふふ、驚き方もそっくりで、仲がいいことこの上ないですね。それで、引っ越しするのは決定事項なのですが、その前に、私はこの学校に置き土産でも残していこうかなと思いまして。まあ、小学生のあの時から、転校する際には必ず行っている、もはや私の中の年中行事と言いますか。」
オレたちの驚く姿を笑いながらも、別府えにしは話を続ける。
「年中行事と言っても、結構この作業は頭を使うんですよ。ですが、達成した時のあの何とも言えない感覚は病みつきになります。それで、私は今回も念入りに下調べをして、挑んだわけです。」
「い、いきなり、何を言い出すのかしら。私たちは早く、部活に。」
「だから、そう急がずに、まあ、落ち着いて話す時間がないのは確かですね。では、手短に話しましょう。ええと、なんでしたっけ。」
「まずは、今回のテストの結果だろう。えにし、結果はどうだったんだよ。」
グダグダと、オレたちをあおるかのように、首をかしげている彼女の様子にいら立ち、今度はオレの方からテスト結果を尋ねた。それを聞いた彼女は、たったいま、その話題について思い出したかのように手を鳴らして、たいそう驚いた表情で、話しだした。
「テスト、テスト。そう、テスト結果が今回の置き土産に関係しているのでした。やはり、学生の本分と言えば勉強。勉強と言えば、当然テストがあります。テストというのは、結果が目に見えてわかるので、私は好きなんですよ。」
「長話はいいから、早く結果を。」
「もちろん、一位でしたよ。」
オレの催促の言葉にかぶせるように、別府えにしがテスト結果をようやく公表した。重ねられた言葉に、オレは驚くことはなかった。彼女の実力なら、一位も可能だろうと思っていた。
「い、一位って、あ、ありえないわ。だって、あんた、一学期のテスト。」
信じられないと言った表情で、くそ女が別府えにしに詰め寄って問い詰める。
「こんな状況で嘘を言う必要はないでしょう。全教科満点を取ろうと勉強はしましたが、二年生になってくると、内容が難しくなってきますね。とはいえ、今回のテストでは、私のミスが原因で点数を落としていたのが大半でしたけど。」
「そんなに頭がいいのなら、どうして、赤点なんか。」
「だから最初に言ったでしょ。私は転校するたびに、置き土産を置いていくと。そのためには、テストの点数を操作する必要がありました。いい機会だから、今回の計画を話しましょうか。本来の計画とは少々違いますが、これはこれで面白い結末になりそうです。」
それから語られたことは、オレの想像を超えるものだった。
24
別府えにしが転校した。彼女は、二学期いっぱいでオレたちの学校からいなくなった。賭けは、別府えにしの勝ちだった。彼女の言う通りに、オレはくそ女と一切口を利くことが許されなくなった。
くそ女は当然、賭けの結果を不服として、別府えにしに猛反発した。しかし、賭けの内容はくそ女も認めていた。くそ女が反発したところで、彼女に勝てるわけがない。結局、彼女が転校するまでの間、オレと一切口を利かないということになった。
中学校は、いろいろな行事も多い。テストが終わり、その後は体育祭に文化祭などが行われたが、オレはどの行事も楽しいと思えなかった。転校するまでの間、彼女がオレにずっと付きまとってきたのが原因だ。彼女の本性を知ってしまったため、彼女の言動が必ずしも、彼女の気持ちと一致しないとわかってしまった。
「どうせ転校するなら、オレと別れても問題ないだろう。どうして、いまだにオレに固執しているんだ。オレたちでもう、充分遊んで満足だろ。」
文化祭で一緒に他の学年や他のクラスの出し物を見て回っていた時に、オレは疑問に思って彼女に質問した。
「ううん。答えに悩む質問ですね。しいて言うなら、あなたではなく、彼女の反応が面白いから、でしょうか。」
別府えにしが指さした方向に、くそ女の姿があった。くそ女は、オレたちから見えないと思っているようだが、ばっちりオレたちから姿が見えていた。
「そうか。」
彼女がオレにいまだに付きまとっている理由は理解した。確かに、くそ女がオレたちをストーカーみたいに追いかけていることが面白いと言えなくもない。
「あまりショックを受けていないみたいで、つまらないですね。」
「いや、オレも相当お前にやられているよ。何がどうとは言わないが。」
オレは、彼女にこれからの人生で致命的な傷を負ってしまった。彼女に詳しくは言わないが、これが克服されるのは相当時間がかかるだろう。
「もう少しの間、私につき合ってくださいね。」
「あ、ああ。」
別府えにしがくそ女に見えるように、オレに腕を絡ませてきた。オレは冷や汗が出て、呼吸が荒くなるのを押さえつつ、ゆっくりと彼女の腕を振り払う。言葉が震えないように気を付ける。彼女に触れられた箇所には鳥肌が立っていた。
「そ、そういう接触はやめてくれ。他の奴らも見ていて、は、はずかしい。」
オレの言葉に彼女は素直に従った。彼女はオレに絡ませていた腕を外し、じっとオレの様子を観察してくる。
「なかなか重症みたいですね。よかった。」
オレのトラウマに気付いてしまったのか。彼女はにっこりと満面の笑みを浮かべていた。
オレは、彼女の数々の仕打ちに、女性を信じられなくなってしまった。そして、女性からの接触に恐怖を覚えるようになった。クラスメイトの女子だけでなく、親や先生、とにかく女性と手が触れ合ったり、肩が触れ合ったりすると、呼吸が乱れ、冷や汗が出る。触られた箇所には鳥肌が立ってしまう。
女性恐怖症になってしまったオレを彼女に見抜かれてしまった。
