朝三暮四
大臣室では、集まった面々。上げられた深刻な数字に、苦虫をより一層色濃くした大臣、以下。先送りした問題の、先延ばしにしてきた対策は、ツケを払うよりないのだが。
「何とかできそうかね」
なりそうかね、とは聞かないものの、幾分頬をほぐしつつ、立案された内容の確認を取る大臣。一方、役人は恐縮した面持ちを変えることなく。
「高齢化社会と申しましても長寿の時代でもありますし、まだまだお元気な方も多く、その力を活用すべきと考えられ…」
大臣に限らない。国中、至るところ高齢化は顕在化していた。高齢者割合の増加は子供の減少も相まって、今までの社会保障は継続可能なのか。いや、社会活動全体も持続可能なのか。難題は突然降りかかってきた訳ではなく、半世紀前から予想、指摘され。だが、悪いのだが、政府は何かにつけ意識の矛先、目先を変え、品を変え、やり過ごしてきたのが代々。
「しかし、抜本的となりますと現時点ですぐさまとはいかず。また、そうした際の反応、影響も大きいと予想され…」
「分かっている。だから結局、どういう手が打てるんだ」
内々思ってはいても、多大な出血を強いること必須な全体像の改革など、個人としても口に出しづらい。かといって、破綻を眺めていただけの誹りは避けたい。その意が汲まれ、役人は計算を示す。
「改正案では年金支給対象の範囲が狭まるため、財政負担は軽減されます」
それは反対者しか出さない、無機質な数字の羅列。よく作成できたものだ。有権者の大多数を占める年寄りに対し、これでは選挙が戦えない。
「そして、その軽減分から、対象への支給額を想定してみましたのがこちらの修正案になります」
手管だが、見越して次を出してくるのがこの者らの常。
「複数のパターン、開始年齢による支給額、ポイント等に差を設けるなど致しまして。そのいずれかの選択肢の中から、高齢者ご自身に選んで頂くことで対応を…」
「分かった、分かった。数合わせだが、年寄りの数が多くなったのだから仕方ない。その線で任せる、文面にしてくれ」
今回も先送りの結論となった、社会保障対策。
老人の定義。高齢者年齢は5歳引き上げられた。
「…続きまして、もう一つの懸案事項ですが…」
すぐさま前後入れ替わり、次の役人が機会を逃さず話を繋ぐ、面倒な。この国の課題として、高齢化より問題である少子化。年とともに増えていく高齢者に、反比例し減っていく若者。根本的には年金でも揉めた財政支援なのだろうが、ない袖は振れないと繰り返される説明。振る気がそも未だ乏しく、手を加えた計算において例示される。
「分かった、分かった。数合わせだが、子供の数が少なくなったのだから仕方ない。その線で任せる」
ここでも先送りの結論となった、少子化対策。
未成年の定義。成人年齢も5歳引き上げられた。




