第一村人発見?
俺たちの立っていた背後の草むらが突然ガサガサと音を立てた。
異世界モノのファンタジー小説の話をしていたからゴブリンが現れたのかと、俺は飛び上がった。
ガサガサガサガサっ
ドキドキドキドキドキドキ…
何が出てくるんだ?
スライムか?ゴブリンか?ジェイソンか?
キュウゥン…ハフ…
犬が出てきた。
地球の犬に似ている…かなり痩せて肋骨が浮き出ているが大型犬。
ライアンがしゃがんで犬を呼んでいる。
犬はハッハッと舌を出してゆっくりとライアンに近づいていった。
この世界の犬かな?
ライアンはカバンから水とカップを出し、カップにそそいだ水を犬に飲ませていた。
それからポケットから出したカロリー何とかと言うビスケットの袋を剥いてペキペキと一口サイズに折った。
カップに鼻先を突っ込んで水をガフガフ飲んでいた犬は顔を上げてライアンの手の平のビスケットをガン見した。
「ほら 食っていいぞ」
ライアンが言うのとほぼ同時に手のひらのビスケットを丸呑みしていた。
「お前 ちゃんと噛まないと喉詰まらすぞ?」
犬のガッツキ振りに笑顔になりながらライアンはポケットを探っていた。
チロ……。
うちも犬を飼っていた。
チロって名前の犬。
貰った時は生後2週間で小さかったので家族満場一致で『チロ』と名付けたが、あっという間にデカくなったっけ。
そう、貰ったのって大型犬の子犬だったんだ。
うちのチロは秋田犬だったんだけど、秋田犬って詐欺だよな?
ホント生まれたては小さくて丸くてコロコロしてて、『チロ』か『コロ』かでちょっと揉めたっけ。
『コロ』はデブいみたいで嫌って姉貴が反対した。
俺はチロの思い出に浸りながらカバンからクラッカーを出した。
「クラッカーありますよ 食べるかな?」
クラッカーをライアンに渡した。
ライアンが袋を破り中から出したクラッカーを犬の口元に持っていった。
犬は匂いを嗅ぐのもそこそこにばっくりとクラッカーを口に運んだ。
「この子、名前なんていうのかな?」
「ジョリーだ」
ライアンがあまりに自然に犬名前口にしたので驚いた。
「え? もう決めたの? はっや」
「いや、俺が決めたんじゃねぇ ここに書いてあった」
ライアンが犬の首輪を引っ張ってそこにぶら下がっていた物を俺見せた。
この犬は首輪にドッグタグを付けていて、そのタグに“ジョリー”と書かれていた。もちろん英語だ。
「ホントだ ジョリー ジョリィ!」
呼ぶとジョリーは俺の前に座り、ハッハッハッと舌を出しクリッとした目で俺を見上げていた。
「たぶん、最初に落ちた犬だろう」
「あ、アリゾナかどっかで誰かの飼い犬が落ちたってやつ」
「まぁその後に穴に落ちた犬もいるのかも知れねぇがな」
「よく今まで生きていたなぁ、お前 頑張ったな」
「人より賢いからな 水場を見つけて凌いでいたんだろう」
「そっか ジョリー 偉かったぞ よしよし」
俺はジョリーを撫で回した。
ジョリーはひっくり返って腹を見せて喜んでいた。
今までひとりで寂しかったんだな。
俺たちはジョリーを連れて最初の拠点に戻った。
持ってきた食糧を考えると明日にはジャパンフォレストに戻らないとならない。
今日中にやらないとならない事がある。
①3つの拠点に張り紙(この森の拠点の位置やジャパンフォレストへの地図と俺たち名前を記した紙だ)
②少ないが3拠点に水と食糧配置
③ジャパンフォレスト内の拠点やテントの地図(も貼っておく)
④見つけた遺体を埋める
①〜③はもし俺らが去った後に誰かが落ちて来た時にその人が生き残れるようにだ。
④は時間や食糧が限られているので放置するか悩んだが、結局放置は自分達の気持ちがスッキリしないので、浅くだが穴を掘り埋めた。
翌朝俺たちはこのアメリカンフォレストを東へ東へと進み、森を出て、ジャパンフォレストへ向かい進んでいった。
ジョリーはまだ体調が戻っていないので時々カートや台車に乗せて運んだ。
行きに乗せていた水や食糧が減った分、ジョリーを乗せても楽勝だった。
そうして俺たちはジャパンフォレストへ到着、森の入り口で最後の野宿をした。
狭いテントでジョリーは俺とライアンの間に入って寝ていた。
何だかんだで10日ほどジャパンフォレストを留守にしたが、アメリカンフォレストにいたのは正味4日ほどだ。
ライアンはきっともっと探索したかっただろうと思うがなにぶん移動に時間がかかる。
日が暮れた夜間は安全を考慮して移動しないし、徒歩での移動は途中途中の休憩を入れると結構時間がかかる。
車とかあったら、もしかしたら1日かからない距離かもしれないのに。
森の出口や草原の途中とかに水とか食糧を置いておいたら、移動も楽かなぁ。
アメリカンフォレストにまた行かないとな、3拠点以外ほとんど見れなかったからな。
あ、その前にジャパンフォレストの拠点に行かないと!
新たに落ちて来た物、腐ってないといいなぁ……。
何て考えていたらいつの間にか眠ってしまった。