彼女は、彼女自身の言葉通り、大きな置き土産を残していった。それは、彼女が転校初日に見せた、ある人種に対する仕打ちのことだった。
「このクラスで、幼馴染同士の人はいるのかしら。」
彼女は転校してすぐに、オレたちのような幼馴染を探していた。それは、ここまでの伏線だったのだ。初日からすでに調査を開始して、どうやってオレたちの関係を壊してやろうかと画策していた。最初のテストの赤点も、その後の夏休みでのやり取りも、自然学習のグループ決めも、自然学習での行動も。すべては彼女の計画通りだったのだ。
そして、別府えにしがこの学校で受ける最後のテストで、計画が完遂する予定だったらしい。あの日の放課後、彼女の置き土産と、それに関する行動を知ったオレたち。本来なら、自分の行動を話すつもりはなかったらしいが、オレたちの驚く顔が面白かったのか、興奮気味に自分の今までの行動を語り始めた。
「私のこれまでの行いは以上かな。それで、私、中里君に言っておきたいことがあるんだ。」
すべてを話し終えた別府えにしが最後に、オレに近寄ってきた。くそ女は彼女の衝撃的な話を聞いて、ショックで放心状態となり、彼女の行動を止めることはしなかった。
「私ね、自分より頭の悪い人とは付き合えないの。」
「つき合っている人がいるのに、幼馴染との縁の方を大事にする奴なんて、嫌い。口では幼馴染が嫌いと言っていても、全然、説得力ないから。」
「私は転校するけど、これからも末永く、そこのバカ幼馴染とバカ同士、仲良くしたらいいわ。まあ、転校するまでは、中里君は私のものだけど。」
オレたちを馬鹿呼ばわりして、控室から出ていった彼女の顔は、今まで見たどの顔よりも生き生きと輝いて見えた。
25
「こうたろう、お前、転校するって本当か。」
「別府さんに続いて、お前も転校するとか、クラスが一気にさびしくなるなあ。」
「こうたろうまでいなくなるなんて、想像してなかったわ。」
オレの周りには、クラスメイトが集まっていた。オレは、彼女が転校してから、自分自身の今までの行動を振り返っていた。今までずっと、幼馴染のことばかり悪いように言っていた。さらには、縁が切りたいとまで思っていた。それなのに、自分では何も行動を起こしていなかった。
そこのことに唐突に気付かされた。彼女が転校してこなかったら、ずっと気付くことはなかっただろう。そう思ったら、すぐにオレの取るべき行動は見つかった。
「転校するのは、本当だよ。オレも、自分の身の振り方を考えるときが来たんだなと思って。」
「よくわからんが、まあ、次の学校でも頑張れよ。」
「こんな時に、ちかげの奴はどうしたんだろうな。」
「こうたろうが転校するって聞いて、ショックで引きこもっているのかも。」
オレの言葉に首をかしげている奴や、くそ女を気にしている奴を横目に、オレは次の授業の準備を始めた。くそ女は、別府えにしが転校してから、急に学校に来なくなってしまった。なぜなのか理由はわからないが、オレは気にしないようにした。転校した彼女に何か言われて、それがトラウマとなって、学校に通えなくなっているのかもしれない。
オレは、両親に転校したいと訴えることにした。最初は反対されたが、オレの必死な願いに両親は応えてくれた。
「こうたろうがそこまで言うのなら、仕方ないわね。このまま、この学校で隣のくそ女と過ごすなら、いっそのこと、離れてみるのもいいかもしれないわ。」
「オレは反対だな。とはいえ、隣の娘さんに、ずっとべったりくっつかれるのもよくないなとは思っていたんだ。ちょうどいい機会か。」
両親はオレの転校を許してくれた。オレは、息子に理解ある両親で良かったと感謝した。オレの家は、両親が購入したマイホームで、家族全員で新しい土地の引っ越すことはできない。だから、オレは隣の県に住む、母方の祖父母の家に住むことになった。
「中里幸太郎です。よろしくお願いします。」
中学校三年生の四月、オレは祖父母の家から新たな転校先の中学校に通うことになった。自己紹介で教室の前に立つと、彼女が見ていた風景を自分でも体験することができた。教室を見渡すと、転校生のオレが珍しいのか、じっとオレに視線をよこすクラスメイトが多くいた。
「ねえねえ、前の学校とうちの学校、どう違う。」
「部活はどうするの。前は何をしていたの。」
「中学三年で転校とか、大変だったね。」
自己紹介が終わると、休み時間に、クラスメイトがオレの周りに集まってきた。オレは、その中にある人種がいないか探すことにした。
「いきなりそんなにたくさんの質問には答えられないよ。それより、オレから一つ質問してもいいか。」
「このクラスで、幼馴染同士の人はいるか。」
「変なこと聞くねえ。こいつと、あそこで本を読んでいるやつが、幼稚園からの幼馴染だぞ。」
「そんなこと聞いて、何が面白いの。」
「いや、ただ、幼馴染っていろいろ大変だろうなと思って。」
オレは転校したら、あることをしようと決意していた。
「幼馴染同士で困っている人を助けてやろう。」
別府えにしは、オレたちの関係を壊して楽しんでいたが、オレは彼女に感謝の気持ちの方が大きかった。彼女のせいで、オレは今でも女性恐怖症で、満足に女性と触れ合うことはできない。
しかし、彼女のおかげで、オレは、くそ女との縁を切れた。今でも、当時の自分のくそ女への執着を思い出すと反吐が出る。いまだにくそ女のことを思い出すと、怒りが湧いてくるし、なぜかくそ女のことを思い出す。
それを忘れるためにも、オレは、オレと同じ気持ちの奴らを助けるのだ。別府えにしと同じ方法を使って。




