31話 白い穴の先の世界の日常
短い番外編です
---------------
地球が消滅して異世界に逃れた俺達地球人は、何だかんだと毎日を慌ただしく送っている。
日本人が2万人近くも来たせいで、メリサスの街に隣接してジャパンタウンが造られた。
名前はジャパンタウンだが、もちろん日本人以外もOKだ。
ライアンやミシェル達もいるし、メリサスの街の人で今はジャパンタウンで働いている人たちも多い。
ジャパンタウンは中央ややメリサス寄りに皇居、と言ってもそんなに広い建物ではないが皇族御一家がお住まいだ。
それから役所や病院、学校もある。学校というか、子供達や勉強したい者達が通える施設だ。
店や市場での買い物は隣のメリサスまで行く。ギルドもメリサスのギルドを利用している。
そう、クランと呼ぶ集まりがジャパンタウンにはいくつかある。
俺が所属している『落ち人クラン』もそのひとつだ。
リーダーはライアン、サブリーダーはクラ、メンバーは現在は35人まで増えた。
『落ち人クラン』の活動は主に森の探索だ。
メリサスの街から草原を超えたところにある森の集合体とでもいうのか、いくつもの森が集まった広大な場所がある。
そのうちの幾つかは地球人が落ちて来た森だ。
その森にまだ救出されてない人がいないかどうか、定期的に探索を続けている。
それと、森の中にしかないクシャの実の採取だ。クシャの実は低級の魔物避けに使われる。
これは結構良い値で売れるのでクラン資金になっている。
その他には、『火消しクラン』とか『警備クラン』とか『救助クラン』などがある。
ええと、お分かりの通り、元消防士、元警察官、元自衛官が集まって作ったクランだ。
他にも『お菓子づくりクラン』とか『手芸クラン』とか『農業クラン』とか『釣りクラン』などなど、ほぼ趣味の集まりのようなグループも出来ている。
本来この世界のクランは掛け持ちは禁止なのだが、ジャパンタウンに限っては掛け持ちOKだ。
ちなみに俺は、『落ち人クラン』の他に『お菓子づくりクラン』にも加入している。
実はこっちに来てから、地球のネッ友と再会したのだ!
地球では『スイーツ男子の会』と呼ばれていた。よくオフ会で会ってた顔をこっちで見つけて驚いたり嬉しかったりだった。
この世界ではギルドに登録して訓練すると魔法が使えるという事で、多くの人がギルドに登録している。
ライアンやクラ達は攻撃魔法の腕がかなり上がった。対して俺は何故か攻撃魔法は弱々である。
結構頑張って練習したのだが、最近はちょっと諦め始めている。
「優希、適材適所だよ」
お父さんに慰められた。
「優希にはあんなに美味しい俺清水が出せるじゃないか」
だから、やーめーてー、その名称。
俺清水を富士山の美味しい水に改名したら、嘘はダメだとお父さんに怒られた。
「富士山じゃないんだから嘘はダメだろう? せめて、ゆうき水にするか?」
ゆうきみずぅー、いや、それはもっと嫌。とりあえず良い名が浮かぶまでは仕方ない、俺清水で。
『お菓子づくりクラン』で俺清水は役立ってるからいいか……。
最近、『美容クラン』から勧誘を受けている。
俺の風魔法「そ〜よ〜か〜ぜ〜」に目をつけられた。
ああ。こっちも改名したいな。もし『名付けクラン』とか『改名クラン』があったらすぐに相談に行くのに。
それから、地球から持ち込んだ物は、個人が必要としている物以外はギルドへ提供したそうだ。
それらを売却したお金がジャパンタウンの街造りに使われている。
ガソリンが切れた車やバスも結構な値が付いたそうだ。何に使うんだろう?……貴族とかが屋敷の庭に置いて飾るのかな?
妹の友人一家が乗って来た豪華二階建てバスは、ジャパンタウンの中央広場に置かれている。
何か憩いの場になってるそうだ。
電気自動車は今でも使用されている。
ギルド所有でうちの『落ち人クラン』が森へ探索に行く時にも使用させてもらってる。
誰かが持ってきた発電機やソーラーで動かしているわけではない。何と、俺の雷魔法だ。
こっちに来て街に保護されたあと魔法の訓練をしていて発見したのだった。スマホや乾電池の充電が出来る事に。
攻撃魔法が使える人は威力が強すぎて充電には向かないらしい。
充電する本体に直撃して破壊してしまうらしい。
本来、雷魔法は生活魔法ではない。攻撃以外の使用はなかった。
だが電気のある生活が日常だった地球人には、攻撃には使えないほど弱い電気を出せる者がいるようだ。
そうだよ!弱々魔法で悪かったな!
『充電魔法』が使える人は俺の他にも2人いた。
電気自動車の充電やスマホの充電などもしょちゅう頼まれるが、『充電クラン』は造らない。何か忙しくなりそうな予感がするから。
そうして俺達地球人はこの世界に馴染んで生きていくのだった。
完




